あなたを麻雀好きに導きます

@kenichirou-ohiwa

第東章 福島ノ福島から導きます


地元でもそこそこの進学校に入れた。

ローカルテレビ局が近くにあり、信夫山に見守られるように、私が入る学校はある。私は毎日渡利から自転車で通っている。

私にとってはそれが当たり前で、疑問を持たずに地元での生活をそれなりに満喫していた。1年に1回近くの花見山という山に観光客が押し寄せる。見たことない大型バスにおっかなびっくりする紛れもない田舎の子、それが私。

私がここに入った理由は簡単。

ここなら、私と一緒に麻雀卓を囲んでくれる人がいるだろうと。

麻雀は頭を使う。ましてや私が目指しているのはテレビカメラ晴えするプロ雀士。そういう子を地元の限られた選択肢のなかで見つけるならこの高校だろうと。

元女子校、今は共学になったがそれでも伝統的に女子率高い。私ほど麻雀熱高くなくてもいいから、とにかく3人つかまえてルールを教えて、毎日出来るだけ卓を囲んでほしい。

まず1人、協力的な子がいた。

日本にいる期間が限られている、モノホンのお嬢様・崖霜聡美ちゃん。アメリカ、ヨーロッパ、北欧、南国、ドバイ、幼少期から様々な場所に移り住み日本にやって来た。当たり前のように都会や観光地ではなく日本でも福島に居住先を選んだのは、ああいう背景があったからだろうか。合格発表&手続きの際に隣合わせ、意気投合した。家の場所は聞いてないけど、駅チカらしい。新幹線も止まる福島の駅チカってのは都会の人と違ってそんなにアドバンテージがあるわけではないが、バスでどこでもいけるメリットはある。で、当然のように別荘を建てる。1年半しかいない予定なのに。

発祥は中国でもルールは日本独自、といった途端、お嬢様は食いついてきた。

外見はそうね、健康的でお尻もしっかりしていてお胸の発育も良くて、いいお母さんになりそうな、食べているものが違うからかな?

「美果ちゃんはオッサンみたいね」

私、武井美果は、心がオッサ、いや待て。

華のJKをこれからスタートさせるのよ。そんなイメージつけないでよ。

「麻雀好きがそう思わせるなら心外だなあ」

私の憧れる麻雀打ちは、そう、麻雀打っていてもカッコいいかわいいメディアの向こうの人だ。

「美果ちゃんもそうなりたいのね」

「日本らしいこと経験してまた海外行っちゃうんでしょ?」

聡美ちゃんにとっては元号が変わって貴重な日本を感じられるタイミング。日本人のほうが日本を分かっていない。

「日本の麻雀、覚えても損はないかな~って」

「いいよ、でもあと2人いるんでしょ?」

人数合わせで聡美を誘って私はあとでエライ後悔をすることになるのだが、その理由はあとで。

麻雀で友達増える。女子でも麻雀を始めやすい環境にこれ以上ないほど近づいている。これを加速させたい。

ぼっちのあなたも大丈夫。私を信じて麻雀覚えて一緒に打とう? 今これを読んでいるあなたを麻雀好きに導きたい。

私なんて単なるファンで実際弱い。それでも麻雀は楽しく打てる。どの領域を目指すのかは、人それぞれだ。

「美果ちゃんの自己嫌悪意識にはかなわないよ」

私が反省しちゃうタイプだからこそ、読者には楽しく気持ちよく麻雀を打ってほしい。

「美果、気にし過ぎ。局変わったらリセットだから」

冷静沈着、優等生。平尋歌は学年1、学校全体でもかなりの期待をされている成績優秀者。そんな子が、麻雀に興味を。

「美果の熱血漢なところは私にないからね」

麻雀もその冷静さで淡々と勝つ。勉強と同じで学習の積み上げだと尋歌は言う。

もちろんそんなに麻雀は分かりやすくないからこそ、尋歌は私の誘いを受けている。理不尽ゲー要素は、人生みたいだと尋歌は言ってくれた。

「運不運の案配と実力の案配が人生そのもの。勉強に向き合うのとは違う感情が芽生える」

麻雀のし過ぎで馬鹿になるは間違いですよ! むしろ人生に真剣になれる。全国模試でも1位を当たり前のようにとる尋歌が、私の勧めた麻雀に夢中。

さ、あと1人。日当たりのいい文化部室も確保した。あとは4人目。

しかしこの4人目で苦戦を強いられる。

まだまだ麻雀は浸透してない。ダークなイメージ、難しいイメージ、暗いイメージ――せっかく自慢の美女、才女を集めたのに、卓を囲みたい人が現れない。

いや、邪心はある。女から見てバレバレのモテようとしている男はちらほらいるが、どう見ても麻雀強くなりそうな気配が見えないのでこっちから断った。

ここで『アホづら下げた男は麻雀部に入れない』という固定観念がついてしまったことが、人員確保にマイナスに働いた。

私がカメラ向けられて麻雀を打つプロに憧れていたからそう考えてしまっていた。麻雀を知ってる知ってないではなく、将来性で幅広くあたるべきだった。

「悪いけど、麻雀牌見たくない」

父に麻雀を教わった、強さも高校生離れしているらしい球樹道留をしつこく勧誘。道留君がその麻雀で嫌な想いをしているというのを考えずに、これはダメな例。

麻雀が悪いというより、麻雀に夢中になりすぎて家庭を崩壊させた道留の父親が悪い。離婚して父は雀荘経営、母は地元の福島に帰ってきたと。

気が乗らないなら無理強いは出来ない。そんな想いをしてまでする競技ではない。

そこまでハードな事情がなくても、麻雀に向き合いたくなくなる要因はある。待ちが何枚あろうが待ちが1枚の人が勝つ、高い手が安い手に潰される、むしろ高い手が入ったが故に振り込む。何をやっても勝てなくて、投げ出したくなる。それが麻雀。

そんなハードモードに挑むくらいなら普通に青春したほうがいい、確かに。

道留みたいに若者は黙って運動部に入るべき。いや運動好きならいいけどさそれでも。

運動嫌いな人の居場所も欲しいよ。

他に相手してくれそうな人。

「また始まった」

うるさい琢磨。神宮寺琢磨。

幼なじみのウザイヤツ。人生やる気のなさ選手権なら1等賞をとれそうな、いつもあくびしているヤツ。

「夜な夜なゲームですか?」

「いや、とりとめもない考え事」

ほんと、ワケわからん。

「麻雀、いや誘うだけ無駄か」

合格ラインギリギリだった琢磨は、さっそく授業の難しさにギブアップ。私もこの学校では出来るほうじゃないから、琢磨を下に見てる余裕はないが。

「尋歌に勉強教わるチャンスよ」

「秀才様の教えで理解出来るかよ、いてっ」

とりあえずポカっとな。

「勉強ついていけないのは私も一緒だから。頑張ろう」

数合わせで、琢磨を引き込んだ。

とりあえず、4人。

一応地方の進学校でも、トップなら日本の最高学府には進学実績がある。メインは北東大学への進学が望まれている。そこには毎年数十人。

そういうのは尋歌やお嬢様の聡美、あと運動部でへとへとなのに成績いい道留に任せて、とりあえず私と琢磨は赤点をとらないようにしないと。

で、いいんだよ、進学校のゲンジツは。

麻雀の話がしたいの。

文化部室をぶんど……麻雀に理解のある先生に顧問になってもらって、部室をいただいた。

まずすること。麻雀が出来るようにする。さすがに手積みのヤツだけど、年季の入ったいいヤツを道留にもらった。

「なんか霊がついてそう」

牌の裏の茶色部分はほとんどが濁り、確かに生物に見えなくもない。琢磨、霊感あったっけ?

