02 インの理由



「あー、あのですねー、勇者様聞いてます?」


 勇者の旅に同行して早一か月。

 四天王の一人を倒した後に、俺は気になっている事を勇者に尋ねていた。


 なあ、俺みたいな村人の足元ですっげぇ血ぃながして、恨めし気な視線さらしてるこの塊、勇者メンバー一人一人とタイマンはれるような四天王なんだぜ?

 信じられるか?


「俺、ただの村人なんですけど。なんでこのパーティーにまざってるんです?」


 で、そんな最中に勇者に向かって口にするのはまっとうな疑問だ。


 俺には特別な才能もない。

 魔法が使えるわけでも、剣が使えるわけでもないというのに。


 それなのに四天王と勇者が剣を交えるような、こんな危ない戦場に連れて来られている。

 どこからどうみてもおかしかった。


 勇者は俺の疑問に「何だそんな事か」という顔をしてそれから「言ってなかったっけ」という顔になった。


「聞いてませんから」


 この勇者ちょっと天然入ってるんだよなぁ。

 他のパーティメンバーも「あらあら」「また、始まった」みたいな顔してるし。

 できれば、そちらの方達から先に答えてほしかったんですけどね!

 おまいらが「パーティーメンバーは何だかよく知らんうちに勇者が決めた事だから」とか言うから!


 で、その天然ボケボケ勇者は「ふむ」と、一拍置いて答えた。


「お前をこの旅に同行させた理由、それは倫理担当が欲しかったからだ」

「倫理?」


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