10 君の話

 ああ、よかった。え? ほら、昨日別れ際、顔色あまり良くなかったものだから。よく眠れた? そう。安心した。うん。おはよう。今日で十日めだ。うんうん、回数重ねたね。継続は力なり。


 じゃあ……今日は、そうだな、君から何か質問とかリクエストとか、聞いてみよう。ほら、昨日、本の話をしたね。貸そうか?って僕から言ったのにあいにくお許しが出なかったからさ。お詫びのようなものとして考えてくれ。


 ……え? いやごめん。驚いて。そう……僕から見た君の印象か……。見た目でもいいって? 難しいな……え、ええ? あ、はは、君からはそう見えてるの僕は? なんとも頼りがいのなさそうな感じだなあ……。そうか……君の部屋には鏡もないんだったね、容姿に関心を持つのは必然か……。うん? たいしたことじゃないよ、何かに興味を抱くのは喜ばしいって話さ、うん。


 そうだね、自分の姿は……触診してみるのもいいと思う。触って確かめるってこと。たぶん、鏡は用意できないだろうから、代替案として。ああ、うん、わかってるよ。僕からの印象ね。


 君は、――美人だよ。あの、あまりこういったことを面と向かって言い慣れていないから僕も恥ずかしいんだけど、君は綺麗だと僕は思う。イケメン? ……いや、だよ。きっと引く手数多あまただっただろうね。僕と比べて? 僕は……――だから。

 ……君と違って。

 ……。いま、聞こえた? 僕が何て言ったか、認識できた? ……やっぱり今日はもうおしまいにしよう。部屋まで送るよ。顔が真っ青だ。早まってすまない。じゃあ、明日、また、ここで。待っているから。君を。

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