あの技の名は

あの技の名は(1)

 翌朝、アリスとラビー王女は、朝食が終わると。アリスは、あの球体を科学的に分析するために、必要な機材をノートに書き出し、城の従業員たちに機材の調達を頼んだ。

 調達した機材は、この城の地下にある空き部屋を借り、あの球体の正体を調べるために、アリスはオリジナル測定器の開発を始めた。

 一方、隣の空き部屋では、ラビーが気功法学ぶために部屋を借り。アリスのスマホに入っていた、体のツボ(若返りのツボ)マッサージ法、新しく編み出した気功を高める技(太極拳に似ている)。日本食で若返る方法など、出版社と打ち合わせの時に使用するはずだった内容を印刷して、ラビー王女はそれを見ながら勉強を始めた。

 1週間が経ち、球体を調べるための測定器ができあがり、ラビー王女もその場にいると。アリスはその測定器をジッと見ながら。

「ラビー、ちょっといい!?」

「もしかして、ダメだからね」

「ちょっと、まだ何も言ってないんだけど」

「その測定器、瞬間移動で運ぼうと思ってるでしょう!?」

「えっ!? なんでわかったの!? 確かにそうだけど、ダメなの?」

「ダメ」

 

 瞬間移動が限られた人にだけできる能力。それは、楽をするためではない、身を守るために特別に備わった能力。諸説あるが昔からそう言われている。確かに、物を運ぶにはうってつけ。運べる重量は、自分の体重の3倍と言われ。人間以外を運ぶことも可能で、運べる重量も同じ、瞬間移動で物が壊れることはない。運べる重量の限界は、瞬間移動ができなくなった時点。極端な話し、瞬間移動を鍛えれば、もしかしたら地球ごと移動できるかも。


 仕方がないので、測定器は電気自動車で運ぶことに。アリスは身を守るためと聞かされ、むやみに使う訳ではないと言いたかったが、ここでは一応リダーはラビー王女、アリスはそう決めていた。しかし、本当はお姉ちゃんの私がリダーだと思っている。


 体育館に測定器を運び終わり、アリスは久しぶりに車の運転をした。助手席でその運転を見ていたラビーは、私も運転免許を取りたいと思い、いままでそんなことを思わなかった。

 いよいよ、あの光の正体がわかる、測定器の準備もOK。アリスは測定器の前に立ち、あの時の想いを思い出し、右手を肩のところまで挙げ、手の平を広げた。


 5秒経ち、10秒経ち、30秒経ち。1分経過、何も光らない。一旦、手を下げ、深呼吸をし、再度挑戦した。

 5秒経ち、10秒経ち、30秒経ち。1分経過、何も光らない。一旦、手を下げ、深呼吸をする。これを繰り返し、1時間経ち、あの光はいったいなんなのか。アリスはその場に座り込み、なぜ同じ現象を再現できないのか考え込んでいる、あの時といったい何が足らない。

 その光景にラビー王女は、どう声をかけていいのかわからない。ただ、立ちつくし見ていると。アリスは立ち上がり、ラビー王女に意見を求めた。

「ねぇ、ラビー、何が原因だと思う!? できない訳、あの時の気持ちを思い出してやってるんだけど」

「やっぱり、あの時と同じ状況にならないと、ダメなんじゃないの!?」

「あの光は自由にできないってこと!?」

「それはわかんないけど……」

「とにかく、私はこれを極めたい。もう一度やってみる!?」

 アリスはもう一度やってみた。しかし、あの光は現れない。何度もチャレンジしてみるがあの光は現れない。

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