Red Honey Trap

烏丸れーもん

第1話

「はーい、どうもー!イワ・ゲームでーす!」

そう挨拶をする坊主頭で赤いチェックの服を着たサングラスの男の名前は岩崎昂平。YouTuber『イワ・ゲーム』として活動を行う35歳。

活動を始めた当初は名前の通りにゲーム実況動画を出し続けてきたが、動画再生数がなかなか伸びずにいた。しかし、ここ最近になり”あるジャンル”の動画を投稿したことがキッカケで再生数を稼ぐようになった。

「今日はですねぇ! 冷凍のエビピラフと冷凍の唐揚げ、そしてインスタントのカレーをミックスさせて、唐揚げエビカレーピラフを作ってみたいと思いまーす!」

その”あるジャンル”というのが、冷凍食品やインスタント食品などを複数種類ミックスさせてみて実際に食べてみるという動画である。彼の動画の視聴者からは「見てるだけで気持ち悪い」「味のクセが強すぎてまずそう」といった批判の声が当然のようにあったが、一方で「実際に混ぜてみたら意外とイケた」「何だかんだでどんな感じに出来上がるのかが気になってつい見ちゃう」という賞賛の声もあり、これらの賛否の声によって注目度が高まっているコンテンツとなっている。

「それでは早速……調理するぜい!」

昂平は調理風景を撮影すべく、録画していたビデオカメラの停止ボタンを止め、それをそのまま台所まで持っていった。

そして再びカメラを動かし、調理開始……といっても冷凍のエビピラフと冷凍の唐揚げを電子レンジで温め、その間に袋に入ったインスタントカレーのルーをお湯を沸騰させた鍋で煮込むという簡単な調理内容であった。その後、丼一杯に入ったエビピラフの上に唐揚げが置かれ、カレーのルーがその上からドバーッと降りかかり料理が完成した。

「はい! こちら唐揚げエビカレーピラフ、完成いたしましたぁ!」

カメラを完成した料理に寄せて、インサート映像風に撮影する。そこに映る料理は、唐揚げとエビピラフの色はなく、ほぼほぼカレーのスパイスの薄茶色に染まっていた。一言で言うならばジャンクのクセがすごい見た目となっている。

「いやぁ~、美味そうですねぇ~。もう腹ペコペコですよぉ~! それでは、いただきます!」

昂平はスプーンを手に取り、ジャンクに染まった料理をすくう。そしてそれを自らの口内に運んだ。

「ん! うまい! やっぱりこの唐揚げうまいわー。では、ピラフにカレーのルーをつけて食べます! うまい! このピラフ、またカレーのルーとうまい具合に絡み合ってグー! そして、カレーのルーがかかったことによってよりマイルドでグー! これは大当たりですねぇ。」

昂平は唐揚げエビピラフを頬張っている。カメラにはそれを美味しそうに食べているように見せている。

「では、完食したいと思いますんで、カットします。」

カットのため、カメラを一旦止めた後に大きなため息をついた。

「味的に食えんことはないけど……やっぱりキツイな。」

やはり高カロリーが故か、半分近く食べ終えたところでスプーンを動かす手が止まっている。

「うーん、どうしようかな……カメラ止めてるし、捨てちゃってもいいか。」

昂平は残った料理を何の躊躇もなくゴミ箱へとぶちまけた。

そしてその後、味の全体的な味の感想を語ったエンドトークを収録して動画の撮影は終了した。

「よしっ! 撮影おーわりっと! さーて、メッセージをチェックチェックと。」

昂平はマイPCのある部屋へと向かう。


「うっし、編集はこんな感じかな。それじゃそのままアップロード!」

昂平は先程撮影した映像を編集し、一本の動画作品を完成させる。そしてその作品をすぐさまYouTubeにアップロードした。人気YouTuberということもあって、アップして僅か数分で万単位の再生数と多くの視聴者からのコメントがすぐに寄せられる。

「よし、今回も反響はいい感じだな! さ、返信開始、豚のケツー♪」

昂平はファンから届いたダイレクトメッセージに返信していく作業にシフトチェンジした。

メッセージの内容は激励的なモノからアンチ的なモノまで複数種類あり、後者からのメッセージは即ブロックして二度とメッセージを送れないように設定して、前者からのメッセージは丁寧に返信する。特に女性から来たメッセージに対しては徹底的に返信している。

彼は女性からモテることを目標にしてYouTuberを始めたこともあって、女性から好感度を高めたいという意識が人一倍強い。それがこの徹底した行動に現れているわけだ。

