はたして「ひと」とはなんなのでしょう?

遠い未来の崩壊した世界、化け物とそれを騙すもの、少なくともどうやら普通の人ではないもの同士が出会うお話。
ある種、王道ともいえる筋立てと道具立てで、でも必要なツボをきっちり押さえてくれる。そこが読んでいてとてもよかったというか、なんだか嬉しいような感覚になりました。こういう姿勢こそエンタメだと思います。
読み手の感情をぐらぐら揺らしにかかってくる、要は〝わかっているのに絶対かわせないタイプ〟のお話です。こういうのはなかなか難しいというか、ちょっとでも手を抜くと陳腐化してしまうところを、きっちり完璧に仕上げている。それだけでもう勝ったようなもの(作者が)で、つまり大変な技量があればこそのこの完成度なのだと思います。
キャラクターがちゃんと作られているというか、書かれ方が好きです。行動や言葉の節々から、彼らの人柄が見えてくる。いつの間にかすっかり好感を持ってしまった上で、真正面から叩きつけられるハッピーエンド。とにかく読み手を楽しませてくれる、前向きな魅力の詰まったお話でした。