ひたすら餅を食べるお正月の朝(昼)

元日、お昼頃に起き出した二日酔いの男が、ただもりもりお餅を食べまくるだけのお話。
本当にほぼそれだけの、どこかグルメ漫画のような趣を感じる作品。特徴的なのは書かれ方というか、描写のカメラがかなり主人公に肉薄しているところ。要は一人称形式の言文一致体なのですが、その中でも特に口語に近いというか、主人公の脳内をそのまま書き出したかのような雰囲気があります。
思考のセグメントをそのまま短文として積み重ねていくような書き方。表現は簡素かつ端的で、思考の筋道にも余計な寄り道がありません。その上でこの主人公が次々食べるお餅の、その描写の丁寧さ。この辺りが魅力的というか、キャラクターの主観的感覚や読み手個人の記憶に依存することなく〝味そのもの〟を伝えようとしてくる、そのための書き方の骨太さが好きです。
よくよく読み直してみると一度にとんでもない量のお餅を食べているのですが、実際知人にこういう人がいるので(普段は大食でもないのにお餅になると無限に入る)、なんだか親近感のようなものを感じながら読みました。見てると本当に面白いですよこの光景(ありえん量がどんどこ入っていく)。