第9話:奴隷商の息子は奴隷を炎天下に立たせる
アルノルトは獣人族十名、エルフ六名、人間十名の奴隷が揃っていることを確認すると、ニートからの命令を伝えた。
「ニート様からの伝令! 今から全員中庭に集合すること! 着ているものは脱いで裸になれ!」
ざわつく奴隷たち。お互いに顔を見合わせているが、奴隷の部屋が閉鎖されていたことと何か関係があるのだと誰もが理解した。
きっとニート様の虐待が始まるのだわ、と口々に話している。
「ねぇ、ねえ、アーヴィア。あんた何か聞いてない?」
奴隷たちは、水浴びを許してもらえたのは彼女の功績だと思う者も多く、何か知っているのではと視線が集まっていた。
「え? 私は何も……聞いてない」
アーヴィアは、ブンブンと顔を振って何も知らないと答えると、落胆のため息が聞こえる。
これから何が起きるのかわからない不安感が、奴隷たちを包み込む。
「つべこべ言わず、すぐに行動だ!」
アルノルトの言葉に、奴隷たちは渋々と服を脱ぐとぞろぞろと中庭に移動した。
◆
デルトが水桶を各部屋に置いて周り、雑巾を人数分揃えたのを確認した俺は、部屋を見て回りながら奴隷の部屋割りを考えていた。
空き部屋は八室。奴隷は常時三十名はいるらしいので、とりあえず今の半分の五人部屋がいいだろう。
エルフは売れ筋だから回転も早い。六人部屋にして様子を見て、増えてきたら他の空き部屋を使うとするか。
空き部屋は元領主が、来賓の家族を泊まらせる為に作らせたため広さも十分にあり、各部屋にベッドが備え付けられていた。
今までのように床に雑魚寝するより、ベッドで寝た方がぐっすりと眠れる。
きっと奴隷たちも喜んでくれるだろう。
あまりの嬉しさに、抱きついてきたらどうしようか。うへへ。
下心は別にして、奴隷が少しでも元気になってくれたら俺は嬉しい。
部屋の件はこれでいいとして、後は奴隷たちのトイレをどうするかだ。
えっと、トイレは俺たちと同じではマズイだろう。かといって、今までのように部屋に便壺を置くのは不衛生だから、どうしようか。この屋敷に共同トイレらしいものも見当たらないし。
「デルト。奴隷たちの便所をどうする?」
名前を呼ばれてギョッとしたデルトは土下座すると、おそるおそる「お部屋でどうでしょうか」と答えた。
相部屋なのにそれでは、たとえ女同士でもイヤじゃないかな。
仮にこの世界ではそれが普通でも、俺としては便所は別にあってほしい。
「この屋敷で、水が流せる空き部屋はあるか?」
「はい、一階に土間になっている空き部屋がございます」
一階なら、二階の部屋からも外からでも行きやすいか。
よし、そこを共同トイレにするかな。
「では、そこをトイレとする。便器を運び込んでおけ!」
「はっ! かしこまりました! ……あのー、申し訳ありません。私は
「トイレは、便所! 便器は用を足す壺だ。壷を運ぶのが大変なら奴隷たちと一緒に運ぶといい。掃除が終わったら、みんなに手伝わせろ!」
デルトは、承知しましたと返事をすると、走っていった。
こらこら廊下は走っちゃいけません!
入れ違いにアルノルトが姿を現した。
「お待たせしました。奴隷たちを中庭に集めました。これからどうしましょうか?」
「わかった。俺も行く。奴隷たちにはここの空き部屋を掃除させろ。それぞれ一部屋に五人ずつ振り分けてくれ。それと、エルフは六人で一部屋を掃除するように!」
アルノルトは、かしこまりましたと片膝をついて礼をすると、足早に立ち去る。
ちょっ、待って! おーい、置いていくなよ。
俺も行くって言いましたよね?
