S15.1 誰しもがある帰郷の心 7月20日
――光綿市 光綿支部紅葉――
祓川「それで?結局噂のママはどうなったんですかせーんぱい?」
瀬川「最新話だと主人公くんに即席のカクテルを作って、北酒場歌って主人公くん酔い潰してお持ち帰りしてたよ」
祓川「それは……スナックのママなのでは……?」
瀬川「そうだね。そういう人がこのはちゃんの見た目をしている。そう言うギャップ萌えがいいんだよ」
稲生「やっぱり何を話してるかが分からない……分からないよ……」
風鳴「戻ったぜ。ついでに店の前にいたんでご案内だ。ライクもいたが、なんかちょっと頼むとかでどっか行っちまった、好きなとこ座ってくれや」
百瀬「こんにちはー!」
瀬川「ああ、それはちょっとお願い事をしてね」
百瀬「らいくにね、紅葉にいってくれとおねがいされたからきたよ!」
祓川「そっかあ。来玖くんは綾華ちゃんと一緒に少し密偵に行ってもらってるのよ」
風鳴「なるほどな、ここんとこ全員で動くってことは滅多にねぇもんな。無理してなきゃいいが」
瀬川「僕たちの支部も評価されてきてね。ある程度自由行動が保証されたんだ。だから、綾華くんたちには藤袴のストレイに入会してもらってる」
花園 「……潜入捜査にしたってまた物騒なとこだな」
早乙女「コウくんどっか行ってるんけ?」
風鳴「……そういう話なら俺にも通してもらいたかったが、ネットやらあの辺じゃ俺は役に立ててねぇか」
百瀬 「なんにちぶりだろね! わたしにはうーろんちゃをおねがい!」
瀬川「まあ、百瀬くんにはここに行ってもらいたい。出張みたいなものだよ」
▶そう言って、書類を渡します。白雨と書かれていますね
百瀬 「ありがとう! ここにいくのね」
稲生「はーい、ちょっとお待ちをー……っと、出張?もしかしてソラたちも引っ張り出される系?」
瀬川「この間店に来た鷲羽くんが優秀な解呪担当を教えてもらったんだ。その治療だから、君たちは通常通り悪鬼撲滅だよ」
祓川「ここにある機械に乗ってくださいね。移動がすぐ出来ますから」
百瀬 「はーい」
風鳴「んじゃまぁこっちの業務を張り切るとすっか。ちゃんと帰ってこいよ」
花園「無事に戻ってこいよ、マジで」
百瀬「まかせて! わたしならできるから!」
――白雨市 裏路地紅葉――
黄楊「えっと、そろそろ時間ですよね。たしかこのボタンを……、えいっ」
百瀬 「たはー! とうちゃく!」
▶女児服を着た成人女性がすっぴんかつ満面の笑みワープされてきたのを見て、男は露骨に顔を顰めます
笠岡「おい、なんだあのカマトトぶりっ子の構ってちゃんは。女夜叉ってみんなあんなんなのか?」
冬川「何で」
笠岡「お前そっくりじゃないか。色々と」
冬川「あんなに可愛くないですよ、性格」
楠戸「相変わらず口悪いなオマエ、紅花さんも乗っかるなって」
冬川「――まあ、気は楽なんですけどね。じろじろ胸みたりしないんで」
百瀬「こんにちはー! えっと、ひかりわたからきましたよ!」
笠岡「うっわ。やばいだろあいつ。お前より性格やばそうとか世も末だな」
冬川「アレルギーとか食べられない食べ物あります?今度入れておきますけど」
楠戸 「二人もいると突っ込むのも疲れてくるな……」
黄楊「もう……。――せっかくお客さんが来てるんですから、喧嘩は程々じゃないと駄目ですよ」
百瀬 「えっとねー……これこれ、これですよっ」
▶百瀬は、10人中10人が振り返るであろう美貌の女性、冬川紅花に書類を渡します。そのまま見ないで笠岡に回していますね
冬川「はいどうも」
笠岡「はいよ。ほーん、これは曜灯ちゃんの仕事だな。ほら」
黄楊「あ、本当ですか。お預かりします」
楠戸「なんの仕事だ?」
冬川「……ところでこちらの方は一体どちら様で?」
黄楊「あ、名乗り遅れました。黄楊曜灯、4年生です!白雨支部へようこそ。えっと……、百瀬さん!」
百瀬「わたしですか! わたしは、百瀬朋花です! 2年生です!
