Unknown pleasures

 そして、アイリーンは焼け野原の只中にいた。 


 かつて自らの親であったもの。


 かつて自らの故郷であったもの。


 その焼け焦げた残骸がそこには広がっていた。


 視線を移すとそこには丘の上の十字架がいくつもの人が炭化した塊を掲げ突き刺さっていた。


 アイリーンの奥歯はがちがちと噛み合わず、身体は臓腑の奥からぶるぶると震えていた。


 それは恐怖ゆえだったが


 死体に対する恐怖ではない。


 人ならざる修羅への道が、奈落の如き無限の暗闇がその口を開けてアイリーンを待っていることに対してであった。

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