第10話 バッセン

 剣道一筋だった俺は、ゲームなどの娯楽はからっきし駄目で、きっと今から行く『バッセン』なるものは、ゲームセンターのようなものなのだろう、二人の残念そうな顔が思い浮かぶようだった。

 前村と矢久部の後ろで、二人と同じように自転車を走らせて三十分が経ったぐらいか、二人は自転車を降りた。到着したようで、さらに気が重くなる。

 目の前の建物は、大きなドラッグストアほどの大きさだった。その大きさに気圧される俺とは対照的に、前村と矢久部の二人は慣れた足取りで建物の中に入っていく。急いで俺も二人に続いた。

 建物の中は、予想に反してシンプルだった。横に長い長方形の部屋に、簡素な作りのベンチが数台と、自動販売機が二台。あと、見たことの無い機械が二台ほど配置されていた。また、五つの扉があり、それぞれの扉の上には数字の書かれたプレートが掲げられている。ガラス窓になっている扉から、奥の様子を見ることが可能で、真正面の扉の奥では、誰かが半身で立っているのが窺えた。その構えと、バットを持っているところから、その者が野球のバッティングの練習をしているのだとピンときた。こんな施設があったのか。胸が高鳴る。

「じゃあ適当にやろうぜ」

 前村がそう言うと、矢久部は返事もしないでその場から離れる。了解ということなのだろうが、俺はどうすれば良いのか分からない。とりあえず二人の姿を目で追うことにした。

 二人はまず、さっき見た正体不明の機械に硬貨を入れた。それから、そこから出た何かを掴み取り、前村は115kmと書かれたプレートの部屋へ、矢久部は110kmと書かれたプレートの部屋へと、それぞれ入っていった。

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