笠岡「やべえよやべえよ……。お前の性格、ウジ虫の方がかわいいって思ってたが……、今日からアレよりマシなやつって評価に切り替えるわ」
冬川「冬川紅花、見ての通りの美人料理人です。コレは笠岡です。煮ても焼いても食えない男ですから近付かないように」
百瀬 「よろしくね!」
▶笠岡に満面の笑みを向けますが、笠岡は心底気持ち悪いものを見るような目で見てきますね
笠岡「キチガイの相手はする主義じゃねえんだわ。こっちの助手に話しかけてくれ」
冬川「可哀想に。キチガイにキチガイ呼ばわりされるなんて」
楠戸「私らよか一個下か、よろしく。で、何が書いているんだ?」
黄楊「あー、これは……、ムーさんとおんなじ感じなんでしょうか?体の外と中があべこべになってる?みたいです」
百瀬「わたしはなにをすればいいですか!」
笠岡「曜灯ちゃん、案内してやれ。俺はこいつと同じ空気を吸いたくない。こういう手合は苦手だ……。要件は後で伝える」
冬川 「幼児退行みたいなモノですかね。――私は料理でも作ってるので注文をお願いしますね」
黄楊「わかりました。それでは神社に案内するので、着いてきてください。きっとお役に立てると思います。」
百瀬 「はーい!」
楠戸「まーたわけわからんやつか。ま、気を付けていってきな」
黄楊「はい、いってきます!」
――白雨市 朱鷺森狐火宮神社――
秋枝「こんにちは曜灯ちゃん。も、もしかして今日も仕送り……?毎日お鍋はしんどいよぅ……」
黄楊「もう夏だもんね……。今度わたしからも灯風さんに言っておくね……でも、今日はお仕事なんだ。この方、百瀬さんが呪いにかかってるみたいで、診てほしいんだけど……、今いい?」
秋枝「そっちのお姉さん?」
百瀬「ともかです! よろしくね!」
黄楊「そうそう。なんか体の中と外とがあべこべみたいで」
秋枝「萩風ちゃん、ちょっといい?」
萩風「なに?」
秋枝「このお姉さんなんだけど……」
▶萩風と呼ばれた白髪の幼女がじっと見つめると、少し気持ちの悪いものを見たような目をして、秋枝と呼ばれた少女に話します
萩風「これ、祝福されてる。ムチ無知女大生大好き神様から」
秋枝「えっと……?呪い、でいいの?」
萩風「いい。私も手伝う」
黄楊「お願い。わたしは……、えっと、応援してるね」
秋枝「じゃあ、本殿へどうぞ。曜灯ちゃんはお鍋いっぱいあるから、ちょっとでも食べていって」
百瀬「ほんでん……わかった!」
黄楊「あっ、はい……。晩ごはん食べられるかなあ……」
――朱鷺森狐火宮神社:本殿――
秋枝「横になってくださいね。その後マッサージをしますので」
百瀬「はーい!」
▶全身をくまなくマッサージされます。半分寝ていたところで、意識が戻るように百瀬の目が突然覚めますね。意識ごと叩き起こされた気分がします
百瀬「はぁぁ………? んんん……終わった……?」
秋枝「おつかれさまでした。お体はどうですか?」
百瀬「すごくスッキリしていますよ…。長い長い夢の中にいた……よう…………な気分………………」
▶ゆっくりと自分が着ている女児服や、顔をペタペタと触り化粧をしていない事実に気が付き始めます
萩風「神の加護はどう?」
百瀬「加護……なんですかね、本来の自分を取り戻したような感じで……ありがとうございます……」
▶顔を真っ赤にしていたたまれない顔をしていますね
秋枝「あんまり気に病まないでくださいね。お土産としてたくさんお野菜やお肉もありますので、どうぞ持って帰ってください」
百瀬 「それはとってもありがたいです……。ついでにかなり勝手ながら……羽織るものとかあれば……」
萩風「トーカのがある。持っていって」
百瀬「助かります……」
――白雨市 朱鷺森狐火宮神社――
秋枝「曜灯ちゃんー終わったよー。お鍋食べてくれたー?」
黄楊「うぅ……お腹いっぱい……。お父様になんて言ったら……」
秋枝「まだまだあるから、持って帰ってね」
