第38話 誓ひてし 人の命の 惜しくもあるかな

『先生、こんにちは?』

『あぁ…こんにちは。』

『あぁ…そう言えば、もう、9月になりますねぇ?大学のスクーリングはどうでしたか?』

『いやぁ、久しぶりの講義、レポート提出と大変だったよぉ。しかし、オンデマンドで大学の講義を聞いていたから、孤独感があったり、辛いなぁ…って思っていたけど…スクーリングに行ったら、1000人程、全国から来ていて、楽しかったなぁ…。それに社会保障論、障害者福祉論、福祉経営論、児童福祉論、医学概論など…知らない事も多くて、とにかく、あっという間の1ヶ月だったなぁ…。』

『私も、先生と一緒に行こうと思ったのですが…積まれた原稿を印刷会社に提出するので大変でしたよぉ。ところで通信大学のスクーリングってどんな感じなんですか?』

『通信大学を受講している人はとにかく、真剣だなぁ…。特に、社会福祉士を目指す為に勉強しているから、色々な社会福祉施設で実際に働いている『ケアマネ』『介護福祉士』『看護士』などの専門家、『スーパーの店員』『フリーター』など…社会福祉に関して無知な人などさまざまだけど…とにかく、相手の為に、手を差しのべてみたいって考えているんだよぉ。それに母親に近い年齢の人などが多くて年齢層は高いねぇ?』

『へぇ、そうなんだぁ。意外だなぁ…。働いている若い人が多いように感じたけど違うだぁ。』

『そうさぁ。年齢層は高いなぁ…キャンパスライフというよりも井戸端会議があちこちで開かれているが正解だなぁ…。』

『それにしても、この1ヶ月辛かったなぁ…。』

『流石に、1ヶ月仕事が出来なくなるから、かなり早いペースで執筆したからなぁ…ごめんねぇ?』

『いえいえ、大丈夫ですよぉ。あぁ…ところで、大和さんに逢えました?』

『逢えたけど…突然、久美ちゃんがいなくなるから寂しかったよぉ。』

『あぁ…ごめんねぇ?ただ、忘れている記憶が甦るのが怖くて…』

『なるほどねぇ?』

『何か聞きませんでした?』

『いやぁ、久しぶりに飲んで懐かしい話をしただけだよぉ。でも、記憶がないからぁ…あぁ…そっか…っとなったけど。』

『だろうねぇ?先生は大学時代の話をされても卒業して、『8年?』ぐらいですからねぇ?』

『そうだねぇ…そのぐらいになるからなぁ。』

『あぁ…久しぶりに、外でランチでもしようかぁ?』

『えぇ?大丈夫ですか?』

『あぁ…かまわないよぉ。よし、行こう?』



『いらっしゃいませ?こちらにどうぞ。』

『ここの中華料理は美味しいんだぁ。特に、餃子は最高なんだぁ。それに、焼売や春巻も最高だなぁ…。あぁ…それから、エビチリなどなど。あぁ…メニューとおしぼりと水がきたよぉ。』

『何を頼もうかなぁ…どれも美味しいそうだなぁ…。エビチリ、エビマヨ、春巻、豚の角煮、上海焼きそばねぇ…迷うなぁ。』

『それにしても、9月なのに暑いなぁ…。』

『そうですねぇ?残暑が厳しいですねぇ?』

『ふぅ、クーラーが効いていて最高だなぁ…。あぁ…なんか言った?』

『もう、最低だなぁ…。残暑が厳しいって言ったけど…』

『あぁ…そっか。残暑ザンショ?』

『先生、寒いからぁ…』

『えぇ?そんな、せめて…ありがとう。面白いって笑ってくれても良いのに…寂しかったのになぁ…。』

『はい、はい、面白い。』

『あれぇ、感情が入ってないなぁ…』

『先生!少しは私の気持ちに気付いてくれません?この1ヶ月かなりしんどかったんだから…グスン。』

『あぁ…ごめん、ごめん、俺が悪かったなぁ…。ヨシヨシ。偉かったよぉ。』

『少し、癒された。ありがとう。』

『ほらぁ、機嫌直して、好きな物を食べよう。』

『もう、遠慮しないからねぇ?』

『もちろんだよぉ。』

『先生、私これが食べたいなぁ…。』

『どれどれ、『ぺぇ、ぺぇ?北京ダック?5000円って…』』

『だめかかなぁ?』

『ちょっと、待て…大丈夫だよぉ。特別だぞぉ。』

『やった!』

『あぁ…すいません、注文お願い致します。北京ダック、焼売、エビマヨ、エビチリ、春巻、餃子、上海焼きそば、杏仁豆腐、食後にマンゴーパフェをお願い致します。後、青島ビールを2つ。』

