ご用件は必要けん?

 とある国際交流協会なる団体から

「そちらの大阪事務所で手続きをするのに必要な書類を教えてほしいと、こちらに相談に来られた方がいます」

という電話がかかってきました。

 大阪に事務所なんてないのに、と思いながら

「どのような手続きですか?」

と質問すると、その協会のスタッフは、急に黙り込みました。

 こちらから話しかけようとした時、突然、そのスタッフは

「少々お待ちください」

と、答えました。ほかの人に受話器を渡したようでした。

「うちの奥さんが、フィリピン人なんだけど」

 日本人男性の声に変わりました。

「うちの奥さんが、フィリピン人なんだけど。子ども連れて1年前にフィリピン帰っちゃったの。それで、今度、鹿児島に戻って来るんだけど、奥さんが大阪の事務所で手続きしてほしいって言ってきたんだ。何を持って行けばいいかな?」

 この質問だけでは答えられなかったので、男性に確認しようと

「どんな手続きですか?」

と、尋ねました。

 男性は怒った声で、もう一度、同じ話をしました。

「こんな簡単なことも答えられないのか!」

 男性が声を荒げたので

「大阪の事務所で、何の手続きをされたいのですか?サービスは、ひとつではありません。具体的に、何をされたいのか、おっしゃっていただけませんか?」

私は、やや強い口調で男性に質問しました。

「そ、それは…」

 男性は急に弱気になりました。

「奥様から、何の手続きをしたいか、聞いていませんか?」

「…わからない。…大阪の事務所へ行って手続きしてこいって、言われただけで…」

「大阪の事務所へ行っても、何の手続きをしたいのかがわからなければ、あちらだって、ご案内もできませんよ。奥様に、大阪の事務所で何の手続きをすればいいのか、確認していただけませんか?」

 私が電話を切ろうとしているのを察した男性が

「ビ、ビザだよ!ビザビザっ!ビザビザビザビザっ!子どものビザの延長だよ!」

 男性はそう騒いで、私を引き留めました。

「お子様はフィリピンにいらっしゃるんですよね?ビザの延長は、フィリピンの入国管理局で手続きします。日本では、フィリピンのビザ延長の手続きはできません」

 私の答えに、男性は泣きそうな声で

「ビザの手続きするからって…奥さんに言われたんだもん」

と、スネはじめました。

「もう一度、奥様に電話して、フィリピンで何の手続きをするのか、そのために、大阪の事務所で何をすればよいのかをきちんと確認してください」

 私は男性に対するいら立ちを抑えがなら、男性に伝えました。

「聞けって言われても…」

 男性はふて腐れた声で答えました。

「奥さん、英語だから。何言ってるか、わかんない…」


 どっひゃ~っ!(ノ゜O゜)ノ

 言葉の通じない奥様と、どうやって暮らしてきたのーっ!(/--)/


 夫婦間のコミュニケーションが取れないから、奥様は子どもを連れて、フィリピンへ帰ってしまったようです。

 奥様の指示がわからず、かといって、奥様に再度説明を求めることもできず、男性は国際交流協会に相談したことがわかりました。同協会は、何度も大阪事務所に電話をしたようですが、話中だったため、こちらに電話をかけたのです。

 

 フィリピン人の奥様と会話ができない日本人男性。結構、多いですよ。

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