第31話 花壇の世話

「王女殿下、こちらへ」


ルゥに促され、リリーが座り。


「あら、ルゥ、何でこっちにいるの?」


「此処は禁書架と空気が同じなので、こちらにも来れるんです。あそこに居ても暇なので」


「なるほど、その気持ちは分かるわ」


ん。

ルシフは訝しむ。


レオ、シリウス、ディアナは困惑。

スピカとリブラは苦笑い。


「どうした?」


ルシフが尋ねると、


「会長の、生徒会室での癖が出ちゃいましたね。架空のお友達さんと、時々話すんです」


スピカが、小声で教えてくれる。


え。


ルシフがスピカ、ルゥを交互に見ると、


「私はロマニア王家と契約した精霊です。精霊との交感技能所持者か、または、王家に連なる者しか見えないですよ?」


……なるほど。

ルシフは納得した。


ルシフは、下級ではあるが一応、精霊使役の心得はある。


「え、ルゥちゃん、他の人には見えないの……?なら、今の私って……?」


「虚空に向かって話す変な人ですね?」


「いやああああああああああああ」


リリーが頭を抱え、うずくまる。


「……どうしたのかね?」


リブラが心配そうに呟き、


「此処に、精霊、ルゥがいる。リリーと俺以外には見えない様だ」


「え、ルシフさん、見えてるんですか?」


スピカが驚いて尋ねる。


「ああ、精霊使役は経験が有るからな」


「なるほど……」


スピカが頷く。


ルゥは、小首を傾げ、


ちょっぷ


スピカの頭に手を振り下ろす。

スピカが、手でルゥの手を止め、


「貴方も見えてるじゃないですかああああああああああああ!」


ルゥが叫ぶ。


「ちが……その、虫がいて、ですね」


スピカが、ぱたぱたと手を振る。


リブラは、目を閉じ。


キッ


目を見開くと、その瞳は光り、


「なるほど……何かいる、な」


精霊視サードアイ

リブラが使えるのは、下級ではあるが……輪郭だけ捉える事はできた。

尚、実際に3つ目が開く訳では無い。


「精霊、か。なるほどな」


シリウスが頷く。


「格好良い……」


ディアナがぽそりと言う。


「……待って、集中しないと分からないリブラはともかく、スピカはずっと知ってて、見えないふりをしてた訳?!」


リリーが叫ぶ。


「生徒会の仕事が花壇の世話だと騙した仕返しです」


「そんな事実無いわよね?!普通に会計の仕事説明したわよね!」


「過去の事象は、証明不可能。分かるのは当事者のみ。なら、過去の事実なんて、一片の価値も無いのです」


「事実は事実、尊いわよ!」


ルシフは、頬をかく。


……まあ、スピカの態度の理由は分かる。

精霊視、しかも強力なレベル……なら、当然、精霊使役能力を保有……もしくは、既に精霊と契約済かも知れない。

能力を隠す傾向が有る賤混者ハーフにとって、視えてしまうというのは隠しておきたい事実だ。


「そもそも、会計の仕事以外を押し付けているがね」


ぽそり


リブラのツッコミ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る