第4話 三大天使

【以下大天使降臨の歌】


大天使ラファエルは歌う


『太陽は常変わらない……以下略』


続く大天使ガブリエルも歌う


『恐ろし……以下略』


そして大天使ミカエルも歌う


『海……以下略』


三大天使が声を揃える。


『n……以下略』



 失礼。神を讃える歌なんて、クソすぎて書きたくない。オエーッ。


 とにかく場面を地獄の闘技場コロッセオに戻す。



 その瞬間、あたしと口の悪い天使の周りにはそれぞれ光の槍みたいなものが降ってきて、あたしらを閉じ込める形で取り囲んだ。光りの牢獄。これがアイツ等の賛美歌の力だ。


「ガルガリエル。一体貴方は何をしているのです。悪魔との諍いは主の御心に反しているぞ」


「違うのですガブリエル様!これにはワケがありまして!」


 眼鏡をとったら美人の学級委員長みたいなツラ(いっとくが天使に性別はない)がガブリエル。事実上の天界ナンバーツー。


「たかだか中間管理職ふぜいが先陣きって戦争でもするつもりー。ばかものー」


「ラファエル様!そんなつもりは毛頭ございません!」


 ふわふわの栗毛にくりくりおめめ。ため息をつきたくなるような愛らしい子供みたいな姿をしたヤツがラファエル。三番手になるのかな。


 でもってクソ査察官は中間管理職になるらしい。大変だなおい。少し同情する。


「先ほど君が述べた世界のバランス。今まさに、君自身がその手で天界と地獄のバランスを欠こうとしている。これには、一体どんなワケがあるのだね」


 この一番エラそうで偏屈な物言いをするヤツがミカエル。光り輝く長髪をなびかせ、恐ろしく端正な顔立ちで氷の様な目をしている。まあ実際、一番偉いし強い。天使の長。神に似た者。最強の天使。あの喋り方、マジで反吐が出る。見ているだけでぶん殴ってやりたくなる。


「誤解でございますミカエル天使長。私はただ自分の命を全うしようとしていただけです」


 おいおいおい。天使ともあろう者が嘘つくってか。悪魔一同、ガルガリエルとやらの発言にはドン引きを隠せない。総出でブーイングをかます。


Boooooooooow!!


「では何故、先ほどのような一足触発状態に?」


「あの、メス悪魔めが、私が拷問の手を止めろと言っても無視し続けたので、少し嗜めたのです。そしたらあの者共はこともあろうに私に侮辱的な言葉を」


 安いシナリオだな。天使の頭は全く腐ってやがる。


「本当なのですねガルガリエル?」


「真実でございます。御三方様」


 この五秒で考えた程度の言い訳で、騙されるバカがいるもんか。


「貴方を信じます」


 いたよね。バカのおさミカエル。バカさも神クラス。頭スポンジ、大マヌケのコンコンチキ。


「悪魔は卑劣です。誘導的に戦争しようとするなんて。主の教えに反します」


 バカナンバーツー。こいつはすぐ悪い男に貢いじゃうタイプだわ。


「ガルガリエルは真面目に働いてるだけなのに。可哀想だよ」


 まあこいつは実際クソガキだからね。仕方ないね。とにかく天使一同の発言に、悪魔一同再びドン引き。


「これは早急に何かしらの決着をつけないと」


「まあ例えガルガリエルが嘘を付いていて、こちらに非があるとしてもさ。いいよね?」


「悪魔如きに正当性など不必要だ」


天使ってのはどいつも血の気が多いな。神は脳みそ削減しちゃったのかな。


「しかしミカエル。主にはなんと?これは御心に反しますよ」


「きにしない。ミカエルの意志はわが主の意志でもある。やっちゃおー」


 あたしは何とか事態を収集しようとするが光の檻に阻まれて身動きは愚か口をきく事すらままならない。ぶっちゃけこの光の檻の中って、少しでも油断しようものなら消し飛んじまいそうな圧力だ。三大天使はマヌケだが、力だけは恐ろしく強い。


「まあ落ち着けよ三大バカの方々。それとも敵のホームでこれだけの悪魔を相手にたった三人で勝てるほど、地獄を安く見ているのかい?」


 驚いたことに『地獄の烈火の料理人』が火消し役になっている。喧嘩命というアイデンティティーをかなぐり捨て。その精神には涙が出る。しかしベルちゃんもさっきから天使をブン殴りたくて仕方ないから、この役に向いてるとはいえない。


「元力天使。ベリアル。悪徳を愛する者。勝てると思ってる。そう言ったらどうする」


「うらぎり者のクセに。未だに主に頂いた名を名乗るなんて。ずうずうしいやつー」


「お前を倒せば後は烏合の衆。塵と同じです。主の御心のままに殲滅しましょう」


 平和的に交渉を試みたが三大天使が揃って中指おっ立ててきた。これにはベルちゃん、完全にブチ切れた。


「生意気にガタくれてんじゃねえぞボンクラ共。てめえ等が上でマナー教室を開いている間もこっちはずっと、鉄火場でケンカ暮らしなんだぜ。勝てると思ってるなら泣きを見せてやる」


 頭に血が上ってると、悪魔は手がつけられない。このままだとマジで最終戦争アーマゲドンが勃発しちまう。あたしは誰かに助けを求めた。それが誰かを言う前にあたしが頼んだのとは別の方向から助けがきた。


 そいつはまさかの相手だった。


続く

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