黄楊「ありがとうね……、灯風さんにもちゃんと言っておくからね……」
百瀬「無事戻れました……。ありがとう……」
黄楊「それは良かったです。とは言っても、わたしは何もできていませんけども」
――白雨市 裏路地紅葉――
楠戸「お、戻ってきたか……どうしたんだ曜灯ちゃん、その腹……」
笠岡「食べ過ぎだ。餌付けされるのもほどほどにしておけ」
冬川「食べて来たんですか、私以外の料理を……」
黄楊「歩くのもちょっと、苦しかったです……。でも、お仕事は果たしてまいりました!あと灯風さんへの伝言も……」
百瀬「食糧が山のようにありましたから……。さぞ困っていたかと……」
笠岡「まあ、そこのやべーやつもまだマシになったようだな。最低限人間としての羞恥心はあるらしい」
百瀬「わたしもきちんとおつとめしました! ――――――こほん、お陰様で元の自分に戻れました。本当にありがとうございます……」
楠戸「こっちは問題なく治ったと……お疲れさん。楠戸穂だ、また会ったらよろしくな」
冬川 「まあそれはそれとして餡掛け蓮根団子ができたのでどうぞ。消化に良いですよ」
楠戸 「お、一個もらいっと!」
黄楊「い、今から食べるのはちょっと……。あ、後でいただきますね!お家で……」
冬川「じゃあタッパーに詰めておきますね。薬膳用の生薬も使ってるので胃腸に効きますよ」
笠岡「用が終わったのなら帰るといい。曜灯ちゃん、今日俺たちは元々別の用事でここに来た。後で伝える」
黄楊「わかりました。先に百瀬さんを光綿に送って来ますね」
冬川「はい、じゃあこれお土産分のタッパーね。絶対食べてね?」
黄楊「それでは行きましょうか。……あの、先に伝えておきたいんですけど、失敗したらごめんなさい」
百瀬「えっ」
――光綿市 光綿支部紅葉――
瀬川「戻ってきたか。施術も凄腕だと聞いているし、なかなか早かったね」
百瀬「ただいま戻りました。ありがとうございます、いろいろ……こう……」
祓川「――まともな人だったんですね。頭のネジ死んでる人だと思ってましたよ。服装も、本意じゃなかったんですね」
稲生 「うあー……つかれた……あ、おかえりなさーい……」
早乙女「おかえりー。はい、あーん♡」
花園「本意であの格好は流石に……。帯刀さんならワンチャンあったかもしれねーのがむぐっこえーな」
百瀬 「自分があれなときからずっとお世話になってました。これでも以前は光綿随一の常識人で売ってましたので、ほんとありがとうございます」
花園「……そうか」
祓川「あー……。うん、よろしく」
瀬川「まあ、お帰り。来玖くんが一番心配していたよ」
百瀬「改めて百瀬朋花です。よろしくおねがいしますね……。冗談飛ばせるくらいに回復したと思っていただければ……」
――白雨市 裏路地紅葉――
笠岡「さて、――曜灯ちゃん」
黄楊「はい、無事に送り届けて来ました」
笠岡「今、熊本で雨すごいことになってるのは知ってるよな」
黄楊 「はい、毎日ニュースで見るくらいには」
笠岡「そこに、紅葉が設立している孤児院があってな。――何が言いたいかはだいたいわかったと思うが」
笠岡「孤児院の人間と連絡が取れない。毎年夏休みが終わると同時に夜叉候補を引き抜くのだが、――――そもそも連絡が取れんのだ。上ノ瀬達に」
黄楊「そ、そう……、ですか……。心配、です……」
笠岡「こちらでも安否確認はしているが、マスコミに忍ばせている斥候からも孤児院の姿は形跡もなく、避難所に関係者の姿も見えないとのことだ。――最初からいないものとして考えたほうがいいだろうな」
黄楊「……わかりました、ありがとう、ございます……。それでも、やっぱり心配くらいはしたいです。約束を、しましたから」
笠岡「一応こちらでも確認は続ける。報告はしたからな」
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