もしも自分が同じテーマで小説を書くのだとしたら──そう考えると、スマホを落としそうになりました。理由はとても陳腐な物語になるはずだからです。 ところがこの物語がありきたりなものになっていないのは、作者さんの巧みな表現方法のおかげでしょう。「指に──」といった箇所は、本来ならアレのこと書きたくなります。が、あえて書かないことで、主人公の心情をうまく表せているように感じました。
切ない……なんだけど甘い、けど胃が痛い。どっかで似たような経験があったかのように心苦しくもなり、けれどこれがまた良い。夏蜜柑食べてるみたいでした!ご馳走様でした♪
最低限の事柄しか書かれていないことが、そこから放散するイマジネーションを刺激しつつ、テンポの良い文章を実現している。自転車、風、夕日、蚊取り線香などの道具立ても良い。
どうしても男女の物語となると、恋愛に絡めるものが多いけど、こういう関係性がさらりと、しかし、微妙な変化を伴いつつ進んでいく物語は、読んでいて、心地よいものを感じさせられます。
変わっていく環境に対して、一貫した主人公の感情が読者に切なく感じさせる。先に待つのは幸福か後悔か…気にならずにはいられないが故に指が止まらない。比喩表現が素晴らしい。脳裏に浮かぶ夏の風景、色…続きを読む
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