◆ ◆
中庭に出るドアの前で、俺は立ち止まった。
外の様子を見るが怖くなり、大きく深呼吸して落ち着こうとした。
さきほどから、女の奴隷たちが集まっていると思うと心臓バクバクしているのだ。しかも、緊張して喉が渇いてきている。
まあ、俺が喋るわけではないからいいか。
黒光りする木製のドアを開けて外に出ると、眩しいくらいの日差しが目に入った。
逆光でよく見えなかったが、奴隷たちが集まっているのはわかった。
アルノルトが近づいてきて、横から話しかけて来る。
「ニート様、何かお話しされますか?」
「いや、俺はいい……」
アルノルトにそう答えると、奴隷たちのほうを改めて見た。
「ぬあっ! な、なんで全員スッポンポンなんだよ!」
思わず素っ頓狂な声を出してしまった俺は、目のやり場に困り、思わず後ずさった。
目の前に、全裸の女性が集団で立っている光景はあまりにも壮観!
「ア、アルノルトさん……なぜみんな裸なのかな?……」
「あっ、申し訳ありません! な、何か問題でも……たしかニート様が服を脱いで集まるようにと……」
「ば、馬鹿か! あれは、風呂に入って綺麗になった体に汚い服を着たらまた汚れるだろう、だから着替えてから来いという意味だろ!」
アルノルトは、勘違いを土下座で詫びた。いちいち土下座はいいから。
「恐れながら、あの者たちは着替えの服を持っておりません」
「へ? そうなの?」
チラッと奴隷の娘たちに目をやると、みんな下を向いている。
おっぱいの先は上を向いているのに……なんて、しょうもないことを思い浮かべるほど、俺はドギマギしてしまう。
下はかろうじて手で隠してあるから、まだいいとして、おっぱい丸見えは実に良い眺めだ。
よく実った大きなものから、まだ発展途上のちっぱいまで、ざっと見回しても千差万別、十人十色だ。
こ、このままでいいかも……いやいや、待て待て。これでは虐待と言われてもおかしくない。
「
「ございますが、あれは売れた奴隷に着せる為のもので使ってはならないと……以前ニート様が……」
え? 俺そんなこと言いましたっけ?
「とにかく、掃除させろ。その間に服を人数分用意しておけ」
「はっ!」
俺たちの会話は奴隷たちに聞こえていなかったようで、みんな下を向いて立っていた。暑いのに、いつまでも立たせておくわけにはいかない。
よく見ていると、みんなが直立している中、一人だけしゃがんでいる女の子がいる。猫耳? ショートヘアの可愛い娘が、しゃがんで頬杖を付いている。
「アルノルト、あそこの娘は?」
「も、申し訳ありません!すぐに立たせます」
「いや、いい。気分でも悪いのかもしれん。連れて来い」
アルノルトが、走って猫耳娘のところへ行くと手を引っ張り強引に連れてきた。
「痛えな!引っ張んなよ!」
あらあら、元気がいい娘さんだ。
気分が悪いのではなく、態度が悪いだけだったんだね。
「な、なんだよ。こんな所にいつまでも裸で立たせやがって、座ったっていいじゃねぇか!」
「このっ! 黙らんかっ!」
アルノルトは、猫耳少女の頬を殴りつけると、突然殴られた少女はもんどり打って倒れた。大きなおっぱいも、一緒にぶるるんっと揺れている。
「「な、何も殴らなくても!」」
俺と少女は同時にアルノルトに抗議した。
少女と目が合い、お互いにギョッと目を見開くと目を伏せた。なんだ、これ。猫耳の娘とシンクロしたぞ!
「大丈夫か、猫耳娘」
俺がそう声をかけると、猫耳娘が立ち上がってムスッとした顔で言った。
「ウチは猫とちゃうわ! 獅子人族や!」
「同じネコ属だから似たようなもんだろ?」
「一緒にせんといて!」
奴隷はみんなビクビクしてるもんだと思っていたが、こんなじゃじゃ馬がいることに驚いた反面、妙に萌えた。
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