「よし、これでまた女子からまた好感度が……ん? この子初めて見るなぁ。」

昂平は顔下半分のみのショートカットの女性の写真が映されたアイコン画像とその横に表示された「久留美」という名前を発見し、それをクリックする。そこに表示されたメッセージに目を通した。


『初めまして。

いつも楽しく動画を拝見しております。

唐突なお願いをしてしまい申し訳ないのてすが、

YouTuberの活動に必要な活動資金を援助いたします。

その代償として私を抱いていただけないでしょうか。

実は私は極度のグラサンフェチで、

以前よりあなたのそのグラサン顔は今まで見た中で一番好みのタイプなのです。

日々、あなたに一度抱かれてみたいと妄想しており、夜も眠れない日々を過ごしています。

初めてお送りするメッセージでこんなことを書くのはおかしな話だと思うことでしょう。

しかし私は、それほどイワ・ゲームさんと一夜を過ごしたくてたまらないのです。

どうかご検討のほどよろしくお願いします。』


本当に唐突すぎるメッセージ内容に昂平は当然の如く驚きを隠せなかった。

(いやいやいやいや……こんなことをホントにあるのか……?)

普通に考えればスパムメッセージだろうと思う。しかし、内容を見る限り動画をきちんと見てくれているちゃんとしたファンの可能性も僅かにある。そしてスパムならスパムで何らかのフィッシング詐欺系のサイトに誘導されるURLが貼られているはずだが、それも無い。

(もしかすると……もしかするか?!)

昂平は中学時代から目立った女性交際経験がなく、このYouTuber活動を通してそういった僅かなチャンスがないかと密かに狙っていた。今回のこのメッセージは例えスパムであろうとも彼にとってその野望が叶う千載一遇の大チャンスなのである。

「……よし!」

このチャンスを何が何でもモノにしたいと、昂平はそのメッセージに了承の返事を送った。

そして後日、実際に会う約束をするまでにこぎつけた。


約束の当日。昂平は人混みが溢れかえる秋葉原の駅前で久留美が来るのを待っていた。

(久留美ちゃんってどんな子かなぁ? アイコンに顔下半分が映ってたけどなかなか可愛かったんだよなぁ……興奮してきたな。)

これから来る女性に対し期待を抱いていると、コツコツコツと足音が昂平の方へと歩み寄ってくる。

「あのー、すみません。イワ・ゲームさんですよね?」

「はい、そうですけど……あ!キミが久留美ちゃん、かな?」

その女性は栗色のショートボブヘアでとても可愛らしい顔立ちをしていた。服装は寒い冬の季節ということもあってか、渋い緑色のコートワンピースを羽織っている。

「はい。今日はよろしくお願いしますね。」

「あ、あぁ、よろしく!」

(やべぇ……イメージよりめちゃくちゃ可愛い……)

久留美が見せる全男子がほぼ落ちるであろうキュートな笑顔に昂平は翻弄されていた。

「生でイワさんが見れて嬉しいです! 何だか、動画で見るより可愛い雰囲気ですね!」

「ほ、ほんとぉ? いやぁ〜嬉しいなぁ! アッハハハ!」

久留美の落とし言葉に、昂平はこれからこの絶世の美少女と共に事を為すのだという悦びから、鼻の下を伸ばしまくる。

「それじゃあ、早速ホテルに参りましょうか。」

「えぇっ?! 早くない?!」

「だって、今日はそれが本題でお会いしてるわけじゃ無いですかぁ。私……もうしたくてしたくてたまらないんです……。イワさんも……もう我慢の限界……来てるんでしょ?」

上目遣いで昂平の腕を組み身体を密着させる久留美。昂平は彼女の積極的な誘惑に勝てる術などなく無意識のままに言葉を発する。

「そ……そらそうよ! それじゃー、ホテル行くぞ!」

「フフッ、逞しくて素敵! じゃあ……向かいましょうか。」

そして二人は妖艶な虹色に染まったネオンの光が並ぶホテル街へと消えていった。


昂平と久留美はホテルの一室の中にいた。

部屋の中はわずかに光る照明に照らされた薄暗いものとなっている。

16平米ほどの広さの中でテレビとテーブルが壁際にあり、ベッドが中央に配置されていた。

部屋の入り口の方に、バスルームとトイレの入り口があり、バスルームは透明なガラス張りとなっておりベッドから中が丸見えとなっている。

久留美はバスルームでシャワー浴びている。昂平はその様子をベッドの上で全裸になり仰向けに寝転びながら見つめている。久留美が左手で握るシャワーから湧き出るお湯を浴びて作られた水滴を右手で払い除ける仕草から大人特有の色気を漂わせている。

