群青の街の律術士

夕野草路

人間の境界

第0話 夢の話

 その景色は夢だと、すぐに分かった。


 夢の中で俺は、背負った袋を下ろす。中にはガラクタが詰まっていた。ふぅ、と一息。手で額の汗を拭う。


 突き抜けるように青い、夏の空。山のような入道雲がそびえている。視線を下げれば、海は何処までも広がっていた。ここからは、そんな光景が一望できた。

 

 綺麗だなあ、と思う。

 

 俺の足が立つその地面は、ゴミの山だったけれど。

 

 不意に、袖を引かれる。


「ほら。いこう」 

 

 手の主が言った。

 

 仲間の笑い声が聞こえる。

 

 彼らに置いて行かれないように、俺は駆けだした。

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