ここから牌に妖怪が宿って能力者バトル風の麻雀格闘技に、ならないよ。

琢磨以外は、雀風こそあれ皆普通に麻雀を打つ。私が聡美と尋歌に麻雀を教えた時、キャラをつけた方がいいと教えたのに影響されたのか、素直なのか。

琢磨はキャラというより運極というか、アホな顔して打っていると配牌が役満以上にレアと言われる普通の役で上がるモードになる。三色同刻少年と呼べるくらいには。槍槓も琢磨と打ってると何度か見た。めったに見ない役だからと安易に加槓すると偉い目に合う。勝負手でしょうがないとはいえね。

聡美はテレビ対局映えする、まあかわいいし容姿もそうだけど雀風も派手勝ち派手負けタイプ、失点の抑え所を知ったらもっと強くなる。

尋歌は逆にリーチ嫌いの振り込まない防御スタイル。高い手を潰す安い手、かわすための安牌持ち術に長けた雀風。ここに攻撃力加わればもっと強くなる。

聡美と尋歌は普段のキャラ的にも無理してない。聡美はお嬢様だから意外かもしれないが、お嬢様故の普段しきたりに従う窮屈な生活で自分を開放出来る場として麻雀ではハジケル、らしい。文化祭が楽しみだと入学したてで言うくらいだから本物だ。

尋歌はそもそも勉強が積み立て型の賜物で、かつ偶然に点数が良くなったりしないからというのが防御型になった。柔軟に構えたいからリーチ判断も慎重。かといって安い手ばかりかというと勝負所はきちんと勝負してくる。

教えた私が、一番麻雀にこれという雀風がない。

そう、教えたばかりなのに、なんでそんなに聡美と尋歌は何年も打っていたように出来るの?

琢磨は麻雀の神に愛されてるしさ。

「熱血麻雀キャラでしょ、美果ちゃんは」

自分ひとりから周りを巻き込んで4人集める様が雀風って、それは雀風じゃない。

「場を掌握して勝つじゃない、たまに」

私が勝つ時は強烈な他人の個性を私色に染めた時、それが巻き込んでいるってことかな?

もちろん地方の学生のアマチュアレベルではあるが、私達はそれぞれの方法論を持って麻雀に打ち込む青春を送ることに決めた。

もちろん信頼関係なくしては卓を囲めないから、ただしゃべる日も設ける。週1回はね。

「琢磨をみんなうらやましがってる」

「お嬢様と秀才と幼なじみに囲まれる青春」

「ミカンが誘ったんだろ」

「ええ、ええ、タックマを誘ったのは私です」

向こうが子どもの時ので呼ぶなら、こっちも。

「小さい頃からの信頼関係、いいわね」

聡美は海外を転々としているから、その度に人間関係が切れるわけか。既に一生分の海外旅行しているようなもので裕福でうらやましいともとれるが、孤独だしだいたい家庭の方針で聡美の意思ではない。

「こんな理想のカップル、夢よね」

誰が?

「あなた達が」

聡美は私と琢磨を指した。

しばらく固まっていた。

「昔から知ってるってだけだから」

「崖霜さんは同世代となかなか交流できないお家柄なんでしょ」

なんで配慮しているのかいっぱしに琢磨は。

ガキでしかないくせに。

「聡美、駄目よ、まだ見えてない」

そして尋歌は天才過ぎて人のオーラまで見えるようになったのか?

「麻雀やろう」

私の麻雀誘い文句は私と琢磨の仲を勘ぐられないための言葉と化している。

雀士ファンからのスタートだからか、3人の麻雀を打っている姿も思わず見ちゃう。勝つために思考を読むふりをして、お嬢様の余裕と才女の思考回路と、ボケてるふりしてちゃんと打とうと思えば打てる男と、それぞれ表情が面白い。ちゃんと勝とうと思って打ってくれる。何か報酬があるわけでもないのに。

「勉強よりかは楽しい」

早々に進学校の勉強具合についていけなくなった琢磨は、暇潰しの手段として麻雀に望む。ある種内容が悪くても勝てるのが麻雀であり、いくら琢磨がボケっとした顔で打ってようが、配牌がいい時は勝つ。

日本特有のものだけでなく、日本で独自進化を遂げた海外由来のものに対しても興味津々な聡美は、麻雀だけでなくラーメンやカレー、寺つまり仏教やハンバーガーまで、お嬢様目線というよりは海外生活のほうが長い日本人目線で独自に追及している。

尋歌はもちろん勉強第一読書も幅広く読むが、計算出来るようでできない麻雀には違った魅力を感じるようだ。

勉強している時も、尋歌はこういう顔をするのだろうが、勉強している姿を眺めることはない。麻雀だと、相手の手を読む名目で、表情を見ることが出来る。基本は打つスピードと川で読むのだけどね。

私の麻雀スタイルは公私混同。気持ちよく麻雀を打つマナーはもちろんのこと、その上で表情を打ちながら楽しむ。気があっちこっちに行くので麻雀はなかなか強くならない。

琢磨は消去法でも、聡美と尋歌は私が自信を持って世に送り出せる美少女達ね。私がプロデュースしたいくらい。どうしよう。まずは被写体練習か。麻雀の素養は2人とも間違いなくある。聡美は様々な国の生活を経験した上で、身を置いて生活したい場所で利他の精神で働ける心構えを持ってほしい、と。

もし聡美が日本を選んでくれたなら、必ず麻雀プロになって欲しい。今は派手勝ち派手負けタイプだけど、磨けば必ず強くなるはず。

尋歌もいわずもがな。勉強が出来るイコール麻雀が強くなるわけではないが、尋歌は向いている。早々に打つスタイルを決めた。けど頑固にリーチしないわけではなく、リーチの割合が低いだけ。かき回す鳴きも多く、しかも涼しい顔でする。すでにプロみたいに打つ。やはり学習能力が高い。

問題は琢磨。カメラに映る顔ではない。女から見て不快とかそんなんじゃなく、やる気ないように見える。本人的にはあくびのひとつもしながら打つほうが好配牌が来るらしい。謎理論。

で、実際にそうだから厄介。

ま、私に言われて嫌々と麻雀に向かわれるより、ちゃんと打ってるのは打ってるから、いいのかな?

「気づけば頭の中は彼でいっぱい」

「聡美、恋愛脳なんとかしなさい」

私と琢磨はたまたま小さい時に同じ学校だった。それ以上でもそれ以下でもない。この高校を卒業したら、進学する人が多いけど私は早く麻雀プロになりたい。だから都会に出るだろうね。だからそこで関係は切れる。清々する。

「じゃあ私が彼のこと誘惑してもいいの?」

「あんなアホ面男でも恋出来る聡美は人が出来てるさすがお嬢様」

下々のものにも余裕ある対応。

「私なんかが手を出せないよ」

「そう、聡美お嬢様にふさわしい殿方は他にいる」

「私をそう言うことで悪い虫がつかないようにしている?」

何? 私が睨みを効かせているって言いたいの?

「そうね、じゃ、尋歌に琢磨が勉強を教わっている姿を出しましょうか、はい」

いつの間にか周りは部室から黒い空間に変わり、分かりやすく尋歌と琢磨にスポットがあたる。

「この公式はこうこうこうで」

よどみなく、理解度を見ながら尋歌は教えている。何が言いたい、聡美?

私よりもみんなのほうが麻雀強い。何となく麻雀を知ってた私なんかより麻雀の強さの勘所に気づく尋歌、外国経験値からフラットに見られる聡美、恐らくは天性のセンス・琢磨。そしてここにはいないけど別れた父直伝の熟練の腕を継承する道留。

みんな麻雀を強くするのに麻雀以外の世界から貪欲に学ぶ大切さを知っている。特に私達はまだ10代だし、人生経験値が少ない。他の世界を知らないと壁でポッキリ折れてしまう。私がまさにそうだ。感情が表に出てしまう。

理不尽が起き続けるのが麻雀。分かっているつもりなんだけどな。

「ファンのままでいたいのではないんでしょ?」

ここで琢磨がいっぱしの口を。

「競技者になりたいなら考え方を変えないと駄目だよ」

琢磨はただぼーっとしているわけではない。周囲の狭い価値観をスルーできるのが、ぼーっとした顔だ。そんな顔のやつに価値観を押しつけようと周囲も思わない。真面目に見せないことで自己を守っている。

「俺が意図的にぼーっとしているの知ってるでしょ?」

何? 私はみんなの知らないあなたを知ってるって言いたいの?