『あぁ…大丈夫だったかなぁ…アルコールは?』

『あぁ…もちろん、大丈夫ですよぉ。』


『ありがとうございます。メニューを確認致します。北京ダック、焼売、エビマヨ、エビチリ、春巻、餃子、上海焼きそば、杏仁豆腐、食後にマンゴーパフェ、青島ビール2つですねぇ?』

『はい、お願い致します。』

『それにしても、この1ヶ月はお互い大変だったねぇ?』

『そうだなぁ…色々な事があったように感じルなぁ…あぁ…そう言えば、思い出した事があって…』

『えぇ?どうした?顔が赤くなっているけど…もしかして、桜の木の下で『桜坂』を歌った事かなぁ?』

『えぇ?えぇ!なんで、なんで、知っているンですか?思い出したのですか?』

『あぁ…先日、大和の飛び入りで『Soul shout!』を歌ったら思い出したよぉ!』

『そうなんですかぁ?実は私も『soul shout!』を聞いたら思い出しましたよぉ。』

『そうだぁ…、来年の桜の時期は久美ちゃんに『桜坂』を唄うねぇ?』

『えぇ?本当に?楽しみだなぁ…。たぶん、泣いちゃうけど…大丈夫かなぁ?』

『もちろんさぁ!』

『あぁ…きたよぉ。まずは青島ビールで乾杯しよう?』

『あぁ…ありがとう。』

『では、久しぶりに頑張った久美ちゃんとスクーリングを無事、終えた事に感謝し、乾杯!』

『ありがとうねぇ。久しぶりにうれしいなぁ。』

『いえいえ。ありがとう。』

『あぁ…きたよぉ、北京ダック!食べよう。』

『あぁ、旨いなぁ…北京ダック…』

『もう、先生ったら、先に食べないで私にも食べさせて下さいよぉ。』

『あぁ…ごめん、ごめん。ここの餃子やエビチリ、春巻、エビマヨ、上海焼きそばが美味しいから食べてもらいたくて…』

『それは解るけど…この場合は北京ダックでしょ?』

『そうだよなぁ…。』

『あんた、どついだろうかぁ…!パシパシ』

『どついてんやん。ほなぁ、倍返し。チュチュ、チュチュ。』

『うれしいやんかい。』

『あれぇ、なんか懐かしい感覚だなぁ…。』

『あぁ…そう言えば、軽くいつもやっていたようなぁ。』

『あれぇ、なんで、だろぉ?不思議だなぁ…』

『そうだねぇ?懐かしい感じがするねぇ?』

『最近までやっていたような…』

『マンゴープリンだぁ!うれしいなぁ。』

『そう言えば、好きだったよねぇ?よく、ミニストップでハロハロではなくて、マンゴープリンを食べてたもんなぁ…』

『そうそう、先生はハロハロのソーダ味がおすすめって言いながら、良く食べてましたよねぇ?それに、マンゴープリンを少し食べたら、旨いなぁ…って、マンゴープリンも注文してたねぇ?』

