第1節1話 異世界で、アメフトで、バトル?その1

ここは、神々の集う世界、ファンタズム。


かつては戦争が絶えず、人類の滅亡の危機が訪れた。


その度に、神々の手により、人類は救われて来ました。


しかし、幾度の戦争に、とうとう神々は疲れはててしまいました。




「人間達の、戦争好きには、困ったものだ。一度人類には滅びてもらい、新しい生命を生み出したほうが良いのでは?」




「確かに人類は、戦争を繰り返していますが、平和を望んでいるものも、数多く居ます。

私は、その様な人々を、見捨てることは、出来ません」




「だがな、ワシは疲れた。

我々が、侵略されている人々を、助けても、助けた人々が、侵略者に成る事もあった。

しまいには、我々には神々がついているのだから、戦争に負けるわけがないと、言い出す者までいる」




「それでは、我々はどうしたらよいのでしょうか」




神々が、困り果てていると、一人の神が、提案をします。




「こう言うのは、どうでしょう。

人々に、戦争が出来ない呪いをかければ、世界から戦争は無くなります」




突拍子もない提案でしたが、他に解決方法も無く、疲れはてていた神々は、渋々ですが提案を受け入れました。


早速、神々は、戦争が出来ない呪いを、実行しましす。


すると、どうでしょう。

呪いの効果は、目に見える形で現れました。


戦争をしようとしても、戦が出来無くなり、戦争に付随する行為で、人々は死ななくなりました。


こうして、世界から戦争が無くなりました、めでたし、めでたし・・・とは、いきません。




戦争が出来なくなった、人類は困っていました。


国同士の揉め事を、全て戦争で解決していたためか、話し合い、解決する術を持ち合わせていませんでした。


世界中の王達が集まり、話し合いをしても、何も物事を解決出来ませんでした。


重大な懸案があっても、人々は言い争い、懸案を解決する事が、出来ません。


すると、戦争大好きな王様から、突拍子もない提案が出てきました。




「我々には、スポーツがあるのだから、それの勝者に世界を統治する権利を与えると言うのは」




王様達は、驚きました。しかし、話しを聞いて行く内に、それが良いのではないかと、思いました。


呪いのせいで、戦争は出来ないが、スポーツは出来る。


しかも怪我はするが、呪いの効果で、死ぬ事はない。


これを見ていた神々は、呆れました。

呪いで戦争が出来なくなったのに、まだ争うのかと。


ですが、人類が初めて、戦争以外の方法で、物事を解決しようとしたので、一度様子を見る事にしました。




「スポーツの種目は、庶民の間で流行している、フットボウルが良いと思うが、いかがかな?」




「意義なし‼」




こうして、勝者に、世界統治の権利を与える、フットボウルが、開催されました。


勝者は世界を手にする為か、フットボウルと言いながら、やりたい放題でした。


前衛では武器で斬りあい、後衛から魔法を飛ばす様は、戦争さながらでした。


しかし人々は、スポーツ的戦争に、熱狂しました。


戦争のように、何年も続かず、死人が出ない事が、人々に受け入れられた理由でした。




その後、優勝国も決まり、第一回フットボウルは、幕を閉じました。


優勝国は世界を手にいれましたが、その国が好き勝手出来ないように、とある仕組みが作られました。


統治監視国です。


これは、優勝は出来なかったが、上位に入賞した国に与えられます。


それらの国にも統治する権利が与えられることで、統治者の暴走した時に、歯止めをかける仕組みを作りました。


こうして、世界から戦争は、無くなりました。


戦争ばかりで困り果てていた神々にも、ようやく安息の時が、訪れました。


フットボウルと呼ばれたものは、いつしか、ファンタズムボウルと呼ばれました。