「ミカンは未完のままでいいけど中身は更新していこう」

単に麻雀の腕前というよりは、私が憧れる麻雀プロにも認めてもらえるまずは魅せ方、か。

カメラに撮られて麻雀を打つっていうのはどういうこと? 特に考えないといけない。

ちょっとしたことでも言われる。麻雀マナーは元より細かいしぐさまで。どうしようもないことでも弱いだの間違いだの言われる。

メンタルコントロール、か。

「尋歌ちゃんは得意そう」

「聡美のほうが得意じゃない」

そう、派手勝ち派手負け普段は感情豊かな聡美が麻雀を打つ時はすっと神聖な顔つきになる。ヤバイ、尊い。

尋歌はそもそもノー表情。でもちょっと顔に出る時もある。普段表情筋を動かさないから微細なだけ。

琢磨も関係ないところでぼーっとした顔で打ちながら、本当だったら目を背けたくなる放縦などで意外と冷静。

私だけが、局展開に振り回される分かりやすく表情に出るタイプ。典型的な弱い打ち手。

「それも美果ちゃんの優れた個性よ」

麻雀愛だけは同世代でも1番、かなあ? 腕はまだまだだけど。麻雀普及広報のほうが向いているのかな?

「通訳したくなる中身が大事だ」

麻雀の面白さの伝え方。聡美が、聡美じゃなくても違う文化圏の人が知りたくなる工夫。琢磨は本質を見ようとしている。

「案外琢磨君が1番早く強くなるかもね」

自然体で麻雀に向き合う琢磨が、ね。

私が麻雀に誘ったのに、みんなの方が考えが大人。私だけガキみたい。

おっちょこちょいで情けなくて麻雀バカ。勉強もここに来たらたいして出来るわけじゃないし、なんか打ちのめされたなあ。

「美果ちゃんがいなかったら私達は麻雀してない」

「そう、美果の明るさが私にはうらやましい」

聡美、ありがと。尋歌、そうなの?

アーカイブでも必ず追いかけてチーム麻雀の試合を見たい私って相当特殊なのは分かるけど、誘われて迷惑がってないかなとか、私なりに心配していた。

「勘違い、戸惑い、未熟。誰しもある」

どうしよう。琢磨が大人に見える。

「俺の欠点はミカンが一番よく知っている」

そりゃね。私も知られている。

「欠点を好きは打ち消せる。麻雀を好きで伝えたい気持ちで打ち消している。目的なく高校生活を送るより、よほど楽しい」by琢磨

「美果、未成年のうちに、でもなくていいけど早いうちに人生の目的を決めておかないと限られた時間を浪費するだけよ」by尋歌

「本当に好きでしたいことを決めた人間は強いわ。私の家柄の力なんかちっぽけ」by聡美

崖霜家がちっぽけなら庶民なんか吹っ飛びますけど。まあ聡美が言いたいのはそういうことではないのは私も理解出来る。

麻雀に本気になる以前の話、なんだろうね。

麻雀プロになるのに教養とか所作が必要なのも、結局見られる仕事だから。女流プロだからって舐められたくないし、きっちり強い雀士でありたい。あんまり気負ってない2人のほうが強くて悔しいが、結局私は視野が狭いのだ。

いっそ道留君みたいにスポーツ今のうちに本気で打ち込めるならそれでもいいのだ。親父仕込みの麻雀の腕があるのにもったいないって考えが私の視野の狭さに現れている。

むしろ多くを知って麻雀に還元すべき。身体をなまらせないためのストレッチとか、自分に合ったメイクの仕方とか、料理を通じてマルチタスクのこなしかたを学ぶとか。見識を広く持って時には離れることも大事。

「美果ちゃんがちょっと離れたところで麻雀が嫌いになるとは思えないもの」

負けまくっても目を背けないメンタルはある。私を負かしまくった聡美に言われてしまう。色々な余裕が違う。実際に聡美は高2の夏休み前にはまた海外に居住を移すことが決まっている。日本を知ることが出来るリミットがある。

尋歌の脳に汗をかく尋常じゃない勉強量と読書量はとても真似出来ない。麻雀もその経験値を生かして尋歌にしか出来ないスタイルで雀風がはっきりしている。しかも今はこれ、って言うことは柔軟に変える自在変幻さもある。

意図したあくび顔の琢磨は、来る配牌やツモに身を委ねる究極の自然体。どこにも力が入らず楽々と手を進めていく。変に力をいれがちな私からしたら、とても真似出来ない。その自然体が覚醒すると、一局で三色同刻を何度もあがるのを自然に行える、らしい。

確率論を否定していく。確かに待ち牌が何枚あろうが1枚に負けるのが麻雀だ。

「焦る、よくないって分かっているけどさ」

無意識に焦る、どっちが切るべき牌か、優柔不断は罪になる。

私も、ちょっと麻雀から離れたほうがいい。

ちょっとと言っても、近くの温水プールで泳ぎ、お風呂に入る。ゴミの消却熱を利用したエコな場所。子どもとお年寄りの聖地。

泳ぐのが好きとかではなく、同級生にあまり会わないからここにはよく来る。広々とした休憩スペースも時間つぶしにちょうどいい。

温水プール場から見て川の向こう側を眺めると、今度はオッサンの聖地、どでかい競馬場。

いったい何が楽しいのか私にはさっぱりだ。

麻雀が好きとは言っても、当たり前だがギャンブルとしてではない。メディアにきらびやかに映る、もちろん強い女流プロになりたくて麻雀卓に向かっている。

10代のうちから、根詰め過ぎかなあ?

でも、多分みんなあれを見て、若いうちから麻雀プロになろうとし始めるはず。

どんなに地方にいても見られる。ネットで見られる。アーカイブもある。至高の麻雀が研究出来る環境。

ブレたくない。スキマ時間に麻雀なんていくらでも打てるのに、やらないでどうする。

また頭の中が麻雀でいっぱいだ。

「何が麻雀プロだよ」

球樹、スポーツを極めるんでしょ。こんな川ぞいのサイクリングロード来てどうしたの?

「走り込みの最適な場所でふらふらしているお前に言われたくない」

別にサイクリングロードは運動人間のためのものじゃない。友達としゃべりながら青春を謳歌する場所に使ってもいいはず。

「強くなりたいんじゃないのか?」

麻雀、そうね。

「俺とあと、普段は競馬場通いの麻雀強いオッチャン2人な」

だから麻雀は。

「ギャンブル視されていた長い時代からずっと暇さえあれば麻雀していたオッチャンだ。俺も対等に闘える2人だし、美果相手なら紳士的に打てる」

ほんとうに?

まあ、同世代とばかり打っていても成長がないのは確かだ。世代間の枠を越えて闘えるのが麻雀だ。

「球樹も隅におけねえな」

ここ? 雀卓も置ける県庁そばのフリースペース。ってか改築したの?

「跡継ぎいなくて潰した店を改築。防音装備の麻雀城」

マジか、学校からも来やすいな。

「で、こんなべっぴんと付き合ってどれくらいだ?」

「残念ながら俺じゃない。切っても切れない縁が美果にはいる」

…………は?

また?

否定するだけ無駄だ、こういう場合。

アイツとアイツがどうでどうなの? 他人にとってこれだけ無責任に盛り上がれる話題はない。何せ恋愛話は女の好物だ。私と琢磨を何としてでもカップル視したい周囲。なんであんなアホ面勉強不真面目君と一緒にならなきゃいけないわけ?

