第24話 忌まわしき場所


勝負の時から一週間前


田中を冷たく突き放した八木教授は、自身に忌まわしき因縁を持ったテンダー会事務所にいた。


八木教授の目の前でほくそ笑みながら椅子に座る金田名誉教授は、八木教授に問う。


金田名誉教授「おやおや、これはこれは、テンダー会を逃げだした八木教授じゃないですか」


ムッとした顔を浮かべ八木教授は返す。


八木教授「久しぶりっすね。たぬきじゃなかった、金田名誉教授」


金田名誉教授「おや?たぬきなんてどこにおりますー?最近老眼でよく見えなくてね」


八木教授「俺の目の前に座ってますよ。冗談はこのぐらいにして、実は聞きたいことがあるんですけど」


金田名誉教授「あらま!何を聞きたいのかな?もしかして、バックれた時の給料は出るのかどうかとかかな?」


八木教授「貰えるなら貰いたいですけどね。クソロン毛にテレビ番組勝負の提案持ちかけたのあんただろ?」


金田名誉教授「はて?テレビ番組勝負?あー!プライドのやつね。私はただ、テレビ番組の取材来たよーって新海教授に伝えただけだよ。」


にやりと笑った金田名誉教授に対し、八木教授は、ふっとため息を少しつき。


八木教授「相変わらず食えねえ腹黒たぬきだな。あんたの勝負には、あえて乗ってやるよ。俺の計画の踏み台としてな」


金田名誉教授「久しぶりに聞きましたね。君のビッグマウス」


八木教授「あんたの憎まれ口も久しぶりに聞いたよ。相変わらずむかつく。それと、頼みたい事がある」


金田名誉教授「おや?今更何を頼みたいんですか?テンダー会への再雇用ですか?」


八木教授「戻るわけねえだろ。妖怪ロン毛とたぬきがいる所なんかに…俺が頼みたいのは…」


八木教授の意外な頼み事を聞いた金田名誉教授は目を丸くした。


その後、用事を済ませた八木教授が事務所を出ようと、ドアノブに手を掛けた時、金田名誉教授は八木教授の背中に向けて小さく呟く。


金田名誉教授「ホームレスには優しくするんだよ。なんてね」


それを聞いた八木教授は、少し立ち止まった後に


八木教授「本当にホームレスだったら、優しくしてるよ」


そう吐き捨てて、八木教授は事務所を出た。


つづく

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