時は過ぎ数百年後、とある少年の召喚により、運命の歯車は、動き出す。




暴風が吹き荒れ、青々とした芝生が揺れるフィールド。


最初は乗り気では無かったが、ファンタズムボウルの選手になってよかった。


子供の頃から夢見たプロ選手として、グランドに立っている。




「カズミ。今日はデビュー戦だが、どうだ?」




僕の肩を叩き、声をかけてくれたのは、イリーナだった。




「多分大丈夫。今日はベストを尽くすよ!」




カズミの意気込みに、イリーナは笑顔で答える。




「カズミ。貴方に足りないのは、自信だけ。

貴方はこのチームの中で、パスの上手い選手です。

ですので、自信を持ってプレーしてください・・・」




僕に対し、静かに語りかけたのはスズネだった。


イリーナと比べると、やや表情の変化は乏しいが、その気持ちは伝わってきた。


僕サワタリ・カズミは、アメフトのプロ選手として異世界のスポーツをすることになった。


どうしてこうなったかだって?話すと長くなるけど、聴いてほしい。










ここは、カゼカミ39(サーティナイ)ナーズのホームグランド。


カゼカミフィールド、青々とした芝生は、強風により、揺れ動いていた。


フィールドでは、選手は休憩中で、雑談をしていた。




「召喚門から、誰か来るのは、今日だったか?」




「そのはずだ、キーン。スズネが言っていたのだから、間違い無いはず」




「ええ、イリーナ。お母様の予言ですから、間違いないと思います・・・」




「どのポジションに、適性がある選手が来るのかな。うーん、楽しみだ!」




すると、それを聞いたのか、初老の男性がこちらに来た。




「そうだな。クォーターバックなら、このチームの穴が埋まるし、大歓迎だ」




「ゴルドさん。それでは、貴方の出番が無くなってしまうのですが、よいのですか・・・」




「構わんさ。それでチームが強くなるなら、俺は喜んで控えに回るぜ。クラリスから、そろそろ引退しろと、口うるさく言われているからな」




ゴルドは、時計を見る。




「よし、休憩終了。午後のメニューを、始めるぞ」




選手達は、各ポジションに、散らばっていった。










洞窟の先にあった扉が開き、意識を失った僕。気がついたら、競技場にいた。




「ここは、何処だ?」




競技場の雰囲気は、地元の、ヨコハマ競技場に似ていたが、その大きさは、ヨコハマ競技場の2倍、いや、3倍と言った所だろうか。


そして、そこでは、アメリカンフットボールの練習が行われていたのだ。




「いや、これはアメフトじゃない」




確かに、アメフトのボールを持っている者もいるが、攻撃側と防御側が剣や斧で斬り合い、その後方からは、魔法使いが魔法を飛ばしていたのだ。




「これは夢なのか?」




僕は自分の頬をつねったが、やはり痛い。


どうやら夢では無く、現実のようだ。


しかも周りの人をよく見ると、ドワーフやエルフ等、人以外の種族もいるのだ。




「てことは、もしかして、ラノベでよくある異世界へ転移したのか!」




この事態に頭を抱えたが、何もやることが無かったので、とりあえずアメフトっぽい物の観戦を始める。




「なるほど。戦闘をしていたのは、相手を倒すことで、数的有利を作って、ボールをパスしやすくしていたのか」




しかも、剣や斧で斬り合っていて、ダメージを受けているようだが、ダメージを受けるだけで致命的な怪我はしていない。




「このアメフト、見た目は怖いけど、大怪我はしないから、スポーツとしては成り立っているのか」




のんびりと観戦していると、赤髪の少女が目に写った。


ビスチェにジャケットを羽織り、ショートパンツと言う装いだ。


右腕には巨大な釘撃ち機、パイルバンカーだろうか?


