壮絶な兄弟喧嘩

鷹作戦

1549年 8月24日

「殿!殿の言った通りです!」

そう言いながら駆けて来たのは徳川家康だった。

「来たのは織田信勝軍!林秀貞はやしひでさだ林通具はやしみちともの軍も確認できます!只今、火縄銃で対応させておりますが、距離があり、あまり効果は見られません!」

成程。こちらの大量の火縄銃でも見て、距離を取ったか?


意外だったな。あの流れに流されないとは。

「なぁ、柴田勝家くん」

柴田勝家。織田信長の家臣であることが有名だが、史実ではこの頃は信勝の家臣だ。

どのようにして、信長の家臣になったのかは分からないが、

俺が何もしてない時から俺の家臣として居たから流石に不自然だと思っていた。

だから、勝家は裏切ると思っていたのだ。しかし、裏切っていなかった。驚きだ。

「もちろん、匠海殿を裏切るなんて」

とりあえず、今は信勝軍が最優先だ。


という事で今回の作戦の説明だ。

「家康ー」

「はっ、なんでしょうか」

「鷹扱える人っている?」

鷹匠たかじょう……でございますか?」

鷹匠とは.......よく俺も知らんが、鷹を扱える人のことだろう。


「うーん、まぁ、その人って呼べる?」

「もちろんでございます」

と、2.30分後にガタイのいい人がやってきた。

「これは、噂に聞く匠海様。私、島田隆共しまだたつともと申しまする。

今日は、鷹とお聞きしましたが.......」


.......島田さんね。今日はこの人を使って信勝軍を壊滅させる。

「はい、あそこ(信勝の本陣)まで、鷹飛ばせます?」

「分かりました!じゃあ鷹は.......」

と、自分の愛鷹を出そうとしている島田さん。

俺の作戦だと島田さんの愛鷹を使うのは何とも可哀想だ。作戦が作戦だけに。


「今日はこの鷹でお願いできますか?もちろん調教は終えています」

そういって、出した鷹は少し特殊なものだ。島田さんは目を丸めてビックリする。

「こ、こ、んな鷹でいいのですか?」


そう。鷹の背中には黒色火薬弾が乗せてあったのだ。

要は少しデカめの火縄銃の弾のようなものを用意したのだ。

「はい。火薬です。火縄銃の弾にもなる。あれを職人に頼んで特別に威力の高いものを作ってもらいました」


衝撃で爆発し、かなりの威力を持つ。かなりの賭けにはなるが、

①信勝が鷹を発見する

②信勝が鷹を狩る(撃ち落とす)

③鷹が信勝の近くに落ちる

④その時、火薬弾が下に向く(これは、重さ的になんとかなる)

⑤その勢いで爆発する


この5つが上手く行けば、成功。上手くいかなかったらそれまで。

撃ち落としさえすれば、威嚇にもなる。そんな気持ちでこの作戦を作った。

「い、行きますよ。.......いけ!」

そういって、大空に鷹は鳴きながら飛んでいく。

ここから信勝陣までは.......どのくらいだろうか。

1キロくらいか?分からないが、鷹は飛ぶ。


「さて、どういう結果になるか.......」

信勝が爆発に巻き込まれる。これがこの作戦の上での『大成功』だ。

十中八九、当たれば怪我は確実。怪我ではすまないかもしれない。


戦国時代で、天下を取るにはこれしかない。

そう言い聞かせていた。


ーーーー

信勝本陣

「くそう、膠着状態か.......」

歯ぎしりをしながら信勝は地図を睨む。

彼はイライラしていた。

自分たちが不意打ちを打てたと思ったのに更にその上を行かれたからだ。


「流石に道三、信秀がくたばる前に来るとは思ってなかろう.......と思っていたが、

更に上をいかれるとは.......」

この作戦は、岡崎城がどの城からもある程度離れているからできたこと。

だが、それでも少し時間をかければ、信長は岡崎城付近に着いてしまう。

その為、この戦いに置いて短期決着は絶対だ。

道三や、信長、信秀の援軍を恐れていた信勝は、突撃の判断を下そうとしていた。



そんな時、幸か不幸か。鷹の鳴き声がした。

「よし、この鷹を狩ることが出来たなら、吉兆の証拠。突撃するぞ」

そう言い、信勝は弓矢を放った。


バシッと、鷹は信勝の上で矢を受け止め、落ちていく。

(突撃で決定だな)

そう思った時。鷹が地面に落ちた時。


爆音と爆風が信勝陣を包んだ。

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