第2話 伶

怜とはどんな女性なのでしょう。


柊がこの女性と出会ったのはかれこれ七年前でしょうか。

伶は四十代前半の独身女性。結婚も出産も経験した事がない。世の中ではアラフォー?アラフィフでしょ!なんて言われ、もうおばちゃんだな!なんて声も浴びる日々。分かってる。それは分かってるけど、人に言われると傷つくなぁ。


気付いたらもうこんな歳になってしまって……。男女問わず、そんな言葉をよく聞くけれど、伶も同じ。笑顔の中に、ズキッと衝撃を受ける日々。


「気付いたらこんな歳になっちゃって困っちゃいますよ」


何日かに一度、会話の流れで笑って話すけれど、隣には二十代の女の子達がいる。

若さが武器の最高の花。自分にも若い時代があったもん、歳ばかりは取るもの、仕方ないな……と毎日思わされる環境にいる。


そんな伶の職業は飲み屋のお姉さん。

伶よりも一回りも上の男性達は、


「まだまだ若いだろ〜」

「俺の頭見てみろ、真っ白だろ〜!」


ホッとしつつ、私はまだ四十前半だもの!と思わずにはいられない。そんな伶の勤めるお店には、四十代~七十代の層のお客様が来店する。数年務めている伶は、辞めていく人間、年齢も伴って中間管理の立場になった。


伶は、一言で言えば真面目。伶の高校時代の同級生は言う。


「お前の性格で飲み屋?マジで?お前の性格じゃやっていけんだろー!」


と言う位、真面目な性格。学生時代の部活動が運動部だったせいか、なかなかの体育会系で、礼儀には厳しい所がある。人前で何かをすると言う行為が恥ずかしくて自分を半分も表現出来ない。けれど、負けず嫌いでプライドは高い方だから、自分の弱さや恥ずかしさを隠しながら過ごしている。


クール

知的

キレイなお姉さん

SとMだったらS

一人でも生きていけそう

B型


伶の第一印象で聞こえてくる声。血液型占いは統計学と言う声も聞くけれど、伶はその統計学に当てはまる位のA型。大きく几帳面ではないけれど、心がすぐ傷つく。何かある度にすぐ切り替えが出来ずに一人で悩んで病んでいる。


そんな性格をしている伶が既婚者を好きになってまった……。


伶も分かっている。自分勝手だと。

自分の幸せを求めて、他人を傷つけている。

一時の優しい手を振りほどく心の余裕がなかった。あの時、甘い言葉に勝てなかった。馬鹿だな……私は。自業自得。伶はいつも思っている。


柊は、伶を見て思う。

こんな女性は世の中に沢山、本当に沢山いるんだろう。道は間違っているけれど、恋をして人を想った心はどんな恋とも同じ。だけど……伶が向かった道は、一途が故の悲しい愚かな道。








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