しかも、下手に否定してもダメなのが面倒くさい。

というか早く麻雀させてよ。

結果、当然ぼこぼこにやられた。東場は微差のトップだったが、南場で箱下にまで突き落とされた。

「お嬢ちゃん方針がぶれてる。勝負所の読みが甘すぎる」

ただのファン上がりで、学習量に追い付いていないというか非効率な強さの追い求め方をしているような気がしてならない。

多分麻雀の見方を変えなきゃいけない。聡美、尋歌、琢磨はそういうのがないから、ゲームとして楽しんでやっている。聡美はカスタマイズされた新たな日本の娯楽を知るため、尋歌は勉強では味わえない刺激を求めて、琢磨は昔のなんてことない遊びにも負けず嫌いだった少年の心を思い出すかのように。

私は麻雀に何を求めているのだろう。カメラに映りたいだけなら麻雀である必要性はない。モデルにアイドルタレントレースクイーン野球場の売り子女子アナ、うーん違うな。

私は女特有の若い時に価値高い系の世界で勝負したくない。仮に成功してお金が入ったとしても人生経験のなさから勘違いしそうだから。30歳になった時に終わった、ではなく積み上げられるものに生涯を捧げたい。

別に麻雀以外でも老いに関係なく積み上げられそうな分野はあるはずだ。小さな会社を作るもよし勉強だって、偉い教授がオッサンしかいないのはおかしい。キャリアが女性は止まるから? なんで女性だけが止まるの。確かに産みは女性にしか出来ないが育ては母乳以外は男でも大抵出来るはず。社会がそうなってない? そのままでいいとは思ってないけど、慣例が簡単に変わるのも難しい。

麻雀も運が絡むとはいえ、積み上げれば必ず腕の差が出る。覆すのは簡単じゃない。普段競馬場が週末の住み処になっている麻雀を遊びでやるオッチャン達に勝てない現実。

悔しい。いつになったら報われるのだろう。

「プロになるのが全てじゃないよ」

琢磨、そうかもしれないけど。

もはや私の深層世界と化している。なんでだろう? あの震災を幼い頃に味わって、放射能がどうの言われて、本能的に現実の景色をシャットダウンする癖がついたのかもしれない。

福島ノ福島も値がどうのってやっぱり気になる。もうけっこう年月経つのになあ。

深層世界に最初に入ってきたのは、あくびがトレードマークのアイツ。

「手なりでいけばいいんだよ」

来た配牌に素直に打つ。三色同刻少年になるごくまれの時普通の時ツキに恵まれない時、琢磨はねじ曲げて方向性を決めたりしない。

「だって尋歌みたいに勉強できるわけもないし、聡美のお嬢様家庭に産まれたいと思っても変わらないものは変わらない」

不平等が当たり前に存在する。持ち札は決まっている。

「福島の普通の家庭に産まれたのもそれはそれで特別なことだよ。もう世界から変な目で注目され続ける土地になったけど」

立ち入り禁止でなければこれまでと変わらない。私も麻雀プロになるために高校卒業後は離れるが、当たり前のように故郷として帰る場所だ。東北新幹線で都内から時間もかからない。

「尋歌は進学、やっぱり偏差値最高峰行くよね。大学生活どうなんだろ」

私は公立なら行かせてもらえるかな? 多分琢磨の家もそんな感じ。進学校なんで大学進学がメインだけど、就職の道もある。

正直私は若い時間を無駄にしたくない。麻雀の腕を磨く修業をしたい。

「ミカン見てると精神ポッキリ今にも折れそうで心配になってくる」

麻雀愛が上手く強さに作用していない。雀士じゃないほうがいいのかな私は。でも打ちたいんだよ。下手の横好きでもいいでしょ。まだ高校1年のJKっすよ。アマチュアだからこその面白さもあるでしょ。

やっぱり、お堅い進学校で部室に麻雀を置けるのも、あの、麻雀のチーム戦という概念が生まれたからに他ならない。顧問になってくれた先生にこの麻雀スピリッツは学生が社会に出る時に必要なマナーが身につくと説得した。

他人を麻雀に巻き込む力はあるみたい。広報向きなのかな?

多分その人によって麻雀の魅力の伝え方を変えるからだろう。多面的だ。脳の活性化だとか人前での振る舞い方とか計算が早くなるとか人生を学べるとか。

正直役がどうこうとか細かいことを言うよりも麻雀を広めるためには根本から考え直さないといけないのだと思う。だって強いプラス何かが求められているから。

メディアに出る以上、総合値評価されるならば、絶対他の世界を知ったほうがいい。道留みたいにアスリートの世界で色んな肉体スポーツをやってから麻雀プロに来たら全然違って見えるかもしれない。

「違う世界ってのは」

「何その顔」

分かりやすく琢磨は目をそらす。

観念世界まで来て異性苦手ですかそうですか。

全てが嫌になる。

ごく限られた人しかなれない。

お前は強くない。

黙ってファンしていろ。

カメラに映るなブスが。

頭の中には不特定多数の無記名の罵倒で溢れかえる。都会なんて怖いとこ行かなくても地元で幸せに暮らそう。夢なんか見たところで、破れて福島に帰ってくるだけだ。

いやそうだけどさ。震災のショックと先行きの見えなさで自殺を決行したところで何も変わらなかったじゃん。実際にそういう人がいたのは聞いている。ただ明日も明後日も福島は変わらずここにある。麻雀に熱中する青春も、白球を追いかける青春も、死んだら出来ない。

若者なんだから、まだ夢見たっていいはずだ。バカみたいに。

バカでいいよ。

何をとられることがあるんだ。

「美、美果ちゃん、大丈夫!?」

私は倒れていた。ここは?

あれ? なんで私は四季の里にいるんだ。

「私が気分転換にって連れてきたの」

聡美の車ってあれだよね。田舎じゃ絶対見ない高級外車だよね。

「そんなに思いつめちゃうなら麻雀辞めようか?」

私がきちんと強くなるための努力をしないのが悪い。映像の教科書は浴びるほどあるんだからノート取るなりすればいいんだ。学生なんだから。

「私ほど麻雀プロになる気のない尋歌が普段の勉学スタイルを応用して対局を記録している」

そう、武井美果はそんなこともしていない。なんとなく麻雀打っているだけじゃ駄目だ。

対局を振り返って解説までしている、本も出ている。自分がその状況ならどう思考してどう打つのか、プロが惜しげもなく公開しているのに。まだふわふわしている。間違いでもいいから方向を決定して実践で似た状況を経験して、はじめて血肉になる。

サボっている暇ない。

何日部室を空けただろう? 学校にも来ていたっけ私? 体調不良で休みになっていた?

置いていかれたような気分になる。授業はほぼ耳に入らず、麻雀打てる部活の時間まで長かった。

3人は待ってくれていた。また麻雀が打てる。

限られた時間だ。青春は時間がない。戻ってこない。麻雀はこれからも打てるが、学生しながら部活で麻雀はこれで最後だろう。

久々、トップになった。最後にガツンと逆転の満貫上がって。

「さすが美果」

「さすが?」

私のこの4人内での戦績はかなり悪い。なのにさすが?

「私がどれだけ麻雀を勉強みたいに学習しようとしても、美果には勝てない」

あれだけ対局データを板書しといて?

「板書したから強くなるわけではないよ、美果」

だろうけどさ。

とにかく一局でも多く麻雀をこの3人と打ちたいし、今まで以上に打ち順を記録して後から検証したい。

聡美に頼んで簡易カメラを4人の手牌が見えるように4台借りた。私の打ち方も指摘してもらわないとだしお互い様。

私は全く読みを外していた。ああ、そう打つんだってことの連続。

なけなしのこづかいはたいて買った本を読み返す。結局は麻雀に向かい続けるしかない。子どもじゃないし、女性だからと甘やかされたくはない。麻雀に関しては。

なんで自分でもこんなに意固地なんだろう?

「琢磨君とバランスとるためよ」

「聡美、また恋愛妄想」

聡美は周りの男女を勝手にカップル扱いするくせがある。

別にもっと他に理想の彼がとかいって負け組に足をつっこむオバサンにはなりたくないし、だからといって、琢磨!?