(やべぇ……さっきまでめちゃくちゃキュートな小悪魔って感じだったのに、すごいセクシー……)

その上、括れるべき部分はしっかりと括れていて膨らむべき部分はしっかりと膨らんだ成熟した久留美の豊満な女体が露わになっており、昂平は興奮を止めることがなかった。

しばらくして久留美がシャワーを浴び終え、扉の向こうにある更衣室へと入っていく。

「もう少し待ってて下さいね。」

「お、お、おう! 待ってるよ!」

昂平はこれから始まる久留美との熱い夜を想像し、胸の鼓動のペースを増しながら仰向きの状態から起き上がりベッドの上に座る。

「お……お待たせしました。」

(おほぉぉぉ……俺の好みにドストライクぅ!)

久留美は少し透けた白いワイシャツの上に黒のスーツを着用し、下は丈が短めのスーツタイトスカートを履き、そこから同系色のタイツを包み込んだ太ももが姿を見せていた。その服装のイメージを一言で表すなら、昂平の一番の好みタイプでもある「オフィスレディー」と言ったところである。

「イワさん、前に動画で若いOLが好きって言ってたから合わせてみたんですけど……どうですか?」

お得意の悩殺的上目遣いで尋ねる久留美。

「もうめちゃくちゃ似合ってるよ!」

「フフッ、それなら良かった!」

そう言いながら久留美は昂平の隣に座り込んだ。

「それじゃ……始めましょうか。」

久留美の方から顔を近づけ、ディープな口づけを仕掛けた。

(うぉおお……めちゃくちゃ気持ちいい……)

舌をねっとりと絡ませた濃厚な口づけに昂平の理性は完全に蕩けていった。そのまま彼の手は無意識に久留美の服を1枚ずつ脱がせていき、互いに裸となる。そして昂平は久留美とベッドの上で熱く、激しく、身体を交し合う。

「気持ちいいですか?」

「あぁ……すごく……気持ちいいよ……ただでさえ初めてなのに……こんなの……」

「あら、イワさん初めてだったんですね。フフッ、それならより一層興奮して来ちゃいました……イワさんはそのまま楽にしてて下さいね……私が気持ちよくしてあげるから……」

久留美はさらに激しく、そして誘惑的に昂平の身体を求めながら唇を重ねる。舌を激しく絡ませて彼の欲求の興奮を誘発させる。

そして昂平は興奮が限界に達し、久留美と形勢を逆転させ、野獣と化したかの如く久留美の魅惑的な女体を貪りつくし、そのまま昇天した。昂平にとっては、熱く濃厚で一生忘れることの出来ぬであろう初めての一夜となった。

「フフッ、気持ち良かったですか?」

「ああ……初めてでこんなに気持ちいいの……もう病みつきになって忘れられなくなるよ……」

すると、久留美は口元を昂平の耳に近づける。

「じゃあ、もう1回……しましょ?」

「えぇっ?! ほ、ほ、ホントにいいの……?」

大胆な誘惑に驚きを隠せなかった。

「もっとしたそうな顔してるから……それにイワさんもお金、欲しいでしょ? 沢山出しますから……だから、しましょう?」

お得意の上目遣い誘惑に首を思い切り縦に振る昂平。

歓喜の感情をこみ上げながら、久留美との激しい宴を再会しようとした……その時だった。

バァン!

部屋の入り口の方から大きな音がした。気になったのでその方向を振り返る。

「お楽しみのところ、ちょっとごめんなさいねぇ。」

鼠色のスーツを身に纏ったブラウンカラーのロングストレートヘアの女性が少し怖めの剣幕で立っていた。その後ろに悲しげな顔をした女性が立っていた。昂平はその女性を見てハッとした表情に切り替わる。

「み、美香ちゃん?!」

美香と呼ばれたその女性は昂平と本命の交際をしている女性で、久留美と一夜を過ごす様子を見て悲しげな表情をしていた。

「イワちゃん……これ一体どう言うこと!? 私がいながら他の女とヤるとか信じられない!」

美香は当然の如く怒りを隠すことが出来なかった。

「いや、違うから美香ちゃん! この子は俺のファンで俺に抱かれたいってお願いしてきたからそのお願いを叶えてやっただけなんだよ!」

昂平が必死になだめる横でスーツの女が口を開く。

「いやねぇ、岩崎さん。あなたが何人かの女性とヤろうとを口説きまくってるって噂がありましてねぇ。美香さんのご友人が彼女が不幸にならないように、アンタの本性暴いてくれって我々に依頼してきたんですわ。で、あのメッセージもこちらが仕組んだものなんすわ。」

