第2話学校

「この前のテストの結果返すぞー」


「うわぁーまじか……」


「俺絶対点数悪いじゃん(笑)」


今日はテスト返しの日だ。入学してから中間考査以外にも何個かテストがあった。今回もそのテストが返却される。みんなこんなふうに言ってるが、清琳に入ってるのに学力低いわけないからな。ある程度は取れるはずなんだ。……知らんけど。


「えー、蒼井あおい芽里めり。今回も満点だ」


自慢じゃないけど、俺は100点以外とったことは無い。


紗夜花さよかとおる。お前もまた満点だな。今回の満点はまたこの二人だけだ。みんなも見習えよー」


そして、芽里もそうだ。アイドルなんかしてても、頭はいいんだよ。

蒼井芽里。紗夜花透。違和感を覚えること間違いなしだろう。だが仕方ないんだ!男装、女装してるから名前がそのままだとおかしいんだよ……。一応校長に話は通してあったんだが、なんとその校長。俺たちが入学したら別の学校に転任になったんだよ。つまり、この学校に秘密を知ってるはゼロ♪ばれたらやばいね♪


チャイムが鳴り、授業が終わる。その途端、芽里の席の周りには大量の生徒が群がった。


「透さま、今回も満点だなんて尊敬します!」


「やっぱり天才です!」


キャーキャーと黄色い声を上げて、なんとか芽里からファンサをもらおうと男子も女子も必死だ。そして、俺の周りに人は一人もいない。友達もいない、学校一の陰キャ女子と呼ばれている。お前らいつか必ず報復してやるから待ってろよな。そんな陰キャ女子の周りに人が一人も来ないなんて、必然だろう。くそ、俺も満点なのに……!


「透! テストの結果どうだった?」


「雫月……」


「「「きゃああああああああああああ! 雫月さまああああああ!」」」


そして、この状況に雫月が追加されるとさらにすごいことになる。ええい、うるさい! 今すぐその歓声をやめろ! 歓声には慣れてるし嬉しいけど、その歓声が芽里と雫月にしか向けられてなかったら相方として悲しいから! 名前は透なのに歓声は俺じゃないとか耐えられないだろ普通!


ちょっと病みそうになってきたので、俺は精神統一のためにも今夜のライブの選曲をし始めた。こういうことは学校でやったほうがいい。理由は……


「ねえねえ、この前のヴィオロザのライブ行ったー?」


「行った行った! 鈴ちゃんも可愛いけどやっぱり翔君だよね!」


「だよねー! 私が好きな曲はねー……」


そう、みんなが好きそうな曲が分かったりする。芽里と雫月の人気を上回る人気を誇る、ヴィオロザの話。聞いてるだけで自然とライブの曲が決まっていく。忘れないうちに、と俺はスマホを取り出した。うちの学校はスマホ持ち込み可、校時中以外なら使用可。取り上げられる心配はないのだ。高速で芽里に曲名を送る。送信し終わって顔を上げると、芽里と少しだけ目があった。もう一度画面を見ると返信が来ている。


“遅い。あとなんでこのタイミングで送ってくるの~!”


可愛い。可愛すぎる。雪とはまた違った可愛さだなあ…… 芽里が俺のことをどう思ってるかは分からないんだけどね……

放課後までまともに会えないのが悲しい。当初の予定では陰キャ組として隅で二人でひっそりと暮らすはずだったのに、芽里の男装がそれこそ背はそんなにないけどめちゃくちゃ美少年だったからなあ…… こんなこと言ったら芽里に怒られるんだけど。


再びチャイムの音がした。芽里に群がっていた生徒たちも自分の席に戻っていく。芽里は雫月と違って陽キャじゃない。いや、雫月も決して陽キャではないが。雫月は少しだけ陽キャよりの陰キャって感じかな。ただ、完全なる陰キャの芽里には毎日一日中浴びるあのキラキラはかなり苦痛だと思う。芽里はすっかり疲れ切った顔をしていた。俺にはわかるな程度の表情の変化だったが。



4限目の終わり。清琳は5限授業で一コマ70分授業のため、あと一時間で授業が終わる。あーあ、70分授業とか長すぎだろ…… 雪は俺たちが授業を受けている間に中学から帰ってくるので、ライブの準備は雪にしてもらっている。ということで雪に連絡連絡。連絡しなかったら後で怒られるからね~。まあ、怒られたことはないんだけど。


「おにいのバカ!」


って怒られるのもたまにはいいかもね。嫌われたら困るからやらないよ?雪に嫌われたら俺、絶命する自信があるから。雪に嫌われるような兄、生きてる価値ないしね。

さてと。雪に連絡は送ったし5限目も頑張るか。えーっと、5限は物理……物理教室遠いなあ……教室でやってくれないかなあ……

そんなことを考えながら、俺は5限目の物理の授業を受けるため物理教室へ急いだ。

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