それは武骨な見た目なのだが、炎を纏った姿は幻想的な物だった。


身長は僕と同じ位?いや、向こうのほうがちょっと大きいかもしれない(僕の身長は169㎝で、170に後1㎝足りない)。




「イリーナ、そのボールをキャッチだ!」




初老の男性は、その少女に向かって叫んだ。




「いやいや、ボールの高さが身長の倍以上あるのに、届く分けないでしょ」




僕は、思わず呟いた。


次の瞬間!イリーナと呼ばれた少女は、常識を遥かに超えた跳躍力を見せ、ボールをキャッチしてしまったのだ。


捕球後は、空中を歩く用な滞空時間を見せ、着地をした。


その時、彼女の背中は炎の残り火を纏纏い、炎の羽を纏っている用に見えた。




「天使・・・」




僕は、再度呟いた。


そして彼女はこちらを見て、ニヤリと笑った。


僕は、彼女に釘付けになっていた。


彼女の一つ一つプレイに、夢中になっていたのだが、それが不味かった。


他の選手がキックしたボールが、僕に向かっている事に気づか無かったのだ。




「ボウズ、早く避けろ!」




初老の男性が叫んだが、芝に座っていた僕にはもう避ける余裕はない。




「避けられなくても、何とか叩き落とさなきゃ」




バシッ!


無理に避けたり、キャッチしなかった事が幸いしたか、ボールが顔面を直撃すると言う、最悪の結果は免れた。




「ふー、危なかった。おいボウズ、ボールから目を離すんじゃない」




初老の男性は、心配してくたのか、僕に声を掛けてくれた。




「あ、スミマセン」




すると、イリーナと呼ばれた少女が、僕に声を掛けた。




「そこの君。悪いんだけど、ボールを私に向かって、投げて貰っていい?」




僕は、足下のボールを広い上げる。




「分かりました!そちらに投げますね」




とは言ったもの、僕から彼女までの距離は、およそ50mくらい、しかも初めて扱うアメフトのボールを強い横風に対応しながら投げなくてはいけない。




「横風の影響を考えると、高い弾道の遠投は出来ない。ならば、低い弾道で投げるしかない!」




僕は、大きく息を吐きそして吸い込み、左足を勢い良く前に出し遠投をした。


風の影響を考慮して、低い弾道で放たれたボールは唸りをあげる。


そして、レーザービームの用な弾道で飛んだボールは、見事彼女の手元に収まった。




「何とか、上手く行ったか・・・」




僕は、ほっと胸を撫で下ろした。


これには、受け止めた彼女だけでなく、周りの人々も驚いていた。


彼女は呟いた。




「ゴルドヘッドコーチ、彼は逸材かもしれませんよ」




ヘッドコーチと呼ばれた、初老の男性はニヤリと笑った。




「ああ、あのボウズがクォーターバックになれば、プレイオフ、いやファンタズムボウル制覇も出来るかも知れない。あと、ヘッドコーチと呼んだから、後で罰金な」




少女はしまった!と言う表情を見せ叫んだ。




「ヘッドコーチ、まだあの規則残っていたんですか!」




今度は初老の男性は大きく笑った。




「もちろんだ!そうでもしないと、いつまでもヘッドコーチと呼ばれてしまうからな。あと、俺ことを、ヘッドコーチと呼んだから、もう一回罰金な」




すると、彼女泣きそうになりながら崩れ落ちた。




「そんなー、私の給料がー・・・」




心配になった僕は、彼女元に駆けつけた。




「あのー、大丈夫ですか?」




今にも泣きそうな、彼女だったが、これ以上無様な姿見せられないと思ったのか、すぐに立ち直った。




「わ、私は大丈夫だ。それよりも、すごいじゃないか、強風の中あの距離を私の手元に投げるなんて!」




僕は、急に照れくさくなった。


すると初老の男性僕の肩にてをかけ、バンバンと叩いた。




「久しぶりに、良いロングスローを見たぞ。今年の召喚者は、未経験と聞いていたが、凄いじゃないか」




彼女は嬉しそうに、僕を抱きしめた。




「これでやっと私にパスを出せる、クォーターバックに会えた」




ちょ、いきなり僕を抱きしるなんて、やめ、離して。


すると、初老男性はとんでもない事を言い出した。




「よし、今日のアイアンマインズ戦、クォーターバックのスタメン、このボウズで行くぞ。お前たち異議はないな」




[[オッス!]]




「そうとなれば、決まりだな。期待してるぞ、ボウズ」


こうして僕は、異世界に転移してすぐ、アメフトのようなものをやることになったのだった。




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