第12話 人生はいつでも突発的で多種多様に変化する


「えーと?スタースター……。」

レンタルショップにて、西条さんに渡されたメモを手に映画を探す。


んー、ここじゃないみたいだな。タイトルからしてSF系かと思ったんだが……ならアクションか?


「あれ……一さん?」


後ろから俺の名前を呼ぶその声はまさか……

「西条さん?」


やっぱり。どこかで聞いたことあると思ったら……それにしてもなんでここに。


「な、なんでいるんですか!?」


いや、なんでって、西条さんに勧められた映画を借りに来たんだけど……。


「あ……そういうことですか。」

俺が手に持っている紙が、自分が渡した物だと気付いたのか、勝手に一人で納得する西条さん。


自分で勧めといてそれはないでしょ。


「西条さんも映画借りに来たの?」


ここはレンタルショップで、今この場所は映画が置いてあるところだから、そうなことは分かってるんだけど、何を話せばいいのか分からなくて、ついそんなことを口走ってしまう。


「は、はい。時間が余ったので……。」


時間が余ったって、他にもっと言い方あっただろ。

見たい映画があってとか、もっとこう何て言うか……今の言い方だと暇人みたいじゃないか。

いやまぁ実際そうなのかもしれないけど。


「あ、そうそう。ちょうどよかった。教えてほしいんだけどさ、このスターロードって映画どこにあるの?」


まぁでもよかった。映画の場所が分からなくて困ってたところなんだ。


「こ、こっちです……。」


わざわざ案内してくれるんだな。別にジャンルを教えてくれればそれでよかったんだけど。


そうして西条さんに連れいていかれた先は、想像もしてない分野の棚だった。



「ここって……え?もしかして、アニメなの?」


そう、俺が借りようとしていた映画は邦画とか洋画とかじゃなくてアニメだった。

確かにアニメ映画も映画かもしれないけど、流石にアニメは想像していなかっただけに、驚かざるを得ない。


「は、はい……。」


なんてこった。


正直な話、嫌いではないが俺はあまりアニメを好んで見ようとはしない。

なぜならあり得ないから。邦画や洋画は演じている人間が、ちゃんと実在している人間だからもしかしたら会えるかもしれない。

けどアニメに関してはそれが絶対にない。どんなにその主人公に好感を抱いても、本物には画面の中でしか会えない。所詮は作りものでしかないんだから。


「確かにあった……。」


見つけてしまった。俺が借りようとしていたタイトルの作品を。


「あのメモの中でも一番お勧めです……。」


そんな情報いらないって。ますます借りないといけなくなるじゃないか。アニメってだけでも借りたくないのに。


「そ、そうなんだ。へぇ~……。」


案内してもらっておいて今更借りないのも違う気がするし……あぁもう、仕方ない。借りるか。


「さ、早速今日見てみるよ。楽しみだなぁ~、西条さんの一番のお勧め。」

自分でも心にもないことを言ってて胸が痛くなる。


ごめん、西条さん。たぶん俺、借りるだけで見ない。


「か、感想楽しみにしてます……。」


なーんで、そういうこと言うかなぁ~。見ないといけなくなったじゃないか。

いやまぁ借りたんだから見ろって話なのは分かってるんだけど。


「は、はは。うん、ありがとね西条さん。それじゃあ俺はそろそろ……。」


なんだかすごく俺と西条さんは合わない気がする。何となくだけど。だから早くこの場を離れたくて仕方がない。


「あ、はい……お疲れ様です……。」

見送ってくれる西条さんに見向きもせず、急いでレジに向かう。


はぁ、疲れた。どっと疲れた。なんかやることなす事全部がうまく言ってない気がする。

一体どうなってんだよ、俺の人生。


しかし、アニメか。正直見る気も見たい気も全くないけど、西条さんにあそこまで言われて見ないわけにもいかないし、仕方ない。

これも俺の運命だと思って諦めて受け入れるしかないか。


自分の人生における選択や道筋が間違っている気がしてならない。今日もまた、俺は諦め受け入れる以外の選択肢を見い出せなかった。

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