将来性ないでしょ、この関係。高校卒業したら終わりだよ。甲斐性ありそうには思えないし、私は過去の思い出で生きないの。成長と共に、付き合う知り合う人間は変わる。福島ノ福島みたいな田舎でもそうなんだ。

「うーん」

尋歌でも悩ましいことあるんだね。

「1回おデートしてみれば」

呆れて言葉を失った。しかもおデートってナニ? 天才の思考回路はショートしているのか。

「恋人の雰囲気にならなければ、今まで通り」

尋歌の思惑は分かった。2人でちゃんと恋人がするようなことをして、心がそういうことになれば、付き合うというのを人生の経験値として加えてみては、と。

素敵な夫婦関係の麻雀プロ、たくさんいる。憧れる。琢磨がそうはなりそうにないけど、まあそういう役ってことで、手近な男性ってことでっ、まあ、彼女役してみてもいいけどっ。

まあそれなりにオシャレしても、青春らしいことをしてみても、いいかな?

「どうした、見違えたな」

彼氏役の相手は、それなりにオシャレを考えた私と違って、麻雀中にあくびを連発するくらいに印象最悪。私はそういう奴だって知っているからいいけどさ、まあその時点でデート気分でなくなる女子がほとんどだろう。

「どうしても麻雀プロになりたいのか」

はいそれはもう。琢磨はどうなの?

「麻雀続けてみないとなんとも。じっくり時間をかけて熟成するのが正しい。強くなり方として」

男性プロはぶっちゃけ儲からない側面、ある。同程度の実力なら華のある女性プロを呼ぶ、だろうね。外見にも周りにも気をつかえる、まだまだ男性社会の麻雀界。ぶっちゃけ仕事面でモテる。

だからもし自分がなるなら熟成型、なるほど琢磨はそう考えるのか。

「収入の柱となる仕事を確保しつつ、プロ生活というか麻雀プロ修業ができる団体があれば」

まあ実際はほとんどそうだろうね。私が欠かさず見ているスポンサー付きチーム戦の麻雀でやっと、麻雀のクリーンで知能スポーツ面をアピールする健全なイメージ、老若男女に楽しんでもらうイメージへと変貌を遂げようとしている。

「美果もあんまりプロプロプロってこだわるよりも、麻雀を楽しく日常と並列できるように自然な人生のひとこまにする作業がいるんじゃない?」

私は何も分かってなかった。尋歌は勉強の天才、その技を麻雀に応用してメキメキ強くなる。聡美は限られた日本の滞在時間で日本らしさを存分に経験したくて、まあ将棋とか囲碁とかかるたとりとか日本らしいものは他にもあるが、4人で囲めて運絡むでも技量は確実にいる唯一無二の面白さを持つ麻雀を、私のアプローチをお嬢様は受けてくれた。

2人もまずは麻雀を楽しんでいる。周囲から麻雀プロはまず求められないだろう。尋歌はとにかく一流大学そして学問の世界を変えるエリートの道を、もしくは世界に名だたる企業に就職。聡美は何十じゃ効かないくらいの語学を習得して将来は世界を股にかける活躍をする国際人エリート階層の人間。

そうじゃない、福島ノ福島に普通に産まれ育ち、多少地元の進学校にちょい届くくらいには勉強頑張ったけど、やっぱりついていけなくなるレベルの私と琢磨は、まあ進学をそこそこの入れそうな大学に定めるか、就職するか。

琢磨は自然体で、自分の人生に過度な期待は抱かない。そんな夢みたいなことを現実に期待するほうが間違っている。自然体でいさせてもらえる場所には出向くが、夢とか幻想みたいなことを強要されるなら離れますよ。琢磨の自然体像が壊れて精神の不安定につながるから。

肉体の不安定より精神の不安定のほうが怖い時代だと琢磨は言う。確かに。肉体の不安定は痛みが可視化できるから治しなとか周囲から言われるけど、精神の不安定は指摘しづらい。外見がいくらキレイでも、精神を壊されると自分の命を自分で断ってしまう危険性。

「ぬぼ~っとしているくらいがいいんだよ。麻雀は平静心が美徳なとこがいい」

琢磨からはじめて麻雀の魅力に思っていること聞けたかも。聡美の好打点打法や尋歌の鉄壁防御打法ではない、究極の自然体打法。

「恋愛なんて精神の不安定の究極じゃん。幸せな方向ならいいのかもしれないけど不安定なことは変わらない」

うまくいかなくなったら全ての不幸を背負った気になるしね。

今日は信夫山の歩行者・自転車用トンネルを越えてジャスキに行く。たいていのものはそこで揃うし、学生の懐にはあたたかい庶民の憩いの場。自転車デート風、ですよあくまでも。

「生きているだけで素晴らしい」

10年のわだかまりもとけるほどに。

「まず目の前に君がいることが奇跡」

やっと役になろうとしてきたのかな?

「麻雀は生涯やるよ、俺も」

「私もそれはそう」

下手の横好きでもなんでも、物事をはじめるのに早すぎるというのはない。しかし漫然と時間をかければいいのではなく、正しく研鑽を積む必要がある。

「俺には美果みたいな麻雀の情熱はない」

「私には琢磨みたいな麻雀の平静はない」

お互い麻雀に必要な反する感情を持ち合わせている。

あれ、これって、えっと。

まさかね。

「平静と情熱の間」

なんかキャッチコピーみたいだね。

「いいコンビかもな」

お笑いしないよ、麻雀ね。麻雀もコンビ打ちというかチーム戦みたいなのあるけども。

時と場所はぎゅんと変わって部室、そうチーム戦やってみようってなった。私と琢磨チーム戦、聡美と尋歌チーム。

実力差は明らかに向こうが上。

「愛の力で勝つんでしょ」

聡美の油断させる作戦。

「油断するような心理になる美果、意識している」

尋歌までなんだよ。

でも、結果勝った。なんか琢磨がどんどん私の鳴きたい牌を切ってくれて、私が点数を稼ぐだけ稼いだ。

「尋歌ちゃんなら私のサポートできるかなと思ったけど、カップルには勝てない」

聡美はお嬢様で表向きおしとやかだが、打ち筋は自己主張の強い攻撃型タイプだから、そもそも2対2麻雀は向いてない。もうカップルいじりは勝手にして。

「琢磨もまんざらな顔している。計算では導けない顔」

尋歌に言われて見たら、うわキモッ、キショッ、これと私? いやいや絶対いや。

麻雀に対する考え方も水と油。着実に麻雀を強くする考えは共感するけどそこだけ。あとはまるで尊敬できない。

女心を読む気がない普通の男。というか何にたいしても興味を持たなそうな男。男の子が好きそうな分野も興味なし。そんなことよりあくび顔やる気ない顔はもはや興味あることあくびでいいよねあくび君ってくらい。いやいや病気かもしれないから寝不足が慢性化しているならお医者さん行ってらっしゃい。とにかく私は嫌だ。別にイケメンを求める少女漫画の主人公をしたいわけではなく、自然体でいられる相手ならそれでいい。でもそれは琢磨ではない。

否定すればするほど脳内に琢磨との過去が思いおこされてきてそれが自身に対するムカつきに変わる。麻雀しているとそのモヤモヤが脇に置かれるので麻雀をアプリなりリアルに打つなりして研鑽を。

これじゃ意識しないようにごまかしているみたいじゃない。ダメダメ、聡美や琢磨の思うつぼ、尋歌もなんだか乗っかってからかうしさ、何なの。

あと琢磨と関係ないけどちょっとモテたら調子のるバカ男の愚かさで世界は腐臭継続中だ。浮気だ不倫だなんだ。もちろん男だけではないが、あの、自慢してくる様が男は特に最低だ。女は過去の男にグチグチ言わない傾向が強いから好き。最低な下等存在には女は条件をつけて排除する義務がある。女の普通条件に叶う男いない、ああそうですよ、そういうこと言って怯ませないと怖いんだよ女は。分かるかな分かんないかな男には。

デリケートなんだよ、私もそんな歳になってきた。JKってことはいよいよ、まず義務教育期間は終了しているからこっから先は余技の人生勉強期間になる。尋歌の得意な勉強だけが学ぶべき勉強じゃない。女として学ばなきゃいけないこともある。なんか嫌だ。

男に頼らず自分で稼ぎたい。女の力でなびいてとか最低じゃない? 麻雀は個人戦でしかも1対1じゃないのがいい。小さな思惑が交錯するのにちょうどいい。

結局プロに無事なれたとしても、雇うとか仕事を振るのは男じゃん。そこまで世界を変える力はないけどかつての麻雀しそうな人のイメージはガラッと変えていきたい。

福島ノ福島からあなたを麻雀好きに導きますよ

、私は。

あとさ、私は将来結婚したとしてさ、奥の様になるってのはなんでなのかな? 男が主の人なのはなんでかな? 言葉だから決まっているからそこに疑問持つな? 主人は男のための言葉、奥様は女のための言葉っていつから決まった?

