第16話 オッサンたち

 前方から、見るからに高そうなスーツに身を包んだ、かっぷくのいいオッサンが取り巻きを従えて歩いてきた。オッサンが俺と姫(ひめ)に名刺を取り出した。


「キミが宇宙人の彼氏の山田健太(やまだ けんた)君かね?」


「えぇ、まあ」


誰だオッサン?いやに偉そうじゃないか!姫がビビッてんだろ!


「キミの知っての通り、埼玉県知事の沼田源一郎(ぬまた げんいちろう)だが、お二人に折り入って頼みたいことがある」


ちょー、上から目線。総理大臣ならつまらんニュースで見かけるが、お前のことなんて知らん!


「ここにいるのが越抜(こしぬけ)市の市長、そしてこちらが草加名(そうかな)市長、こちらが川田(かわた)市長だ」


同じようなオッサンが三人が知事と一緒になって俺たちを取り囲む。勝手に話を進めんじゃねー。


「テレビで見たよ。健太君は実に立派だった」


えっ。褒めてくれるの!案外、いい人なのね。


「健太君のようなどこにでもいそうな、ありきたりの、なんの印象も残らない男がだ。宇宙人の、しかもこんな美人の心をとりこにしたのだから。世の中の平凡な男子諸君は、どれほど勇気を得たことか。君の勇気をたたえたい」


「はー。さすが都知事。いいことを言いますな」


くっそー。前言撤回!さりげなく俺のことをバカにしているだろ!おい、草加名市長!うなずくんじゃない。


「お偉い方が何かご用ですか」


俺は怒りをこらえながら平静を装った。


「私はニュースを見てピンときた!埼玉県は千葉県のように海もない。東京ペケペケランドもない。君たち二人を、わが埼玉県のPR大使に任命する。宇宙人の住む街なんて世界中どこを探しても埼玉県だけだ。千葉県民をギャフンと言わせるのは埼玉県民の悲願と思わんか?これはすばらしい栄誉だぞ」


上から目線で勝手に決めてんじゃねー。俺は人前に出るのが大の苦手なんだ。


「わが街の名物、草加名せんべいとコラボしたUFOせんべいです」


ただの草加名せんべいじゃないか!


「いや、わが街、越抜市が生み出した宇宙人焼きの方をぜひ」


人形焼きのパクりだろ。全然、姫に似てねーし。越抜市は名物ないんかい?


「まてまて、わが街、川田市が生み出した月野姫(つきの ひめ)団子じゃ。色白のつるんとした感じが彼女にそっくりじゃろ」


月見団子かよー。ベタすぎる。センスねー!


三人の市長が試作品を差し出した。すでにパッケージまで刷り上がっている。すっ、素早い。こんな秘めたるパワーがあるなら、とっくに街おこしできてんじゃねー!


パーン、パカパーン。パ、パ、パ。パン、パン、パンーン!


いちいち絶妙なタイミングで吹くのはやめろ。ブラスバンド隊!姫が驚くだろ・・・。

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