第20話 白銀の御子と黒鋼の御子(2)


アマテリア皇国の建国神話。


その序盤で登場する2柱の神、『黒鋼の御子』『白銀の御子』の神話。

アマテリア人ならだれでも知っている、おとぎ話の一節だ。


短い黒髪で、薄い橙色の肌を持つ『黒鋼の御子』


長い銀髪で、透き通るような白肌の『白銀の御子』。


性格も見た目も正反対の、この2柱の神は、非常に仲が悪かった。


「じぶんかってで、らんぼうな『しろがねさま』は、おとなしい『くろがねさま』に、いつもいじわるをしていました。」


――クスクスクス・・・、“くろがね”は、ほんとうに弱虫ね。・・・それっ、雨よ降れっ!!

――いやあああ! やめて、“しろがね”!!!



あるひ、『しろがねさま』は、『くろがねさま』をもっとこまらせてやろうとおもい、くものうえからちじょうのせかいにおりました。


―――クスクスクス・・・。それっ! 嵐よ、巻き起これ! 大地よ、唸れ! 火山よ、火を噴け!


おおあめをふらせたり、じしんをおこしたり、かざんをばくはつさせたり・・・それはそれは、ひどいもので、ちじょうのひとびとはとてもこまってしまいました。


おとなしい『くろがねさま』は、『しろがねさま』のおこないにこころをいため、かなしくなって、くらいどうくつのなかにかくれてしまいました。


―――くすんくすん。“くろがね”が悪さするせいで、地上の民が困っているのに、何もできない・・・。私はダメな神様ね、くすんくすん。


さて、『くろがねさま』たちよりももっとえらい、くものうえのかみさまたちは、『しろがねさま』をこらしめてやろうとおもい、『くろがねさま』をくらいどうくつからひっぱりだして、『しろがねさま』をやっつけるためのぶき――『つるぎ』『かがみ』『まがたま』を『くろがねさま』にたくしました――」



『剣』


『鏡』


『勾玉』



天上の神々から3つの聖なる武具を与えられた『黒鋼の御子』は、これらを身に着け、地上で暴れ続ける『白銀の御子』に戦いを挑んだ。


―――“しろがね”っ!覚悟しなさい!・・・えええいっ!!

―――クスクスクス・・・、“くろがね”は強がりな子ね。いいわ、受けて立ちましょう!


『白銀の御子』は雷や嵐、吹雪を巻き起こして応戦するが、『黒鋼の御子』は『勾玉』の光をまとって身を護り、『鏡』を盾にして攻撃を跳ね返し、『剣』を振るって『黒鋼の御子』に斬りかかった。


―――それっ、とどめよ!

―――くっ!!・・・くすくす、こ、此処までの強さとは、ね。うぐっ・・・!お、覚えていなさい・・・っ!!!


ついに『黒鋼の御子』は『白銀の御子』を退治し、地上に再び平和が訪れたのであった。



「――そして、『くろがねさま』は、“つるぎ”と、“かがみ”“まがたま”をもってちじょうにくだり、あたらしいくにをつくりました。」


その、“新しい国”というのが、タムラ達の住む国、“アマテリア皇国”である。


建国の母となった『くろがねさま』・・・もとい『黒鋼の御子』は、アマテリア皇国の君主、『皇主アマテルス』の初代として君臨し、以後123代にわたり、皇国を統治総覧してきた。


神話に登場した3つのアイテム、『剣』『鏡』『勾玉』は、のちに『三種の神器』と呼ばれるようになり、アマテルスの皇位の象徴として、代々皇室に伝えられてきた。

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