「へえぇっ?! そうなの?!」

つまり久留美が昂平に抱かれたい程好意を抱いているのは嘘ということである。それが一目瞭然のように、久留美は素っ気ない態度で私服に着替えていた。あの濃厚な交わりも偽りのものということでもある。そのショックからか昂平は放心状態になっていた。

「そ、そんな……」

「とにかくもういい! 私、イワちゃんと別れる!」

美香は怒りを抑えることが出来ないまま、昂平に破局を申し出た。

「……俺も、もういい。俺はな、例え偽りでもな、運命の女性に巡り合ってしまったからな! 彼女は……久留美は、その運命の女性だったんだよ!」

どうやら昂平は今回の営みで完全に久留美の虜になってしまったようで絶対に叶わぬであろう大胆な告白をした。

「というわけで、久留美ちゃん! こんな俺だけど付き合って……」

「お断りします。」

「へ?」

久留美は先程の行為の時に見せた雌の顔とは180度変わった汚物を見るような冷徹な目をしていた。

「アンタのプレイ、ただ思い切り突くだけで気持ち良くなかったし、結構痛かったし、その上変な犬の餌みたいなの食べてばかりだから口がすごく臭いし……アンタと付き合うなんて仕事でも無い限り無理!」

優しかった口調も毒のあるストレートなモノに変貌した。

「そんなぁ! あんなに気持ちよさそうにしてたから落ちたと思ったのに!」

「あんなの演技に決まってるじゃない! それを抜きにしたってアンタみたいなクズ生理的にムリだわ。」

「う……うそだろ……」

嘲笑うように見下しながら拒絶する久留美。本気で恋をしてしまった女性に完全拒絶され昂平は跪くしかなかった。

「それに、私にはもうとっくに愛する人がいるんだから! ね、椛おねーちゃん♡」

久留美が椛おねーちゃんと呼ぶスーツ女の腕に抱きつき、頬にキスをした。二人はレズビアンカップルだったのだ。

「お前レズだったのかよぉ?!」

その事実に昂平は驚愕のリアクションをするだけだった。

「そういうわけじゃけぇ……ウチの女に手ぇ出した落とし前……キッチリつけてもらうけぇのぉ?!」

椛は全身全霊の怒りを剣幕に表し広島弁で昂平を恐喝する。

「ちょ、ちょ、ちょっと待って下さい! 待って! 助けて! 待って下さい! お願いします! うわぁああああああああああ!!!」

昂平はこの後、めちゃくちゃボコボコにされてホテル街の隅にパンツ一丁の姿で冷たくなって発見されたという。


そして翌日。

ここは秋葉原にあるメイドバー『メイドスタジアム』。

この店は「三度の飯より野球が好きなメイドと一緒に野球を見たり語ったり出来る」というコンセプトもあり、店内には野球に関するポスターやユニフォームが数多く飾られている。

店長が広島生まれ広島育ちの生粋のカープファンということもあって、カープの選手のユニフォームやポスターの割合が多めである。

まぁそんなことはどうでもいいとして、店内の隅にある女性3人が座っているテーブルに、久留巳が皿の上に乗ったカップ一杯のミルクティーをそっと置いた。

「それで、あれからどうですか? お互い仲良くやれてますか?」

昨日、昂平に対して元ヤクザ特有の脅迫芸と暴力芸を見せたこの鼠色のスーツを身に纏ったブラウンカラーのロングストレートヘアの女性こそ、『メイドスタジアム』の店長であり、久留巳の彼女でもあり、そしてこのメイドバー経営と並行して奪還始末業サービスを行う株式会社レッドハニートラップの代表取締役・東出椛、27歳である。

ここで奪還始末業サービスという仕事の一連の流れを紹介しよう。

ターゲットとなるクズ男に奪われたモノやお金、寝取られた恋人を取り返して欲しいという依頼者の要望を受け、ターゲットの日常の行動パターンや性癖などを調査する。そしてデータがある程度集まった後、大方の男を落とす演技やキャラ作りに定評のある久留美がターゲットに対し官能的な誘惑を仕掛け、ターゲットが彼女の虜になった隙を見せた所で椛がお得意の脅しと暴力でターゲットを怯ませ降参させる。そしてそのまま奪われたモノを奪い返し、それを依頼者の元にお届けする。この流れを椛と久留美の2人3脚で行っている。

