異世界信長8

 闇夜に紛れ、明智残党の手勢が本能寺を取り囲む。

 斎藤利三が飛ばした檄を思い出す。

 信長は今日、わずかな供廻りのみでこの本能寺にいる。しからば闇より這い寄り、その首討つべし。


 なんとかして事態を信長に伝えなくては。


 俺はそう考え、考えに考えたが、ついにその方法が見つからず今に至った。明智軍軍師と言われてはいるが、その実際は囚われの身と変わらない。


「敵は本能寺にあり、者共進め」


 斎藤利三の号令と共に兵たちが本能寺に殺到する。信長の首をあげれば、大首級。そして天地がひっくり返り、歴史は正しく修正される。


 兵たちが本能寺の奥、信長の屋敷を取り囲むと、屋敷の障子が開いた。


 現れたのは、美少年。息を飲むほどの美しき少年。


 ああ、森蘭丸だ。違いない、あれが本物だ。すげー綺麗だ。実際に見てわかった。あれは男だからいいんだ。男だからこうも惹かれるんだ。遠目から彼の姿を見る俺は、なんだか恍惚とした気分になりかけていた。


 蘭丸はゆっくりとした所作でこちらに一礼すると、障子を全て開き、その中に待ち構えていた者たちを披露した。すなわち織田家の兵、その大軍である。


「待ち構えていたか!しかし!」


 斎藤利三が怒号をあげる。それを嘲笑う様に織田信長が姿を現した。


「オフサーイド!功を焦ったな、明智の残党よ。毛利の挙兵は貴様らをおびき寄せる虚報よ。これが光秀ならば容易く見破ったろう。しかし貴様のような小者ではな。すなわちこれはペナルティ。つまり、死だ」


 狼狽する明智兵残党に、織田兵が殺到する。

 あたりは悲鳴と怒号で埋め尽くされ。


 俺は織田信長に捕らえられた。

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