『えぇ?』

『確かに、なんで、知ってるのかなぁ?まだ、ミニストップに一緒に行っていないのに…』

『もしかして、記憶がよみがえってきているのかも…』

『そうだねぇ?小さなきっかけが記憶の糸と糸をつなげているのかも…あぁ…それにしても、美味しかった。ごちそうさまでした。』

『ポンポン、良かったよぉ。笑顔が見れて最高に気分が良かったよぉ!又、誘っても良いかなぁ?』

『もちろんですよぉ。もともと、忘れている事も多いけど、私達は付き合っていたんですからねぇ?今度はパンケーキを食べに行きましょう?』

『あぁ…もちろんだよぉ。』

『ありがとう。楽しみにしてますねぇ。』

『じゃ、原稿ができたら連絡するねぇ?』

『はい。』


『ハァハァハァハァ…ふぅ、忘れていた。』

『えぇ?どうしたのぉ…ビックリしたなぁ…。大丈夫?』

『伝えなきゃ…って思ったら、走っていた。』

『えぇ?なにかなぁ?』

『俺と付き合って下さい!まだ、記憶が戻っていないけど、久美ちゃんが大好きです。』

『答えは…チュ。もちろんよぉ。』

『あぁ…ありがとう。』

『もう、先生ったら、苦しいよぉ。(久しぶりのハグって最高!)』



『あぁ…幸せだなぁ…。記憶がなくてもこれから作りあげればきっと幸せになるよねぇ?例え、悪い記憶でもきっと乗り越えていけるよねぇ?大丈夫だよねぇ?』


『あぁ…何故かなぁ…久しぶりに久美ちゃんを失いたくないって、本気で思ったなぁ。忘れていた記憶が少しづつ思い出しているなぁ。いったい、俺はどんな人だったのだろうかぁ…。あぁ…、考えるなぁ。今のままで大丈夫だぁ。仕事、仕事、とにかく仕事をしよう!』


今日の百人一首は…

『右近〜忘らるる 身をば思はず 誓ひてし

人の命の 惜しくもあるかな』


20××年

『先生、この1ヶ月は連絡をしないで何処に行っていたんですか?』

『あぁ…ごめん、少し、外の空気をすいたくて、1ヶ月あまり、沖縄に行っていたよぉ。』

『えぇ?信じられない!どれだけ、探したと思うんですか?』

『あれぇ、書き置きして置いたけどなぁ…一人になりたいって…。』

『そんな、メモを残されたら、自殺でもすると思って探しますよぉ。それにしても、顔色も良くて良かった…って、かなり日焼けしてません?』

『あぁ…久しぶりに沖縄の綺麗な海でビーチで過ごしていたからなぁ…。』

『えぇ?信じられない!私は、休みになったら、先生を探したり、仕事をしたりと大変だったんだから…それに、今、沖縄です。明日には帰るって…もう、最低ですよぉ!せめて、好きなら、『こっちに来い』って言ってもらえたら嬉しかったのに…』

『悪いとは思っているけど…あいつの事を思い出したら一人になりたくてなぁ…俺達を守って亡くなったから…遠くに逃げたかったんだぁ。怖くなった…』

『それは、解るけど…瞬ちゃんだけで背負う事じゃないでしょ…?違うでしょ…』

『でもなぁ…あいつの手紙を読んだら、俺が久美ちゃんを守れるか…今の自分では守れないって考えてしまったんだよぉ。』

『瞬ちゃんは馬鹿なの?今は遠藤君はいないわぁ。確かに、あの手紙を読んだ時は私も一人で考えたわぁ。どれだけ、私を好きだったのか…私達を助けたかった訳ではなくて、私を守った事によって、私や瞬ちゃん、雪ちゃんを結果として守ったけど…瞬ちゃんは私が好きだと告白したでしょ?瞬ちゃんは遠藤君まで私を守る責任があるわぁ!私はそれ以上に瞬ちゃんを守るって決めたんだからねぇ?』

『あぁ…ありがとう。でも、今は無理だよぉ。あいつの気持ちが強すぎて…』

『パチン!しっかりして、私はあなたが必要なの…解るでしょ?』

『でも、ごめん。今は1人にさせて欲しい…』

『私は、絶対に諦めないからねぇ!絶対に!!』

『あぁ…』

『忘らるる 身をば 思はず 誓ひてし 人の命の 惜しくもあるかな… 』

『えぇ?百人一首…右近。』

『はぁ!久美ちゃんごめん。待ってて欲しい…』

『もちろんよぉ。一緒に乗り越えようねぇ?』

『グスン…あぁ〜…辛いよぉ…。』

『泣かないで…あなたは間違ってはいないわぁ。おもいっきり泣いて、遠藤君のお墓に行きましょう…。』



『はぁ…夢かぁ!えぇ?えぇ!遠藤がぁ…俺達を守って交通事故で亡くなった事は知っていたけど…マジかぁ、あいつも久美ちゃんが好きだったとはなぁ…。その手紙を読まなきゃな…。どんな内容なんだろう…1ヶ月も仕事が出来ないぐらいの内容って…号泣するぐらいの内容なのかなぁ?それにしても、あいつは久美ちゃんと付き合った時は『おめでとう!良かったなぁ…』って言ってくれたのになぁ…。近いうちに、みんなで逢いに墓参りでもしなきゃな…』

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