第7話 二人目の犠牲者

 異世界転移から2日目。エドに続き次はヨハンが殺されていた。

 

 ヨハンはシングルサイズのベッドに横たわり、首からは大量の出血。切断された頭部は扉を開けてすぐの足元に転がっていた。目の前に広がるグロテスクな光景に声も出ない。しばらくの硬直の後、誰かが近づいてくる足音によってハッと我に帰る。


「何をしているんだ。さっさとヨハンを連れてこい。」


声の主はシンであった。死体の前に立ち尽くす俺を見つけたシンは帯刀している刀の柄に手を掛ける。


「・・・貴様。やはり。」

「ち、違う!よく見ろ!俺は返り血も浴びていないし、首を切断できる武器も持っていないだろ!」


シンは疑いの眼差しを送りながら、慎重に近づいてくる。両手を高くあげている俺を通り過ぎ、ヨハンの部屋に足を踏み入れる。


「他の奴らを集めろ。」


シンに命令されるがままに広間Aに戻り、俺は皆に報告をした。



 ベティーナ嬢が死体を見て一騒ぎした後、また全員が広間Bに集まる。エーベルハルトが俺に冷たい視線を送る。お前がさっさと犯人を捕まえないからまた面倒事が起きたのだろうとその視線が語っていた。エドを殺害した犯人(と思われる人物)が外に逃げる姿を見ていた俺は、もう既に犯人はこの館から去ったものだと思い込んでいた。しかし、デューオ軍の進軍によりクローズドサークル化したこの館内でまた殺人が起きたことにより、まだその犯人はこの館内にいることが発覚したのだ。そして、エドとヨハンはどちらも死亡していた。殺害の手口が同様であることから同一犯による犯行であると考えられる。そして、その犯人はこの五人の中にいる。


・シン(帯刀しているベティーナの用心棒)

・ベティーナ(豪炎の魔具使いのお嬢様)

・レイ(エクスカリバーを起動できる女剣士)

・カール(元警官の推理小説家?)

・エーベルハルト(魔具収集家でこの館の主)


 精神的な疲労からか誰も口を開かなかったところに、元警官のカールが沈黙を破る。


「さて、少なくとも明後日の大移動までは一つ屋根の下、協力しなきゃいけないわけだし、一応昨日の夜からヨハン君の死体が見つかるまでの皆の行動を洗っておこうか。」


そうして俺たちは各々の昨晩からの行動を述べた。


・シン...昨晩はベティーナと同じタイミングで自室に戻った。本日午前に目覚めてからは広間Aに誰よりも早く居た。

・ベティーナ...昨晩全員が部屋に戻ってからはずっと部屋にいた。本日午前に広間Aに顔を出した時にはレイとシンが既に広間Aに居た。

・レイ...昨晩は広間Aの個室に宿泊している者の中ではもっとも遅くまで広間Aに居た。本日の午前はシンの次に広間Aに現れた。

・カール...昨晩は結界を張った後に、エーベルハルトとほぼ同時のタイミングで自室に戻った。本日午前はベティーナの後に広間Aに集合。

・エーベルハルト...昨晩は結界を張った後に、カールとほぼ同時のタイミングで自室に戻った。本日午前はカールの後に広間Aに姿を表した。

・タクト...昨晩はヨハンが自室に戻った後に自室に戻った。本日午前は誰よりも遅く起床し広間Aに行った。


「昨晩自室に戻った後からシン君が起床し広間Aに来るまでの間は全員犯行可能ってことか。残念ながら誰もアリバイは無いみたいだね。そうなると、とりあえず次は現場検証かな。さて、探偵君。最初の犠牲者のエドワード氏と二人目の犠牲者ヨハン君の殺害現場を見にいこうか。」


 俺はカールと一緒にエドワードの部屋へと向かった。

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