第14話 受容

「強いな、ルシフは。思った通り強い……いや、想像より遥かに強かった。まだ余力が有るのかい?」


レオの態度は、自然だ。

慄きは有るものの、畏怖の念は無い。

強さ、を自然と受け入れている。

つまり、対等の存在と言う事だ。


ルシフにとって困るのは、別次元の存在として、畏怖される事。

ルピナスの様に、神格化する者すらいる。

そういう者とは、恋愛関係は愚か、交友関係も築けない。


「まさか、あれはとっておきだ」


ルシフは苦笑する。


「秘跡と魔術の第陸階位シクス、それが俺の切り札さ」


レオの笑顔が、気持ち良い。

そのまま、レオがにこにこと笑い。


風が吹き抜ける。


「ひ」


「ひ?」


「秘跡ぃぃぃ??!」


常に余裕を見せていたレオが、慌てた様子で叫び、駆け寄り、ルシフの目をまじまじと見る。

ルシフは、ちょっとドキドキしつつ、


「どうした?」


「どうした、じゃ、ない!!秘跡が使えるって、どういう事だ??!」


あれ。

賤混者ハーフは、千差万別。

そして、超常の力を持つ者が多い。


賤混者ハーフなら、純人間ピュアの常識に囚われる事は無い。秘跡が使えても、不思議は無い筈だが」


「んな訳有るかあああああああああああ!どんな魔物が混じったら、秘跡なんて行使できるんだよ!天使か?霊獣か?神獣か?」


「……親、両方不明なんだよなあ……捨て子だからな」


「と言うか……」


レオは、涙目でルシフの肩を持つと、


「それでいて、魔術まで使うって、おかしいだろ??聖と魔の反発……絶対に有り得ない組み合わせだ!」


あれ……

超常の力には寛容な筈だが。


「そもそも、第陸階位シクスって何だよ??!魔術の第陸階位シクスって、魔王かよ?!」


言い過ぎである。


「秘跡の第陸階位シクスもおかしい!あの王貴血者アークである王女さんですら、第伍階位フィフスまでだぞ?!」


「あれ、リリーって第伍階位フィフスまでなのか。意外と……」


「意外と何だよ?!魔術や秘跡は、第壱階位ファーストでも奇跡的……第参階位サードなら無双……第伍階位フィフスはもはや神の御業!」


神きたあ。


第陸階位シクスなんて、もはや聞いた事が無いレベルだ!」


「いや、勇者は秘跡の第捌階位エイス、魔王は魔術の第捌階位エイスを使ってたらしいぞ」


「……そうなのか。勇者も魔王も、もはや記録は残っていないが……それは壮絶な戦いになったんだろうな。相討ちとなったのも頷ける」


相討ち?

いや、勇者達は魔王に辛勝、無事故郷に帰った筈だが。


「そう言えば、勇者の話を聞かないな。勇者は今どうしてるんだ?王族だったよな。城にいるのか?」


「??」


レオが小首を傾げる。


「勇者は、魔王と相討ちに。魔国にて仲間と共に……」


あれ?!

意気揚々とロマニア王国に戻った筈……?


「珍しいな。ルシフに欠点は無いと思っていたが、有名な近代史でも間違える事が有るんだな」


レオが破顔する。

ルシフがバツが悪そうに、


「記憶違いかな……リリス──姉弟子にそう聞いたと思ったんだが。やはり、勉学も真面目にやらないといけないようだ」


そう言うと、溜め息をついた。

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