第2話 チュートリアルってなに、美味しいの?

 空から落ちた先は、大きなキノコの上だった。ぽふぅんと反発して、無事着地する。


「し、死ぬかと思った······」


 心臓がばくばくいってる。

 俺はキノコの上からとりあえず降りた。

 そして辺りを見回す。大きなキノコがいっぱい生えている、赤と黄色の森だ。たまにかわいい小さなキノコもある。マッシュルームみたいなやつだけど、基本的に青とか緑みたいな物騒な色をしている。


[こんにちは、これからチュートリアルを始めます]


 不意に、機械的な声が聞こえた。俺は飛び上がるほど驚き、尻餅をつきそうになる。しかし、説明は止まらない。


[本チュートリアルはこの森を抜けることです。

 では、まずステータスを確認しましょう。

 視覚上部にある青いランプをタップしてください]


「えっ、うん」


 チュートリアルの声にしたがって、青いランプをタップする。すると淡く光る半透明なボードが現れる。俺はそれを見る。



ハル-サクラシマ 17歳

Lv.0

HP/999 MP/9999

体力 999 S

攻撃 999 S

防御 999 A

反射 999 S

魔力 9999 計測不能

魔防御 999A


属性 地・風・水・光・闇

能力 言語理解・農業


装備

武器 ダガー/ーー

上着 黒のローブ

下履 黒のズボン

靴  黒の靴

腕  腕輪/ーー

帽子 ーー

その他 グリモワール


らしい。数値に関してはよくわからないけど、Lv.0ってなに?

普通はLv.1から始まるものじゃないの?

このアルファベットとか、装備とか、どゆこと?


[では、次のステップに進みましょう。

まっすぐに見えるゴールまで、向かいましょう。

本チュートリアルではモンスターは出現しません]


 俺は声にうなずく。

 でも、めっちゃ不安。


「ねぇ、レベルこれで大丈夫なの?

 これからのこととか、他にはないの?」


 俺はチュートリアルの声に聞く。どこにいるかは分からんが、今後のことについて聞かなければ終われない。まさか、知らない世界で野宿しろなどと言われまいな。

 すると、声はため息をついたように聞こえた。

 俺はビクッとする。何か怒らせたのかな······?


[本チュートリアルをクリアすると、すみかを与えられます。

あなたを飛ばした方がご用意いたしました。

また、果実の苗や野菜の種なども存在いたしますので育て、

食料にするもよし、街へ行き売るもよしです。]


「そっか。ありがとう」


 俺は声にお礼を言う。兎に角あの人のご厚意ですむ場所くらいはあるらしい。それなら安心して過ごせそうだ。

 

「取り合えず、このきのこの森を抜ければいいんだよね?」


[はい]


 僕の問いかけに声は同意する。

 モンスターが出ないとはいえ、アイテムとやらも出ないのかな?

 チュートリアルだから、仕方ないけどね。なんか味気ないなぁ。俺はきのこの森を歩いていく。ステータスに表示されていた"農業"とやらのせいか、キノコの成分が表示されたりする。

 ちょっと楽しいかも。

 すると、開けた道が見えた。


[もう少しで、チュートリアル終了でございます]


 声がいった。あ、良かったな。いつまでも同じ景色だから、終わらないかと思ったよ。

 そして、赤と黄色の森を抜けた。

 すると、ステータスが表示される。

 チュートリアル成功おめでとう! と、表示されている。

 ふむ。


[おめでとうございます。

家はこの森の外れにございます。

街は森を西に抜けた方向にひとつあります。

北にも存在しますが、現在の状態で向かうことはおすすめいたしません]


 チュートリアルの声がそう告げた。俺はとりあえずありがとうと言って、森の外れを目指すことにした。


[それではよい旅を]


 そう言って声は消えた。

 俺は森の周りを沿って歩く。右を向けば赤い葉っぱがヒラヒラと舞っているのに、左は鮮やかな緑だ。異世界といっていただけあって、不思議な光景だ。

 それに、モンスターがいるみたいだし。一応警戒しておこう。でも、動物は傷つけたくないなぁ。いたら、仲良くできないのかな。俺的には殺生は嫌いだし、みんな仲良くがモットーだし。


「あ、あれかな?

 小さな家がある。誰もすんでないし、

 書き置きとか苗とか種があったらそこだね」


 俺は森の奥の家まで走っていく。平屋でちょっとログハウスっぽい、可愛らしい家だ。それに、荒れてるけど畑もある。


「これ、何処までが敷地なんだろ?

 大きな畑にして麦とか育てないなぁ」


 ちょっと想像してしまう。金色の穂麦が揺れる風景を想像する。想像するだけで、お腹が減る。

 その間に家の扉の前まで到着する。

 家の前には小さな小箱があった。


「開けろってこと?

 うぅ、でも何か変なものとか入ってたらヤダな」


 俺は恐る恐る小箱に触れる。振ると、カタカタと音がした。なにか入っているのは確定だな。

 俺は箱を開けた。

 中には鈍色の鍵が入っていた。家の鍵かな。

 もうひとつは向こうに見える納屋の鍵かな。とにかく、鍵を家の鍵穴に突っ込んだ。ガチャンと嵌まって、回すと開いた。

 俺はドアノブを捻って、扉を開いた。


「うわっ、埃っぽい」


 思わず叫んだ。まずは掃除をしなきゃいけないよなぁ。

 俺はローブを脱ぎ捨て、掃除道具を探しに家の中にはいる。家の中にはちゃんと家具が揃っている。三段のタンスにベッドやソファ、空っぽの本棚もある。それに環境的にも、トイレやお風呂、キッチンには冷蔵庫っぽいものに鍋や皿、包丁も各種揃っている。


「電気に水道もある。」


 ライフラインはある程度揃っているらしい。俺は少し安心した。

 まぁ、もれなく埃まみれだけど。仕方ない。


 生活できるだけましだ。

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