アリスとラビー(2)

 あの時、あの本が光った。おそらくあの本が鍵を握っている。もしかしたらあの本がもう一度光れば元いた世界に戻れるのか、だったらいつ光るのか、このまま永遠に光らない可能性もある。それ以前に、異世界の扉はあの場所にあるのか。もしあの場所に異世界へ出入口があるなら、あの場所にいないとわからない。

 扉が開きましたよ、そんな合図があるのか。あの店員は突然私が現れたと言った。

 仮に、もしあの場所が光るとしたら、何かセンサーを取り付ける必要がある。もし私にも瞬間移動ができたならセンサーに連動し、あの場所に行ける。

 どのくらいの時間、扉が開いているのか。もし帰ることができたなら、私の体はこのままなのか、元に戻るのか。

 しかし、なぜ異世界への扉が開いたのか、何か理由があるはず。それとも誰でもあの扉を開くことができるのか。もしそうであればこの世界に異世界人が来た痕跡があるはず、そう思ったけどネット調べる限りその痕跡はない。


 もしかしたら私にだけに扉が開いたのか。その可能性があるのか。もしそうだったら、私はなんのためにこの世界に来たのか、そういうことになる。


 あの本のタイトルには『アリスの本』と書いていた。あの秘書は本の中身は真っ白なページと言っていた。なぜそんな本があるのか。


 もしあの本が異世界の扉を開く鍵ならば、あの出版社の社長がそのことを知らないはずがないと思うけど。入り口があるなら出口がどこかにきっとあるはず。そう信じるしかない。あの場所以外にもあるのか。もしあるとしたらどうやって探し出すのか。

 元の世界に戻る鍵がどこかにあるはず。もしかしたら、この世界に来たわけがわかれば、そこに戻る鍵が見つかるのか。


 アリスはバソコンにいろいろと書き込むが、困惑が増すばかり。だったら、いっそのこと腹をくくった方がいいのか、ここに住むことを、戻れない可能性が大に思えてくる。こちらの時は進んでいる、元いた世界はどうなのか。家族の顔が浮かび、目には涙が。

 その時、ラビー王女が肩をポンポン叩き、横を向くアリス。そこには、ラビーの目にも涙が。

「お姉ちゃん、私がいるじゃないの、私じゃダメなの?」

 アリスはラビー王女を抱き寄せ、2人は泣いていた。

 すると、スマホのアラーム音が鳴り、アリスが夕食の準備に取りかかる時間、2人は涙を拭いた。

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