検索したらジェンダーって出てきた。うーん、確かにと違和感が混在する。しょうがない、この方と私は別人だから。意見が違うのは当然。

ほぼ確かにとは思うけどね。

主人と奥様なる言葉ひとつとっても人は与えられた用語に疑問を持てない。麻雀も分かるようで分からない知的スポーツ。そもそも麻雀の広め方がこれで正しいのかも分からないし、今のルールが広めるのに障害になっているのかもしれないし、これも言語と同じで、その世界にずっといると、疑問を持つほうが周りに疎まれる。

琢磨みたいなダメ人間養うとか罰ゲームでなければなんなんだ。

「夫婦ケンカこわいよ~」

聡美、いい加減にして。

「私だって美果ちゃんみたいに好きな人いたらなって思うよ」

金持ちでかつ体型もモデル級で顔もかわいくて非の打ちどころもない聡美、男が恐縮しちゃうレベルでピンってパターンかな?

尋歌もリーチ嫌いって麻雀のスタイルにも現れているけどスキがなさそうで男からしたら恐れおおい話しかけるな空気がスゴい。孤高の才女イメージがスゴいからピンなのかな?

道留はマネージャーの彼女をゲットしたはいいものの先輩と別れてすぐだったらしく部内で関係性こじれまくっている。女性問題で部内の空気を悪くしてしまった。いくら道留に運動のセンスがあっても団体競技だとね。

いやまあ体力スポーツは男女で差ができるのはしょうがないよ。身体の構造が違うし。そのかわり女性にしか出来ない大事なことがあるからさ。産めない身体になるまでトレーニングで追い込んじゃダメだし、正しい知識がないと身体を真に傷つけてしまう。

違う意味合いで、産めない身体になるかもしれない。悲観論が福島中を覆ったこともあるけど。福島で使っていた電力ではないからな。主に作っていたのは。

別に今の福島ノ福島は変わらない。無理矢理でもなく忘れてはないけど日常を送っている。福島ノ福島に関しては住めなくなった海沿いの人が仕事を求めてくる場所でもある。

でも、やっぱり麻雀強くなりたいなら、田舎を出ないといけない。高校のうちはここで人生経験も含めて地元を味わい尽くしたい。もう多分ここは、人生でお盆の時とか年末年始とかしか帰らない場所になる。福島愛はあるけどそれ以上に麻雀愛のほうが勝るので。土地を抱いて死ぬわけにはいかない。

だから私が巻き込んじゃったから、他の3人は麻雀あの頃していたなあって思い出くらいでいいと思う。3人とも私から見たらセンスの塊だけど、本人がしたくないのを無理にね。

背の高い人が有利だよって言われてもスポーツをする気がなければしないように。

そう考えると内面って大事。私も外見ばかりどうしても見ちゃうし気にしちゃうけど、映像に残る麻雀プロになりたい私にとってはなおさらだけど、メンタルが弱いとどうにもならない。メンタル受け流し力選手権日本一の神宮寺琢磨はやる気のない眠そうな顔で周囲の戦意を喪失させる。もしかして寝てる? 睡眠不足なんじゃないこの歳にして。いや軽睡眠状態の彼はマジで麻雀無双になる。麻雀のレア役が来やすいのもそうだけど普通に手のつけられない強さになる。逆にシャキッとすると平凡な高校生になってしまう。

聡美と尋歌は自分の得意分野がはっきりしていて、麻雀にそれを応用している。

幼い頃から海外滞在経験豊富で、世界に対する視野が尋常じゃない。振り込んでもガンガン高い手をつっこんで来る様は他人を油断させない怖さのある崖霜聡美。

数値管理が麻雀の全てとばかりにあらゆる傾向データを独自収集。今すぐにでもプロ試験受かりそうな、でもそれは数ある事象のひとつを記録しているに過ぎないという平尋歌。

私も、麻雀にこの3人を誘って良かったと思っている。それぞれの方法論で麻雀に真剣さを感じるから。やる気のない人としたくないもん。

ま、恋愛とかよく分からないし、とりあえず目の前にある麻雀にかじりつく。

女性でするの、珍しくなくなったとはいえまだまだ少数派。私が強くなれば、広まるのかな? 周囲にいた強くなりそうな人には広めた。もっと影響力を持ちたい。最終的には、産まれ育った地元に貢献できるようになりたい。

「私達には夢ないもの」

尋歌くらい勉強センスがあっても、見えないものがある。

「何となく誉められるものが人より向いていただけで、自発的に面白いものを見つけたわけじゃない」

「私も家の教えに従っていただけだった」

世界を見て回っている聡美も? 海外って純粋に夢をプラスに語りやすい印象あるけど。

「海外は海外特有の問題がそれぞれにある。世界のどこに行っても理想郷はない。私の場合は与えられた豊かさだし、自分で獲得していない」

世界の富をどれだけ集めて英才教育したとしても、本人の本当にしたいことの解答は出てこない。本人の心の中の問題だ。

「使いきれない大金持ちの金が宙に浮いている、イヤミに聞こえたら申し訳ないけど」

だろうね。もう金銭で充足できるものはあらかた手を出した人は世界に多数いる。そうなると金で買えない価値を求める。若さもそれに該当するのかな? 1秒だってお金で買えない。お金で短縮できることはあっても時間そのものは買えない。他人の時間を買って労働してもらうのが経営者。

麻雀は、どうなんだろ。実績とか実力が全てプラス魅せ方の世界、大の大人がより集まって考えたひとつの結論が、麻雀をチーム戦にしてユニフォームをきて、盛り上がって応援であるならば、その先はどうなるのか。私はそこに関われるのか。

関わるに足る人物になれるのか。

「麻雀知らない人間を麻雀させる気にさせちゃう美果ちゃんなら、大丈夫だと思うけど」

麻雀バカ過ぎてひかない? 周囲が。

「そんなに人を好きにさせるんだって面白く観察しているだけでは物足りなくなった、美果の力」

「俺の人生に対するやる気のない意識を変えさせる」

そんなに鬼気迫っていた? 私?

「醒めた目で世の中みがちじゃん、私達のこのくらいの歳って」

聡美なんか凡人が経験できないこと経験し過ぎているからなおさらね。

「美果についていったら大丈夫だなって信頼は、容易に獲得できるものじゃない。しかも入学したての頃から美果はスターだった」

だとしても、3人以外は味方になってくれなかった。球樹は麻雀を忘れないでいてくれれば一応味方? ゴルフ本気でやるみたい。福島に練習場なんてあったっけ? ああ、あるね。

球樹は様々なスポーツを少年の頃から体験したのちに、ゴルフに行き着いた。

私は今は麻雀だけど、ちゃんと他にも勝負勘を養うやつ、覚えたいな。

まだ一生の仕事を決めるのは早すぎる。

でも今一生懸命になれるのは麻雀。

未来の事は分からないけど、とりあえずね。ファン出身がなろうとしてもいいじゃない?

