第38話 小伝馬町

 都内の神社に行こうとした。

 実在するどこかの神社というわけではない。


 都内への移動は電車が便利だ。

 自宅の最寄り駅から都内のA駅へ。A駅からべつの路線のA'駅に乗り換え、最寄りのB駅から歩いてゆく予定だった。

 A駅からA'駅までは少し歩く。

 A'駅からB駅までは3駅ほど乗ることになるが、都内の電車は駅と駅の間隔が狭い。がんばれば歩いても行けそうだ。私はがんばらない。


 友人と一緒に行動しているわけではないが、なぜか街歩きの様子をLINEか通話で数人に知らせながら歩いていた。


 A駅から乗り換えるとき、その途中にも神社が見えたので、気になって寄り道してしまった。


 何故気になったのかよく分からない。きれいに石畳が敷かれ、社務所は現代的な直方体のビルで、整然としている。

 いわゆる純和風という感じではなかったが、荘厳な雰囲気があった。


 それからは道に迷ってしまい、どう歩いても、その神社かA駅に戻ってしまうのだった。

 A'駅をめざしても、いっそB駅まで歩いて行こうとしても。


 わたしは何度目かのA駅で、はじめの目的地だった神社を諦め、電車に乗ることにした。


 駅のホームに電車が入ってこようとしている。

 ふいに思いついて友人Pに「今どこ?」と電話したら、どうやら今到着しようとするその電車に乗っているらしい。


 合流したくなった。

 ホームへの階段を登りきると電車のドアが閉まろうとしていた。

 私はそこに手を挟んで、ドアを開かせて乗り込んだ。現実には絶対ダメな乗り方だ。


 友人Pは車内の自販機などがあるあたりにいて、無事に合流できた。


 今回はどこかで小伝馬町駅を通るような気がしたので、この題にした。

 

 

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