家族で転生した筈なのに

KURISU

第1話 比較的普通の異世界転生の筈なのに

 俺は家族で近くの店で外食し、帰路をたどっていた。

 「心気。最近学校はどうだ?楽しんでるか?」

 俺は心気。しんきと読む。そして、今話かけてきたのは俺の父さんだ。

 「心気は生徒会入ってたわよね。疲れてるんじゃない?」

 この人は俺の母さんだ。

 父さんが酒癖が悪かったり、母さんがヒステリックだったり、そんなやばいこともなく、それはもうごくごく普通の良い家庭だ。

 「うん。疲れてる。でも普通に学校は楽しいよ。」

 と言ってるが、めちゃキツイ。いじめとかそんなんじゃなくて、生徒会で先生に怒られまくるからメンタルがヤバい。

 まだ中学生だし、大人みたいに、心は育ちきってない。いや偏見かもしれないけど、キツイもんはキツイ。

 「そうか。体を壊さないようにして、頑張れよ。」

 父さんが体を気遣ってくれる。

 うん。やっぱいい家族だよな。

 そうこうしている内に横断歩道を渡り、テンプレのそれがやってくる。

 「おい!あんたら危ないぞ!」

 どこからかそんな声が聞こえ、俺は横を見る。

 すると、減速しないトラックが突っ込んできた。

 「ッッッ!?」

 同じく横断歩道を渡っていた俺より小さい少女が腰を抜かす。

 俺も腰を抜かしそうになる。でも、

 「「心気!」」

 父さんと母さんが俺を守ろうとしてくれるが、申し訳ないがかわして少女をなげとばす。

 「えっ?」

 少女は俺をみながら声を漏らす。

 あの子学校で見たことあるな。後輩かな。俺でも後輩を守れるなら本望か。

 正直、生徒会で疲れすぎた俺は、心が恐怖に染まりながらも、そんな、穏やかな思考をする。

 そして、俺達家族はトラックにはねられ、この世を去った。




 「残念ながら、あなたは亡くなりました。」

 目が覚めると、目の前に人がいて、そんなことを告げられる。

 「そうですか。3つ聞いても構いませんか?」

 「ええ、どうぞ。」

 俺って中学生にしては、ちゃんとした敬語つかってると思う。

 「まず、私が助けようとした少女は?助かりましたか?」

 それが一番重要だ。これでいいえとか言われたら無駄死にだからな。

 「ええ、あなたのお陰で、いままでと変わらず、とは言えませんが、普通の日常を送れています。」

 なら、良かった。無駄死にじゃなかった。

 「次に、私の親はどうなりましたか?」

 父さんと母さんはここにいない。ひょっとしたら生きてるのか?

 「あなたと同じく亡くなりました。」

 ですよねー。

 「これは、3つ目の質問であろう、あなたがどうなるかと関係あります。」

 せやなー。地獄にでもいくんかな?

 「あなた達一家は、異世界転生をして、魔王を倒してもらいます!」

 ははマジカー。俺ちょっと疲れたんだけどなー。まあ、多分たのしーわけないか。俺人見知りだぞ。仲間と会えるわけないだろ。野良パーティー組んで、クエストこなして、即さよならだわ。ちなみにこれ、ネトゲで趣味合いそうな人と出会った俺の体験談な。クソ!

 「親はもう、異世界に?」

 「ええ、特典をもらい、転生しました。」

 なるほど、多分知識ないし、俺も早く行ったほうがいいな。

 「じゃ、私も異世界へ行くので、特典を貰えますか?」

 このままでは!すぐ死ぬからな。武器ないし。

 「はい。因みに、今から行ってもらうのは、魔法を使う、一般的にあなた方日本人がよく知っている世界です。

 「なら、魔法と魔力を自由自在に操れる能力を下さい。」

 「分かりました。でも気をつけて下さい。魔法が使えても体が持たなければ、意味がないので。」

 それって、俺が考えた技も使えないかもってこと?

 「それでは、ご武運を。」

 あーやっちまったかもなー。

 そうして、俺は、少し不安な気持ちで異世界転生を果たした。



 ここ異世界か。

 俺は周りを見渡す。

 「ガアアアアアア!!」

 「うわぁ!?」

 突然何者かが切りかってきたので後ろに思い切り飛ぶ。

 「きゃあ!?」

 すると後ろに誰かいたようで一緒に転んだ。

 「なっ何!?あんただれ!?」

 「こっちのセリフだ!てかどういう状況だこりゃ!」

 ラッキースケベとかは無かったが、めんどうなことになった。

 あらためて周りを見るとゴブリンらしきモンスターに囲まれている。

 「あんたハンター?違うなら逃げたほうが、いや、この状況じゃ無理ね。こんな数がいたら、私じゃ倒しきれない。」

 「うるせぇ!戦うしかないだろ!」

 いろいろありすぎてイライラしてるみたいだ。

 「なにか策があるの?」

 ハンターらしい少女が尋ねる。

 そんなの決まってる。

 「あるわけないだろ!でも選択肢だってないだろ!」

 俺は初心者だからね。仕方ないね。

 「チッ。まあ、あんたの言うとおりね。あんた手伝いなさい!ここで死ぬんだから別にいいでしょ!」

 「よくねぇよ!でもやるしかねぇ!さっさと片付けるぞ!」

 なんでこうなるかなぁ!?いきなり死にかけるってなったらそら怒るわ!あの神かなんか知らんが許さんぞ!

 俺は死にかける恐怖・・・よりも女と密着した時の焦りのおかげで、怒りを爆発させ、気をまぎらわせながら初戦へ突入した。

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