第4話 ごめんねパンケーキ

夜更けの台所からこんばんは。


今日は肴ではありませんが、昼間に焼いたパンケーキのことを思い出していました。


うちには4歳と3歳の男の子がいます。二人ともパンケーキが大好き。夫がいないとき、お昼ごはんは夫の食べないものにすることが多いので、パンケーキも『夫不在メニュー』のひとつです。


我が家ではホットケーキミックスを使いません。なぜなら、我が家の子どもたちに見つかるとパッケージを指差して「これを食べたい!」と猛アピールするからです。

うちの次男、市販のお菓子も「これは美味しいものだ」とわかるとパッケージをじーっと見つめて記憶するほど食の執念がすごいタイプ。まだ「ホットケーキ」と言えなくても、画像やイラストで見てしまうと「あの丸くてキツネ色でほんのり甘いふわふわのものだ!」とバレてしまうのです。

たまにならいいけど、買ってくるたびにパンケーキ焼くのは母ちゃんが嫌だ。


そこでいつも小麦粉や卵など家にあるものを目分量で混ぜて焼いています。男の子二人が鳥の雛のごとく口を開けて待っている中、いちいち計量する余裕は私にはございません。


こぐまちゃんがパンケーキを焼く絵本もありましたが、どうしてパンケーキはこうもワクワクするのでしょう。


生地をフライパンに落とし入れたらぷつぷつと弾ける穴、ひっくり返すと見事なキツネ色でぷうっと膨らみ、焼き上がりに乗せたバターのとろける様と輝くシロップ。ワクワクしないわけがない!


でも、子どもができてから焼くようになっただけに、私にとってパンケーキはワクワクしながらも少しばかり苦しい思い出のあるものです。

親兄弟や友人のいない土地での育児、夫は仕事が忙しく長らくワンオペ育児の専業主婦でした。


長男は偏食で何を作っても食べない。見るだけで床にご飯を投げられたこともありました。

食べてもらえないご飯を作り続けるのが辛い時、パンケーキを焼きました。卵に牛乳が入ってるんだからこれも栄養あるんじゃ、お菓子っぽくても食べたら万々歳じゃ! と、吹っ切れたんです。


長男はパンケーキだけはいつも喜んでくれました。出口のないトンネルのような終わりの見えない育児の中、ぼろぼろ泣きました。

同じことの繰り返しに見えて少しずつ成長していくのが育児なんですが、毎日を乗り切るだけで必死だと息が詰まるものです。パンケーキは私のそういう苦しみも思い出す料理です。


もっと優しくて器用でオシャレで余裕のあるお母さんになれたらよかったのに、ごめんね。パンケーキを頬張る息子の顔を見ながら心の中で謝っていました。


でも今はみんなで笑いながら食べる料理へと変わりつつあります。息子たちは「おかわり」「美味しいね」と言ってくれるようになりました。家族のそういう言葉と笑顔を励みにできる幸せを教えてくれたのは、パンケーキだったかもしれません。



【深水家のパンケーキの作り方】


ボウルに小麦粉、ベーキングパウダー、卵2個、砂糖、牛乳を入れます。私は好みでチューブのバター入りマーガリンもしくは溶かしたバターを足します。シナモンをがっつり入れても美味しいです。いつも目分量です。いいんです、ざっくり混ぜます。


テフロン加工のフライパンで油をひかずに焼きます。生地がふつふつ穴空いたらひっくり返します。

次に焼くときは濡布巾にいったん置いて少し冷ましてから。ジュー! って瞬間は息子から歓声が上がりますので「イッツ・ショータイム!」と悪ノリしてます。


焼き上がりにシロップやバターを乗せてもいいし、我が家は砂糖とバター多めでそのまま食べてもいいようにしてあります。シロップでべたつかないし、洗い物が楽だからです。手を抜くところは抜きたい立ち飲み母ちゃんでした。


どうぞ召し上がれ。

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