またスゴいアイドル達の麻雀番組争奪戦を見てさ、ファンとしては胸踊るのよ。麻雀をやる敷居を下げるのに確実に貢献している。

そう、私だって強くない、ヨワヨワペチペチの女だ。教えた当初から自分に合った雀風スタイルを考えた3人とは違う。運のゲームかもしれないけど長時間やれば確実に実力が出る。そのバランスも麻雀の魅力。

やっぱりじゃん。女は自分で稼がないと。高収入の旦那に任せて贅沢三昧していたけど、夫がうつになって終焉するって非常に現代の問題を象徴している。

私も女だから、本音で夫となる人には少しでも多く稼げる人であってほしいと願う。より豊かに家族を安心させたい、本音というよりは母の本能に近い。つまづきのきっかけがうつというのも、精神力が現代の趨勢を分ける。

鬱になる。この病に対して現状の人間はあまりに無力、精神の病気はめんどくさいってみんな考えないように近づかないようにってなる。それが発症者の孤立にますます近づく。

知ること、誰でも検索できる時代。精神的な悪循環、女性は男性以上になりやすいって、怖いな。麻雀が楽しくなくなる私か、そればかりか何に対しても楽しくなくなる私、笑えなくなる私、怖いよ。

精神病にもっともなりにくそうな男なら、近くにいるけど。おきらくに生きている琢磨、普段から俺はやる気ないですよ~って示しておくことで周囲から来るストレスを寄せ付けないようにしている。

例えば琢磨がうつになる。うーん、あの軽睡眠状態ってどうなっているの、麻雀をちゃんと打てて発声もできてでも少し寝ているあの状態、びっくり人間の類いだよね、麻雀の強さ弱さ関係なくスゴいやつ。

そういや琢磨が自分を否定的に言うの聞いたことない、当初の軽口も、なんか最近聴かない。

「琢磨、麻雀に関してどう思う」

「時間を彩っている、かな?」

麻雀の楽しさに? 私達に?

「両方」

正直。

「美果のパワフルさは俺にはないもん」

こうは言うけど、琢磨も自分を過大も過小も評価しない。現状を現状できちんと受けとめられる。

「美果、ほめすぎ、熱でもあるの?」

ないよ。

「ま、いや、なんでもない」

「いいかけたなら最後まで言いなさい」

「まだ言えないのまでした」

絶対違うでしょ。

「じゃあ、福島離れるんだ」

「前向きな夢のためにね」

「ふーん」

ま、進学は他県や都会でも就職で福島に戻る子も多いみたいだし。なるようにしかならない。

「琢磨はどうするの」

「まだ高1の春だよ」

「青春はあっという間だよ」

「結論を急ぐことはないだろ」

そりゃそうだ。自分の人生を他人に決められたくはない。

「勉強をそれなりに片付けながら漫然と過ごすはずだったのに」

琢磨としては、小さなコミュニティ内とはいえ受験勉強をしないと入れないような学校に滑りこんだだけで充分に達成感を得られた。勉学がはじまれば最下層になるのは滑り込みの時点で容易に想定でき、変に頑張って上位になる気がそもそもない。

「心配しなくても自分の意思で麻雀は打ちたいと思って打っているから」

それなら嬉しい。

「麻雀が恋人みたいじゃん」

「そうかもね」

私なりの方法論で麻雀の魅力を伝えたい。恋人である麻雀君を積極的に紹介したい。後に続きたい。簡単じゃないことなんて承知だ。

「なるほどね」

何がなるほどねなの?

よく分からない。

私の麻雀愛にいつものあくびをしながらもきちんと打ってくれるだけで感謝か。もちろん聡美も尋歌も。

高校生になって、ようやく麻雀に付き合ってくれる人ができた。出会いに感謝。

もちろん、JKは人生で1度しかない。リフレッシュする時も。福島駅内のゲームセンターで聡美とプリクラしたりイトートカドーでアイス一緒に食べたりして、何気ない時間を友人として過ごすのも忘れたくない。聡美とは三年間もいられないというのも、時間は貴重だなと感じさせる。

「世界いろいろ見てきてどうだったの?」

「大事なものって何なのか、分からなくなる」

滞在するのは成長著しい世界都市だとしても、そうではない層の暮らしもガイド同行のもと見てきた聡美、世界の課題を解決するために育てられたといっていい。日本ではここを主な居住地としてくれたこと、感謝しかない。

「共通しているのは、人と人が愛し合っていると幸せってことだよ」

日本もそうだけど世界も貧富の格差がスゴい。目の前にいる崖霜一族のお嬢様を妬んだところで意味がない。

「だから私は美果ちゃんと琢磨君が一緒にいる姿を見られると幸せなの」

「そこはだからでつなげないんだよ」

麻雀仲間であることは間違いないけど。

「好きじゃないと」

「腐れ縁ね。聡美はそういうのに憧れるのか」

同じ境遇の同い年がいない環境、だからね。

「確かにアイツのことは多く知ってるけど、そういう意識はないよ」

「恋のライバルが現れてもいいと」

「そもそも何事にも興味なさそうだけど」

この学校で少数派の男がモテようと鼻につく男用の化粧水やらワックスやら、そういうのも一切しないじゃん。

「深くを知ってる間柄で、急にそんなことしなくても分かり合えているから必要ない。新たに恋を探すなら、その行動をするだろうけど」

「考えすぎじゃない?」

「美果ちゃんがこだわっている麻雀をあんな顔しても続けるのはなんでかな?」

私と一緒にいたいから? いやそうなの?

2人目的じゃない? 富と知性が集まってさ。

「美果ちゃんはそれでいいの?」

「聡美は琢磨のどこがスゴいと思うの?」

海外経験豊富な聡美は、近すぎて気づかないアイツの良さを客観的に分かるのかもしれない。

「人が環境にどっぷり使ったら常識だと当たり前に刷り込まれることを、上手に避けている。しかもそれでいて愚かにはならない」

いや、あんなに麻雀していてやる気のない顔はただの失礼だよ。

「それで弱かったことあった?」

ない、むしろ普段より強くなる。確かに真面目な顔したら配牌がよくなるわけではない。

「海外に行っても日本のものさしで見ない力を既に備えている」

あくまでひとつの文化圏に過ぎないと。確かにそんな達観している感じはある。

「ナニそれの能力の高さより、よほど大事な人間の真理を琢磨君は知っている」

過剰評価し過ぎじゃない?

「こんなことを一応異性に言われて、有頂天になるでも卑屈になるでもなく、ひとつの意見として冷静に受け止められる琢磨君。しくじらない心を持っている」

大人でも、仕事がうまく行くと気が大きくなる。琢磨はもっと先を見ていると。

「私や尋歌でも見通せない未来を見つめて着実に行動しているようにしか」

琢磨って未来人? それとも聡美の検討違い? さすがに聡美の飛躍し過ぎだと思うけど。

「普通だったらあり得ない手を時々麻雀で打つじゃない?」

あ、待ちが悪くなるのをごく稀に。しかもそれをごくたまにタイミングよくする。

「麻雀の理論で説明出来ないことをできる。そういうのを目立つために変にやるのではなく、自然に勝つために得するように当たり前にする」

数多くある麻雀の必勝テクのひとつみたいにする。麻雀歴の浅さが気にならないセンスを見せる。

「私とか尋歌はそうしようと思えば誰でもできる傾向に過ぎないけど、琢磨は違う」

攻撃型防御型バランス型全部違う。あてはまらない型。

「どこで王道的に打って、どこで意表的な打ち方をするのか、手順がいつかとか最初から知っているみたいな」

新種のオカルト型?

「どうなの? 琢磨のこと」

一緒にいすぎて分からないが、1番の答え。

改めてそういう意識とかって言われても、ピンと来ない。みんな恋愛ってどうやってはじめているんだろ? 何が結婚の決め手で何を持って別れるのか? 単に人間関係の良し悪し? 道留のとこは麻雀狂が行きすぎて雀荘専門の不動産屋みたいなことするくらいになって、別れた。女性側の気持ちに立ったらそりゃそうだ。私も麻雀がきっかけで仲をこじれさせたいわけじゃない。導いてきっかけは見せるけど麻雀をするのに無理強いはしたくないし、他の方が興味あるならそれでもいい。共存したい。

琢磨とそういう関係になる。実感がわかない。キュンと、しないこともないけど、恋愛相手でいいのかな? 存在しない白馬の王子様を求めるほど愚かではないが、私が負荷のかかりすぎる相手はまっぴらごめん。琢磨がってわけじゃないけど、向こうが女や母を求めるならそれ相応の対価を用意してもらわないと割に合わない。とんでもなく女性に優しいか稼げるか私好みの顔かとにかく何か。

女性が男にずけずけと条件つけているように見えていらだつ。ではあなたは女性に言いづらい男の楽しみに無頓着なんですかね? 対等な関係ってなんだろうね?

