第32話
「またいる、あの子」
あの薄汚い少女が公園の入り口で座り込んでいる。空を見上げてぼんやりしているように見えるのは、近くの木に止まっている蝉でも見ているからか。
私たちは公園近くのゴミ収集所に大きな袋を置いて、遠くへ目をやる。
「暑いのに何やってんの?あの子」
「いつも一日中一人で公園にいるの。親に放ったらかされてるんじゃない?」
そっけない言い方になってしまったのは少女が憎たらしく見えたからではない。子育てを頑張っている自分のような母がいる反面、子どもをほったらかして朝から好きなことをしているであろう正反対な親の存在が少女を透して見えてしまったからだ。
子どもが可哀そうという感情よりも、楽をしている親のことを考えてしまうのは自分の心に余裕がないからだろう。大人としての大切な何かが私には欠落している・・・。
自分は少女の親を蔑めるほど立派な人間ではないということはわかっている。しかし朝から余裕なく家のことをしていると、穏やかな心のまま視界に入ったもの全てを素直に受け止めることはできなかった。
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