第11話 変化

 皇帝刺殺事件後、レオンハルトが即位した。それに伴い迎え入れられた彼の妃はベルだ。二人の結婚を記念して、二人が仲睦まじく描かれた肖像画が国中で販売された。私もそれを手に取り、思わず微笑んだ。死線を共に乗り越えた二人は本当の愛を知っている。人を愛すのは難しい。愛するとは、全てを受け入れ、共に道を歩むことではないだろうか。その本質はきっと死とそう違いない。

 皇妃は第一皇子殺害未遂で斬首の刑に処され、第二皇子はまだ幼かったということで無罪放免となった。第一皇子一派は緩いとその決定を糾弾したそうだが、そもそもレオンハルトは長い間皇帝の座にいるつもりはないのだ。私が彼から受け取った手紙によれば、皇族及び貴族制度を廃止し、法治国家なるものを誕生させるということだった。法の元では皆平等になるため、レオンハルトにとっては第二皇子が脅威になり得るはずもなかったのだ。また、そんな彼の近況と共に一冊の本が届けられた。母の日誌だという。開けて読んでみると、そこには父と出会い、命を賭した駆け落ちをし、庶民としての生活を始め、私を産み、父を殺され、皇妃として皇帝の妻になり、死に絶えるその日までが綴られていた。レオンハルトから、母は病で身罷ったと聞き及んでいたが、詳しいことは知らなかった。その日誌を読んで察するに、父への恋しさあまり衰弱していったように思えた。

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