第24話 決着

 肉に消化され、よくわからんプロセスでリポップ。

 そしたら神になった俺は……って字面だけでもひどいな。

 とりあえず神である。なんの神かわからんけど神なのである。

 管理権限であらゆる攻撃は念じただけで攻撃の方からそれていく。

 まさに最強……つまりだ。

 光の神をぶん殴れるわけだ。

 俺は光の神の前に進む。


「傲慢で愚かな子どもだ」


 収束された光線が俺を狙い続ける。

 だが俺はその光を次々と曲げていく。

 神殿は焼け、溶けもせずに灰になる。

 そして俺はと言うと……。

 うっわ! これきつい!

 脳みそとろける!

 集中してないと一発で死ぬ!

 と泣き言を脳内で反芻していた。

 いきなり死にゲーやらされたら誰でもそうなると思う。


【ご主人様がんばれ!】


 おうよ! やるぜ! やったるぜー!

 気合だ!


「あははははは! 面白い! 神になったばかりだというのに力を使いこなすか!」


 使いこなせてないでゴザル!

 脳みそフル回転でなんとか食らいついているだけっす!

 さらに次々と光が俺を襲う。

 光を曲げるたびに俺の戦闘形態が剥がれていく。

 その代わりに俺の姿は冬山での獣。

 あの熊を倒した獣の姿に変わっていった。

 素早く、しなやかな姿に。

 狼でありながら狼ではない。

 鹿の足と狼の牙と爪、毒を持つ獣に。

 俺は光を曲げながら神に突撃する。

 頭から最高のスピードで。


「あはははははは!」


 神は笑っていた。

 ぐちゃり。そのニヤけツラに俺は頭をぶち当てた。

 神は飛んで行き、地面に激突しながらバウンドする。

 湿った音が神殿に響いた。

 光の神はピクリとも動かなかった。


 あ、あれ……死んじゃった?


【え、嘘……神が死ぬなんて……】


 だけどそいつは杞憂だった。

 神は「ごふっ」っと咳をし、呼吸を始める。


「は、はははははははは! 死んだか! 私は死んだのか! 久しぶりだ! ああ、数千……いや数万年ぶりに死んだのか!」


 神は……喜んでいた。

 心の底から愉悦していた。

 興奮した声を出す。

 俺はリアクションに……困った。

 神はもう一度咳をした。

 赤い血がびしゃっと口から飛び出した。


「ふ、ふふふふふふ……驚いたか。神は死んでも滅することはない。強制的に復活させられるのだ」


 あー……要するに攻略不可能ってこと?

 なにそのクソゲー。

 発売直後の洋ゲーかよ。


「くっくっくっくっく……安心しろ。お前を我と対等のもの神として認めよう。ようこそ新しき神よ」


 ……あ、わかっちゃった。

 そういうことか!

 人類の絶滅って俺を本気にさせる嘘だったのか!

 俺を追い込んで神にしたんだ!

 こ、この野郎おおおおおおおおおっ!


「それにしても……アデルのやつ。こんなに面白いやつをスカウトするなんて。くくく、ぐわーはっはっは!」


 ぶちり。

 俺の中で何かが切れた。

 俺は獣の姿から戦闘形態になる。

 そして光の神の前に立つ。


「くくく……もういいぞ。楽しかったぞ! あーはっはっは……」


「歯食いしばれ」


「は?」


 俺は拳を握る。

 そして思いっきり神の横っ面にぶちかました。

 たぶん人生最大威力の拳だ。


「げぶっ!」


 光の神は飛んでいく。

 まずは顔がグッチャグチャになり、体のあちこちを破壊しながらパーツをぶちまけた。


「ふう、すっきり!」


 俺は転生してから一番の笑顔を作った。

 爽やかに。なにもかも荷を降ろした顔で。


【この人……光の神様ぶん殴ったよ!】


 うるせえええええええ!

 あのバカは一回殴んないとわからないんだ!

 俺は何一つ悪くない! 悪いのは光の神だ!

 文句言うやつは滅ぼしてくれる!

 オラァッ! 文句あっか!


 すると俺の頭の中に声が響いてくる。


「うむ。見事な拳であった。我も神になったときに殴ったぞ。殴り殺したのはお前くらいだが。なあ地母神」


「そうですね勝利の神よ。私も殴りました。よくやってくれましたラルフ! 軍神、たしかあなたもですよね?」


「うむ。儂も殴ってやった。よくやった小僧!」


 神様からの「俺も殴った」宣言と祝辞が次々と。

 要するに……神になるときの通過儀礼だったのだ。

 光の神との戦いも拳をくれてやるのも。

 そして神々からの祝辞が止まるとアデル様の声がした。


「ラルフ、すぐに神の国に来ますか?」


 えええええええええええ!

 いやねえっすわ。

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