ましてやあらゆることがネットで可視化されるから、あれもこれもとなってしまうのが現代。昔だったら福島ノ福島内で麻雀のお山の大将できていたものが、全国と秒で繋がって対戦出来る時代だ。ゲームのせいにして、配牌のせいにして、いくらでも出来るしそうやって星の評価を下げる書き込み見られるが、ブーメラン。生半可な麻雀の実力だと太刀打ちできないゲームも存在する。思考ルーチンはどんどん正確になっている。なんなら配牌から打ち筋までその一局を後でフルオープン機能があるやつまで。1人でとことん麻雀の勉強できるアプリゲームもあるのに、地方だから麻雀の勉強できないは嘘。

別に私以外の3人は普通に麻雀を楽しんでいるだけだ。プロにこだわってないから強いってのも変な話だけど、才能の片鱗をこの世界に使う義務はない。それぞれ自分の人生を生きればいい。

それぞれ個の人生を送って楽しくやっていたのに、一緒になる契約をする。公的に役所に届けると、芸能人が私事ではございますがから始まる結婚となる。幸せムードが世に溢れるが、みんな幸せに人生を過ごしたいはずなのになぜか困難な世の中になっているのが現実。男も女も相手への理想が上がる思考をネット解禁によって得たのかもしれない。これでは満足できないもっともっと。もしくはそもそも恋愛に興味がないか。

明らかに琢磨はそのタイプなんだよなあ。恋ってなんじゃラホイ、バレンタイン無関心勢。じゃあ興味あるのはというと、子どもの頃は私も男の子みたいに琢磨の住んでる弁天山中を一緒に探検しまくった。でも大人になりかかっている今は? 日常をやり過ごしながら睡眠時間を増やせる軽睡眠をマスターしているから、睡眠に関心がある?

「変に軽睡眠して、夜眠くならないとかないの?」

麻雀打ちながら、聞いたことある。

楽しくやる雑談モードの麻雀。

「睡眠の調整している感じ、だから夜はがっつり寝るよ」

うらやましい。睡眠障害かかえる人にとっては神様みたいに見えるかもしれない。

「ごめん、私の押しつけかもしれない」

「聡美にも悪い。他人のもどかしい恋愛なのか腐れ縁なのか分からない関係に、ましてや一緒に麻雀打ってる仲のうちの2人のせいで聡美にも心配を」

日本よりもLOVEの進んだ文化圏にもいただろうし。

「いいのいいの、私のほうこそおせっかいになって美果ちゃん嫌がってないかなって」

仲良しだろうと他人の恋心のあるなしを判定できるわけじゃない。もちろん聡美にいいことがあれば一緒に喜ぶし、悲しいことがあれば一緒に悲しくなる。

そう、男は共感してね、まず。自分の理屈テリトリーを展開しないでね。

「琢磨君は共感できる男の子だと思うよ」

共感というより達観というか、仙人みたい。周囲の年相応に興味ありそうなことを眺めている感じ。

「心配してくれてありがと」

幼なじみってめんどくさい。幼少の頃を知っているのがヒストリーとなるのか新たな人間関係を広げる障害になるのか。

やっぱりまだ意識するって段階じゃない。かといって他の男子で好きなタイプがいるかっていうと、ちょっと麻雀を捨ておいて恋に走りたくなるオトコは正直いないかな。

今は麻雀に触れていたい。別にこれが職業になるかならないかとかじゃなくて、好きを極めたい。私に漫画のような特殊能力はない。ただのファンでしかない。でも応援者では物足りなくなってしまった。私も立ちたくなってしまった。絶対無理かもしれなくても、不特定多数に弱いとか下手とか容姿とかボコボコに言われたとしても、なってみたい。

それにはまずメンタルが弱すぎだけど。

別に琢磨もメンタルが強いわけではなく、琢磨なりの戦意喪失術があるだけ。

聡美と他愛ない話して帰った後も、私の頭の中はごっちゃ。これが意識しているって意味なのかな?

恋人がされて嫌だと思うこと、ドラマでよくある展開。琢磨がもしいや待て。

世の中には底抜けのプロくず男がいるみたいな動画出てきたんですけど、さすがに盛ってるでしょそれって笑ってしまった。

だから理屈で女は動かない。ダメなやつでも好きになる女はいる。

私はどうなんだろ? もし成功したとして、観賞用にイケメン置いとくような女になるのかな? そもそも麻雀プロになったら土日仕事で普通の職業の人とスケジュールが合わなくなる。出会い以前のスケジュール合わせで大多数の男が例外になるのに心理は安定した職業の男がほしいって矛盾じゃん。

ていうかコミュ力そもそもない琢磨はちゃんと仕事出来るの? 与えられたのは片付ける、意外と宿題とか早々終わらせる人間だから黙々とやる系の仕事なら出来そう。

聡美や尋歌ほどの単価の仕事は出来なくても、生き抜く力はありそう。大人になってもストレスレスマインドは変わらないだろうから、酒やタバコやギャンブルにも頼らないだろう?

あれ? 選択肢としてあり?

いや、愛情ってタイプじゃないよね。モテに自信ある男の女を褒める言葉はたいてい疑ってかかる私。裏に何かあるでしょ。琢磨はそういうのはしてこないけど、人畜無害さを演出しているようにも見える。実際眠気を隠さず時には演出して眠そうに見せている。眠い顔演技選手権だとかなりの上位に入りそうな。

そのスキルを応用して、どす黒い男の本質を隠して、私達3人の女性の中にするっと麻雀打ち要因としているちゃっかりさ。侮れない。

マジで私を負かせに来るし、真剣に打たれたらこちらも対抗せざるを得ない。

アイツに限ってあり得ないけど、もし恋人が他にいるとして。

わずかに意識しているかもしれない。

もっとこう大恋愛みたいなの、ないかないな。

実際にそのシチュエーションになったとして、ドラマの主人公みたいに私が振る舞えない。

それなりに女らしいことは覚えたつもりでも、JKなりたての私は世間からみたら子供もこども。おまけに麻雀に直情な素直なやつ。じゃあ私にゲスなこと考える男が麻雀を覚えて気を引こうとしても、私が男の麻雀センスと男として好きになれるかを判断するから、まあたいてい脱落だよね。そっちも見定めるように、私も見定めている。

琢磨は、他よりは若干、私に近いのかな? いつも麻雀たくさん打つけどそういう物理的な距離の近さではない。

朝からうつ状態がトレンドとかどうなっているの? 他人が自分と同じストレス量に耐えられるとでも? 精神がテクノロジーの発達とコネクトする時代は確実に来る。まともに聴いていたらそれだけで心の許容量を越えて自殺に追い込まれるかもしれない。

男をくずクズ言ったところで、身を委ねる相手を選ぶ女性にも問題ある。収入面だけじゃなくマジで主人に尽くす女になっていて、自立しないから口を開くと出てくるのはダンナの愚痴。自立した考えになれないあなたが悪いんじゃない?

あんまり人生の先輩に悪口言いたくないけどさ。言葉通りの奥様像では腹の虫がおさまらなくてダンナに呪詛の言葉を並べる。愚かとしか言い様がない。女性も奥様という言葉に自縄自縛になっている。

そういう相手を選んでしまった自分に腹が立つ。確かにそうかも。

いいよ、どうせプロ雀士になろうとすれば、不特定多数に悪口でもなんでも言われたい放題になるんだ。

かなり後ろ向きな理由で私は発信をすることに決めた。

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