召喚失敗勇者と王族

 晩餐会ではアイリスちゃんが絡まれたりしたけど、結果として女性陣が仲良くなったので結果オーライかな?


 そして、晩餐会が終わった後に私と側仕えの子達全員が別室に呼ばれた。


 そこはかなり大きな会食とかで使うような机が置いてあって、執事の人に席に案内された。

 

 私を中心に、左右男女別れて側仕えの子達たちも席に着かされてみんな困惑していたら、奥の扉から国王様達王族の人が現れた。


 みんな一斉に立ち上がり国王様に礼をしたので私も合わせようとしたんだけど、その前に国王様が――


「みな、表を上げよ。ここには部外者は居らん。この会食は正式な会食ではなく、私達の私的な食事に皆を招いただけだ」


 つまり、正式な場じゃないからそういった礼儀はなしで良いよって事かな?

 なんだろう、国王様達って思っていたよりいい人たちなのかな?


 色々考えている間に、国王様は私の正面に座っていた。

 左右にはたぶんそれなりに歳を言っていると思うんだけど、いくつなのかわからない美魔女の様な王妃様がすわって、たぶんその横か王子様や王女さまなんだろうな。


 そして私の予測通り、両サイドは王妃様で国王様の右側が第一王妃様で反対側が第二王妃様だって。

 第一王妃様の横に座っているのは、王太子でもある第一王子様で横にその妹の王女様二人が並んでいる。

 第二王妃様側には、王子様一人と王女様が一人ずつ座って、計八人が対面座っている。


 私たちの方は中心側が年齢が上の人達が座っていて、合計十一人の大所帯になっている。


「アカリ様、先程の晩餐会ではお手を煩わせてしまったようで申し訳ない。この国の王として謝罪する」


「い、いえいえ! 大丈夫です! 結果として色々と分かったこともありましたし、良い事もありましたので大丈夫です! あ、頭を上げてください! 」


 いきなり国王様に頭を下げられてびっくりした! こっち側に座っていた人全員がびっくりしていたみたいだし、やっぱり国王様が頭を下げるなんてことはないんだろうけど、王妃様達も動じていないから始めから謝罪するって事はわかっていたんだろうな。


「そう言っていただけるとありがたい。しかし、世界を救っていただく為に来ていただいた勇者様への無礼など言語道断、アカリ様が良いと言われても流石に無罪放免とは行きませんので、処分の方はこちらに任せて頂いてもよろしいでしょうか」


「はい! と言うか、その辺りはこの国の物じゃないので詳しくわからないので――ただ、流石にあまり厳しいのは……」


「その辺りは大臣と相談してからになりますが、爵位剥奪して平民になる程度で済むでしょう」


 うんうん? 平民になる? まあ、死刑とかよりはましだろうし、その辺りのさじ加減は国王様達に任せてしまおうっと。


 そして本題の会食だったんだけど……本当にただの会食でさっきの晩餐会では食事をしている時間が無かっただろうかと言う理由で開いてくれたみたい。


 当たり障りのない質問がたまに来るけど、特に意味があるわけじゃなさそうだし……本当に好意でひらいてくれたんだ。


でも、パーラー君やハンナ達みたいに爵位が元々高い人たちはあまり気にしていなかったみたいだけど、アイリスちゃんやアイ君のように爵位の低い子はガチガチに固まっていたし――もう少しその辺りは配慮してくれてもよかったかもね。


 少し気になって私の側仕えの子達の選定基準を聞いたんだけど――みんなどこかでは勇者の血を引いていて、勇者を尊敬している者達で集められているんだって。

 それと、子爵以上の人達は下位の爵位や平民に対しても無下に扱わない人を選出し、そのなかで問題がなさそうな者達を年齢を分けて選んでいるんだって。

 

 私の側仕えと言う事で、平民の人達とも接触する機会は多いだろうし、他領地や他国に行った際に問題を起こすと面倒だからって事もあるみたいだけどね。


 




 特に何も事件の様な物も起こらず、会食は終了してみんなで部屋に戻ってきた。


「「「はぁ」」」


 何人かの子が小さくため息を付いている――そりゃそうだよね、王族の人達と会食何て気を使って疲れるだけだしね。


「あら、あなたたち。この程度で疲れていては今後はもっと大変になるわよ? 先程国王様がアカリ様に説明していたように、私達は戦闘でのお世話はしませんがそれ以外の事は私達でやるのですから、他国に行った際には必ず謁見や会食などがあるでしょうから慣れておきなさい」


 あーなるほど。それが今回の会食の本当の意味だったんだ。

 そうだよね、自国の国王であれだと他国の国王達との会食に誘われた際に対応に困りそうだし……一応全員爵位のある家系ですしね。


 ハンナの言葉に大袈裟に反応する人は居なかったけど、微妙に顔色が悪い子達はいるみたいね――何故だか私はそれ程緊張しなかったなー、なんでだろう?


「はいはい。とりあえず男性陣はアカリ様のお世話は終わり。あとは私達でやるから退出なさって」


 そう言って男性陣を追い出した後、私はドレスを脱がせてもらって元の世界から持ってきていたパジャマに着替えさせてもらった。


 そして、部屋に備え付けられている洗面所で歯を磨き、化粧を落として部屋に戻ると――ハンナさん達が私の顔を見てギョっとしていた。

 んー? 何か変な顔になっているのかと思い、振り返って鏡で確認するけど――いつもの寝る前の私の顔よね? どこか腫れていたり怪我して居たりもしないし……なんだろう?


「あ、アカリ様……眉が……殆ど無くなっておられますが……」


「あ、眉毛ね! これはね、私は眉を書いているの」


 そう言う事ね、元の世界では普通の事でもこちらの世界では特異なことになるんだね。

 そして、私が持ってきた化粧品を手に自分の世界の化粧のやり方やどんな効果があるのかを説明した。


 やっぱりこっちの世界とはかなり違うみたいで、眉は自分で剃るだけとか化粧水や乳液などを使っていないんだって。

 ただし、過去の勇者が鉛や水銀を使う白粉を禁止にしている為、今は真っ白な鉱石を粉末状にして色々混ぜたものを使っているみたい。

 確か昔の白粉は、鉛中毒や水銀中毒になって早死にするって聞いて事があったから、過去の勇者がそれをとめたんだね。


 こうして、お互いの化粧の違いや化粧の知識をワイワイ話しているとかなり遅い時間になっていたみたいで、皆は急いで退出して行った。


 まあ、退出して行ったといっても、実は私の部屋の横が女性の侍女の部屋になっているみたいで、私の部屋に付いている扉からでていっただけなんだけどね。


 私は、そのまま巨大な天蓋付きのベットに横になる。


「はぁ。本当にここは異世界なんだ。家族のみんな心配してなければいいけど――あ! そう言えばあの後約束があったんだった……でもいまさらどうしようもないわね。魔王を倒して元の世界に戻ったら謝らないと――」


 色々な事が一日で起こって疲れていたのか、いつの間にか眠りに付きハンナ達に起こされるまで寝続けたのだった。


 ……ちなみに、起こされた時には既にお昼近くになっていたみたいで、ハンナさん達は困っていたし、パーラー君たちは私が寝ているから部屋に入れず入り口でずっと立って待っていたんだって……ごめんなさい、明日からはしっかり起きるようにします。









 

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