第2話 過去編2

腹一杯に飯食って眠気と旨さから頬が緩む。

一年に一度の御馳走だ、少なくとも最高に楽しめて気分爽快って感じだ。

そんな風に考えながら伸びをしようとした時……

「旨い物食って眠くなったか~?なあ糞ガキ?

敷居としての役割を果たしていた段ボールが強引に破壊され、大柄の偉そうな男がズカズカと中に上がり込んできた。

コイツは志村(しむら) 太郎(たろう)、ここ等辺に住むホームレスの中じゃ一番の古株らしい。

それの何が偉いのか知らないがコイツは何故か俺含め周辺のホームレスに親玉みたいな振る舞いで色々な命令をするようになった。

その代名詞、と言うか口癖が「食料は半分俺に献上だから! これ、義務だから! 権利とか資格じゃなくて、義務だから!」って物だ。

何で義務なのか、そんなの誰も知らないし本当は深い理由も無いんだろう。

そんな太郎だが、献上を渋ると理不尽に殴られる。

それこそ隠して食ったりしたら殴られるじゃ済まない。

まず間違いなく半殺しにシバかれる。

そんで何処から出したのか、まあ奪ったんだろうけど長い鞭で全身を叩かれる。

ソレでも全部は食ってない場合だし、勿論だが安いスープみたいな安価で空き缶拾いさえ頑張ったら買える程度の物だ。

しかし、俺の場合は物のランクが違っている。

見るからに旨そうだった、特に肉と少し濃い目な味付けだった野菜は食い終わっても匂いで飯が食えそうなメチャメチャに良い匂いが段ボール内を充満している。

故に、俺は半殺しじゃ済まなかった。

抵抗も出来ずにボッコボコにされて全身を鞭打ち。

一通り終わったら燃えるゴミの袋に詰められてゴミステーションに捨てられた。

何故か知らないが、奴に俺を追い出す権利が有るとは思えないが……

俺は家を失った。

「く、クセぇ…セメぇ…腹減った……」

放置プレイは数時間も続いて対に迎えが来た!

と、思ったら全く知らないジジイが袋を開封していた。

ゴミを被り全身から不臭を撒き散らす俺にジジイは変な顔で鼻を摘まみながら「どうしたんだガキ?」と言った。

俺は事の経緯を簡潔に教えてやる。

何故にって?

他に何も無いからだよ。

家はない、食は元々ない、職も元々無いからだよ。

あと衣類は臭いけど継ぎ接ぎで何とか保ってるようなゴミ同然と言われても反論できないボロ雑巾の親戚みたいな上下1セットしか持ってない。

いや、正確には持ってなくもなかったんだが……

段ボールの家に入れてたから持ってない。

少しずつコツコツと溜めてきた金を使っても多分だが余裕で買えないと思う。

対して俺を助けたジジイはハデなマントとブカブカの上下真っ黒な服に巨大な尖り帽子とジジイの等身大程もある巨大な杖を持った、まあ金を持ってそうと言われたら持ってそうだし持ってないと言われたら持ってなさそうにも見える分からないジジイだ。

まあ、そんなジジイは俺の話を聞くと少し考える素振りを見せてから俺に手を差し伸べてきた。

「なんだ?助け賃か?生憎だが持ち合わせ無いんだ、済まない」

俺は言うとジジイの手を払い除けてゴミステーションの外に歩こうとする。

そうしたらジジイが俺の肩を掴んで……

「違う、金には余裕があるし魔術を俺に習うんなら衣住食は保証してやるぞ?」

ピクッ、そんな効果音がつきそうな勢いで耳が「衣住食は保証してやるぞ」とゆう言葉に反応する。

「お、興味が出たか?」

「ああ、魔術ってのが何かは分からないがな。最後に聞きたい」

「ん?何でも聞いていいぞ?」

「飯は旨いのか?」

「おう! 料理の腕は自信があるぞ!」

「そうか……」

その瞬間に、俺の脳裏を無数の可能性が想定されては食欲の前に倒れ伏す。

そして、俺の人生を180度変える選択は食欲と誕生日?とゆう記念日から来る気の緩みによって……

「行くは、俺…」

安易に過ぎる形で決定された。

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