「はい! おかげさまで。」

「私、あの18股男と付き合う前以上に美香と仲良くなった気がします♪」

椛の向かいには美香と由香里が隣りあわせで座っている。

由香里はこのレッドハニートラップに昂平から自身の彼女である美香を奪い返して欲しいと依頼していた。

レズビアンである由香里は以前までバイセクシャルの美香と付き合っていた。しかし、美香が自身の推しYouTuberである昂平に応援メッセージを送ったところ、会話が弾み交際を申し込まれるまでに発展して、美香は推しから求愛された喜びの興奮のあまり即OK。由香里ともそのまま破局することに。

だがその後美香から話を聞くと、昂平が実家が金持ちの美香から金の援助を受けることと、そのついでに行為をすることだけが目的でこれといった愛のない状態で彼女と交際していると美香が察し、今すぐ別れるように美香に説得するも彼女は聞く耳を持たず、昂平に対し金を奉仕し続けていた。ちなみに身体や貞操の方は、要求するたびに美香の方から何かと理由をつけて断ってきたため無事に至っている。

そんな彼女に目を覚まして欲しいと思い、由香里はレッドハニートラップに依頼。昂平について徹底的に調査をしたところ、美香と交際しているにもかかわらず美香以外の18人以上の女性相手にも同じ手口で金と行為を要求する人間の屑である事が発覚。さらに調査を進め、昂平は若いOLの女性がタイプであるという性癖情報も掴んだ。それを受けて、久留美が清楚系ビッチな年下OLを演じて昂平を翻弄し見事術中にハマった形となった。

「まさかイワちゃんがあんなゲスでクズな男だとは思いませんでした!ホントにごめんね、ユカりん。アタシが言うこと聞いてればこんなことには…」

「いいんだよ。美香が私によりを戻してくれたから、それだけでもメッチャ幸せだよ!」

「あ~ん! ユカりん大しゅき~!」

「私もしゅきだよ!みーかっ!」

美香と由香里は強く抱きしめ合う。二人はあの後、再び恋人同士に戻り、このようにイチャコラしまくりの幸せな日々を過ごしている。

「いやぁ~、いくらよりが戻ったとはいえお熱いわねぇ。」

「フフッ、あれ以上のこと私たちもいつもしてるでしょ? 椛おねぇちゃん。」

「も、もう久留美ったら、人前でその呼び方しないでよっ!」

「えへへ、ごめんなさい。」

椛は実の恋人にいじられ、頬を赤めながら苦笑いを浮かべた。

「あ、そうだ。」

美香は昂平の今までの醜態を押さえたスクリーンショットが晒されたネットの掲示板が表示されたスマートフォンの画面を椛たちに見せた。そこには「人間の屑」「幻滅しました。チャンネル登録解除します。」「なにがYouTuberだよ。女チュバチュバしまくってるじゃねえか!」などといった昂平に対する罵詈雑言の声が散りばめられていた。

「うわぁ…自業自得とはいえ酷い言われようだねぇ…」

あまりの辛辣で汚い単語や文章のオンパレードに椛は絶句した。

「で、さらに面白いのが、コイツこの間女の子だけのオフ会やってたらしいんですけど…」

美香はスマホを操作し、別のアプリを起動させた。

『ウィーッス!今日は、待ちに待ったオフ会当日ですけども……参加者は……誰一人……来ませんでした……』

スマホには今回の騒動で好感度をガッツリ落とした昂平もといイワ・ゲームが主催した女性限定のオフ会イベントに参加予約をした人たちが会の終了後に行為を求められる、俗に言う「オフパコ」に発展する事を恐れて集団ドタキャンし、誰も来ずに終わったという惨めすぎる報告動画が映っていた。

「プッ…アッハハハハ! 無様すぎて草生えるわ~!」

「でしょー! オニウケる~! ざまぁみろってカンジー!」

「残念でもないし当然ですね。自分がモテると思い込んだ変態勘違いクズ童貞らしい末路と言えます。」

一同はそんな冷めた目とで吐き捨てるのであった。特に最後の久留美の言葉は典型的な鬼畜のそれである。

「あの、今回は本当にありがとうございました! また私たちに何かあればご依頼してもよろしいですか?」

「えぇ、もちろん。是非お任せください!」

「ホントですか?! ありがとうございます!!!」

美香は椛と久留美に対し座ったまま、頭を下げる。両手を膝に載せて、深々と、愛する人との絆が修復されたことへの感謝の意をこめて最敬礼した。

「お二人の仲を切り裂く男がいれば、成敗しますので。フフッ。」

彼女たちは「レッドハニートラップ」の名の下に、女体という蜜の如く甘く真っ赤な罠を張り、今日もゲスなクズ男達に鉄槌を下していく。

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