第4話 山中の戦い1

その音、耳をつんざくような大きな雄叫びのような音は着々と睡眠の準備を整えている矢先になり響いた。

動物の雄叫び、と言うには余りにも大きいその音に耳を傾けると……

「氷の弓矢よ、我が必中の願いを持って何の怪物を撃ち取りたまへ! 詠唱完了です! 早く距離を取ってください!」

「おう! 一時はどうなるかと思ったが、此で無事に帰れるな!」

「討伐報酬は山分けだぜ~?」

「ははは! いいから早く逃げ……」

「っ!? 榊(さかき)!!」

「は、早く逃げて! 攻撃がまた!俺の

「ぐはぁ!?」

「村居(むらい)ーーー!!」

と、そんな声が聞こえてきた。

喋ってるのは4人で最初に詠唱していた奴が女、他は全員が男のようだった。

更に言うと女は魔術での支援、残り3人は近接型の物理専門っぽい。

役割までは分からないが……

取り合えず内の二人が重傷、又は死亡したと考えて良さそうだな。

討伐報酬、って言葉から今戦ってるのは探求者の何処かランクの微妙なパーティーか銀黄警備会社の戦闘部門研修生のどっちかだとおもう。

この山を含めた周辺を納めるイグラシ王国の此処等地域に設置されてる大手の警備会社と国運営の迷宮探索と安全維持を目的に設立された二つの組織だ。

別の会社って可能性も棄てきれないんだが……

この近辺で活動してるなら銀黄しか思い浮かばねぇ。

とは言ってもだ。

手の届く範囲でなら助けてやろうと思ってる。

流石に助けれる力を持ってても見て見ぬふりするほど人でなしじゃない。

まあ知らない場所で苦しんでる奴を助けようって程にお人好しでもないがな。

「まあ行ってみて大丈夫そうなら助けてやるかな」

まあ、そんな訳で助けに行くべく足を動かす。

音の反響から大まかな場所は特定可能だから現在地からの距離も十分に理解している。

決して遠くないんだが……

まあ近くもない距離感だよ。

そんな時に役立つのが魔術、ではなくジジイ直伝の魔法だ。

魔法を簡単に説明するんなら『熟練度が一定値に達した時点で生じる人体異常の1種だ。その魔術l属性に応じて必ず必要となる用語が存在する。それは属性の種類を差す呪語だ。この呪語が無ければ絶対に魔術は発動しない。俳句で言う季語みたいな物だな。

それは魔方陣然り詠唱然りだが、この呪語を肉体に刻むことがある。これは同じ呪語しか刻めない。つまり自分の持っていない呪語を刻むことは不可能だ。第三者からの刻印でしか効果がないけど、刻まれた呪語は他の設定とか抜きにして好きな現象が起こせる。

ただし、呪語毎の意味合いは個人個人で少しずつ違う場合がある。

例えば俺は「切断」でジジイと同じだ。が、ジジイの場合は再現なく飛距離の長い刃を使用する事が出来るけど使用する際は両断するための手段、つまり簡潔に言うと刃物で空間を切ると切った部分と同じ切断面が切断箇所から前方に再現なく空間毎切り裂くのだ。このときに道具が如何に鋭利かで刃の強度や切れ味は左右された。つまりは寄り鋭利であれば有るほどに飛翔する刃は強力になった。

に対して俺の場合だと、刃は特に必要な物もなく認識していれば自分を中心とした半径50メートル以内の何処にでも生成できる。更に、生成する刃は最高で全長100メートルまでで刃の飛距離は最長で3キロだ。さらに半径50メートルまでの円を作ることも出来て、その場合は内部全てが切断の力を得る。切断の刃は設置から直ぐに発動する必要はない。つまりは刃の発生限界範囲を越えなければ後で発動することも出来る。刃の強度は大きさと維持された時間で弱まる。つまりは寄り小さくて寄り発動から時間の経っていない刃の方が強力だ。また、刃は飛ばすと刃の延長線上を指定距離まで同時に切断する。よって、途中で切断の方向を変えるとかは出来ない。

他にも魔法で便利なのが発動自体には魔力を消費しないって所かな。発動時に威力をあげるため消費することはあっても発動した時点で魔力が減少することは絶対に無い。まあ呪語の熟練度が一定値に達してれば、の話だが』って感じだ。

これで分かったと思うけど俺の魔法は『切断』だ。

これの用途ってのが非常に幅広い。

空気を切断して一時的に真空空間を作り、戻ろうとする空気の力で爆発的に速度をあげる。

とか、切断能力を物……

例えば銃弾に宿して撃ったとしたら、射程距離は最大で銃弾の到達距離+3キロが切断魔法の射程距離になる。

結構なレパートリーのある呪語なんだよな。

そして、現在俺は先に上げた空気の切断による爆発力に身を任せて現場へ超高速で走っている。

近くも遠くもない程度の距離だし、まあ数十秒で現場に到着してしまった。

その現場は、浅く氷の刺さった巨大な狼と二人の倒れ伏す人間、そして後方には怯えの見受けられる目を向けてる二つの人影だ。

「獣魔が居るって事は周辺にダンジョンでも発生したのかな?」

俺は呟き増援が無いことを確認して大きな狼の眼前に飛び出した。

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