HP1の彼は何が出来るか?

赤城クロ

彼、HP1なんです!

 三年前、次世代MMORPGと呼ばれたノーエンドゲームの暴走により、世界はガラスの様な膜に覆われ、そしてモンスターやダンジョンが現れるようになった……。



 ……訳なのだが。


 「俺、昨日ダンジョンに行ってモンスター狩りまくったから、お金がこんなに!」

 「レア素材を獲得したし、それをネットのオークションに……」

 「ねぇねぇそこの可愛い子ちゃん! 今日ダンジョン行くんだけど、良ければ俺とパーティー組んで、ダンジョンデートしない?」


 この様に、人間の適応力とは予想以上に高いらしく、今ではモンスター討伐でお金を稼いだり、恋愛に活用する人々が当たり前の様にいる。


 しかも最近では、何でも願い事を叶えてくれる赤い宝石も現れ、動画配信者が実際に、禍々しい雰囲気のダンジョンで発見したその宝石で、願いを叶えたなんて話は、今でも世間の話題の中心に居座っている始末。


 ある意味それは、日本の日常の中にといった単語が馴染んでいる証拠ではないだろうか?


 

 さて、そんな情報が手軽に流れる世の中、この物語の主人公である高校一年生牧野まきのアキラ君も。


 『自分も動画の人達みたいな冒険者になって、強いモンスターと戦ったり、モンスターの落とすお金や素材を売ったりする生活を送りたい!』


 と夢を持っていたが、一ヶ月前の4月、その夢への第一歩は盛大にずっこけることになる。

 それは何故かというと。


ーーーーーーーーーー


 牧野アキラ

 レベル3

 HP1

 攻撃4

 防御2

 魔力2

 魔力耐性2

 幸運2


ーーーーーーーーーー


 高校生になり、自分のステータスを知れるようになった彼の目に飛び込んできたのが、そんな数値だったからである!


 しかもHP1

 

 そう、一昔風な通り名を付けるなら《《特性が無いヌ○ニン》》とでも言われそうな彼は、攻撃を受けるだけで教会送りが確定する訳だ。


 更に言えば、一人を除いた他の生徒は全員、初めからレベル50前後はあり、HPだって4000以上はある訳で、ステータス低いのは普通だと口が裂けても言えないだろう。


 そして早朝、学校へ向かう彼は今。


 「コケェェェェェェェ!」

 「来るな! 来るな、巨大ニワトリ! 俺は餌じゃないんだぞ!」

 「うわ、アキラ逃げまわってばかりでダサいんじゃないの〜? あっはっはっはっは~!」


 田んぼが周りに広がる道にて、巨大なニワトリに追いかけ回され、幼馴染みの西崎にしざきマオがニワトリの後ろから追いかけつつアキラを煽っていた。


 茶髪に染めた長い髪に可愛い髪止めを着け、そこから目線を落とすとクリっとした目と、日焼けを感じさせない白い肌が目に入る。

 そしてそのファッションは性格同様に挑発的な様で、制服の胸元をわざと開けてやや大きめな胸の谷間を見せ、そしてスカートも短くして、そのきれいな太ももを見せびらかしている。


 そんな彼女も一ヶ月前。


ーーーーーーーーーー


 西崎マオ

 レベル5

 HP132

 攻撃12

 防御11

 魔力10

 魔力耐性9

 幸運238


ーーーーーーーーーー


 と言うステータスを見た時、彼女の『凄まじい高ステータスでアキラを煽る』と言う夢が無くなったのがショックだった……。


 「頑張れ〜ニワトリ〜! 早く教会送りにしちゃえ〜」


 ……という事は無く、相変わらずアキラを煽り続けている。

 少なくとも彼女は、アキラと言う名のオモチャを煽れれば……否、声援を送れれば満足なのだろう。



 さて、アキラはその声援に答えるべく、とある行動に移る。

 それは、自分の感じている幸福をシェアするために……。


 「うおぉぉぉぉぉ!」

 「な、何でUターンしてこっちにくるのよ!? お、お願いだから来ないでよアキラあぁぁぁぁ、ニワトリが来たぁぁぁぁ!」

 「逃げるなマオ! 絶対お前も道連れにしてやるからな!」

 「いやぁぁぁぁぁぁぁ!」


 ニワトリの足元をくぐり抜けてやってきたアキラは、前を逃げるマオを追いかけ、遂にはマオの真横にまで追い付いた。

 そう、彼はニワトリに終われる気持ちをマオとシェアしたのである!


 「あ、アキラ! あ、アンタにレディファーストって言葉は無いの!?」

 「じゃあレディファーストしてやるよ、ほらやられてこい! 大丈夫、お前はHP1じゃない訳だし、一発は耐えれるだろ?」

 「耐えれないから! 私、レベル5だし、あのニワトリの攻撃受けたらきっと一発だから! 第一レディファーストじゃないよね、それ! ってニワトリ、ニワトリ迫ってる!」

 「うわぁぁぁぁぁ! ニワトリさん、あっちの方が美味しいですよ〜! 絶対、絶対マオの方が! だってレベル5だから!」

 「うわぁぁぁぁぁ! あっち、アキラの方が柔らかくてで美味しいハズ! だってHP1だから! しかもレベル3だから絶対私より……」

 「「うわぁぁぁぁぁぁぁ!」」


 そして、ニワトリとのマラソンをシェアした二人は、大きなニワトリのクチバシにつつかれ、教会送りになる事までシェアをした。



 この物語は、HP1のアキラが冒険者になろうと頑張る、コメディファンタジーコメディ学園コメディである。

 なので、コメディ要素が多すぎると言う言う苦情は一切お断りします!

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