20 登山道


「・・・ここが、寒名山」


白い息を吐きながら境寒名の摩天楼がそびえ立つ都市部を抜けて、俺達は今、寒名山の入り口にある鳥居の目の前に来ていた。


「おい、お前ら、絶対に逸れるなよ」


「そうね、クズ、気をつけなさい」


「おい、勝手にフラグ立てるな!」


勝手にフラグ立てられて、こりゃ俺は遭難でもするな。


まぁ、とりあえず。

「さぁ、山越えするぞ、寒名山」


気を引き締めがてらそう言葉を放ち鳥居の中に1歩また1本足を踏み入れていく。





鳥居を潜ってからどれぐらいの時間が過ぎたのだろうか?あれから神社のお社らしきものを通り過ぎてからひとが来た形跡は無く昔に使われていたであろう山道を登っていた。


「足跡のないところに足跡を付けるのってこんなにも疲れるもんなんだな」


「あぁ、こんなとこで飛んだら吹雪でどっかに飛ばされても不思議じゃないからな」


辺りを見渡す限り雪雪雪そして木それしかない。そんな雪道をザクザクと歩いていく。もう心が折れそうだ。


「ちょっとアンタ達、なんで私を置いてくのよ!」


俺と白は足を止めて今まで歩いてきた道を振り返る。振り返ると俺達2人の足跡がしっかりと残っていた。雪の天使とか1度やってみたいもんだ。


そんな俺達の足跡より少し奥に声の主である奏がえっさこらしょと歩いていた。


「おい、奏、早く来ないと置いてくぞ」


「うるさい!アンタ達ちょっとは私を敬いないさいよ!」


奏の言葉に俺と白はため息を吐き捨ててそのまま山を登っていく。雪を踏む音が辺りに響く。


「貴方達ちょっとストップ」


白銀の世界に奏の言葉だけがこだまする。


「今度はなんだ?」


なにかと思い俺達は再度振り返る。振り返ると奏は警戒しているような顔をしていた。


「感じないの?この嫌な音、この邪気を纏った気配を肌に肌に当たる度に胸がキツくなるのよ」


「そんなの感じな・いぞ・・・」


確かにゾワっと胸がキツくなるような締められているようなプレッシャーを感じる。


「・・・」


「あら、クズも気付いたようね、遅すぎよ。だからいつまで経ってもA +(エープラ)なのよ」


奏はその言葉を吐き捨ててプレッシャーが襲ってくる寒名山頂上を見上げる。


「この気配、妖怪って言うより悪魔の気配か?」


「白、それはどうゆうことだ?今EU地獄は内戦の真っ最中だろ?」


「そんなもん、俺が知るか」


白は怪訝な顔をするなりアンティークな鍵の形をした《鍵》を武器である刀、朱月刀しゅげつとうへと姿を変える。(ややこしいなー、おい)


今思えば、俺も俺で充分狙われ理由を持ってるんだよな〜。紅魔刀を奪って名を上げようとする奴らは多いし。


はぁ、とため息を吐きながら俺も《鍵》を氷嵐刀に姿を変える。


そのものの数秒後に俺達は吹雪に巻き込まれた。

「グッ、おい、白!奏!どこにいる?返事をしろ!」


返事がない。そして目の前は真っ白。これがニュースとかでよく観る”ホワイトアウト”とか言うやつだろう。きっと白が買ってきてくれたローブが無かったら今頃凍死していただろう。いや酷い風邪で済んだりして?(そこんとこ雪国の人どうなの?)


しばらくして吹雪が止み視界が徐々に開ける。


「おい、白?奏?」


辺りを見渡すが人っ子1人見当たらない。

はぐれたか?雪山に1人取り残されてしまった。


「・・・邪気がなんか近づいてる・・よな?」





嵐が《鍵》を刀に姿を変えるその数秒後、俺達は吹雪に飲み込まれた。


「グッ、なんだこの吹雪は、妖気で生成されたものか」


吹雪に飲み込まれるなりおれは飛ばされた。

気づくと秋原あきのはらが目の前に広がっていて相変わらずの紅紅(こうこう)とした紅葉の風景が山の麓に絨毯のように広がっている。


「ねぇ、白くん?クズはどうしたの?」


俺の後ろから奏が声をかけてきた。


「嵐?俺は見てないが、まさか」


嫌な予感が背筋を走る。恐らくあの悪魔らしき者の狙いは嵐が所持している紅魔刀であろう。


アイツ、無事だといいが」







朱月刀しゅげつとう


使用者 夏季 なつき びゃく


持ち手の色 白


刃の色 朱


唾 炎の様な雫の様な形



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