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 食事の場所は、結局ロードサイドのファミレスに落ち着いた。もちろん酒は抜きだ。車だし、もうあの出張の時のような悲劇はゴメンだ。


 食事が済み、しばらく取り留めもない話をしていたが、やがて松島さんが言う。


「神谷内さん、再婚されないんですか?……あ、ごめんなさい」


 俺が露骨に不快感を示したからだろう。彼女はすぐに申し訳なさそうにうなだれる。


「君には関係ないことだろう」憮然としながら、俺は言う。


「でも……私は、神谷内さんのことが好きですから……」


 こいつ……はっきり言いやがった。臆面もなく。何考えてんだ。


「俺ははっきりと、拒絶したよな?」


「はい。だけど……それには、それなりに理由が……あるんですよね?」


「……」


 そうか。全て知ってるのか。そうだよな。


 なんだかんだで営業課の人間はみな俺の個人的事情を知っている。たぶん誰かが彼女にそれを話したのだろう。おそらくは、俺に対する彼女の思いを諦めさせるために。それほど彼女の俺に対する好意は周囲にもあからさまだったのだ。


「だったら、俺のことを好きでいても絶対に報われることもない、って分かってんだろう?」


「はい……でも、私はそれでも、いいんです。私にとって神谷内さんは、スーパーヒーローなんですから」


「……はぁ? たかがスケベ親父から一度助けたくらいで、スーパーヒーロー扱いか?」


「違いますよ。神谷内さん、覚えてませんか? 十五年前、広坂の交差点で助けた、迷子の女の子のことを……」


「!」


 俺の意識は一気に十五年前に遡る。そう……確かにそれは、中三の四月のことだった。


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