二人目の依頼者 16y7m

「あの……自分、これやり方がよく分からないんですけど。普通に相談すればいいんですか?」


 次の依頼者は声変わりこそしているものの、どこか場慣れしておらず、おどおどした様子の声色だった。


「どんな悩みかな? 君は、高校生なんだよね?」

「はい……あの、言いづらいんすけど」


 内容は父親の死、だった。

 今まで元気だった父親が突然心筋梗塞で亡くなった。あまり普段から会話をしていたわけではないが、その事実にどう向き合っていいのかわからない、その類いのものだった。

 そうか、自分の経歴に親の死を書いていたからこんな依頼が来たのか。そう考えると私は色々辛い経験をしてきている。今回も力になれるかもしれない。


「そうか、実はね、私も父親を高校生の時に亡くしてるんだ」

「え? そうなんですか」

「うん、その時はとても辛かったよ。母さんもパート始めて、色々食いつなぐのも大変だった」


 依頼者の高校生は黙って私の話を聞いているようだった。思い出しても大変な時期だった。入っていた部活も辞めることになり、私はバイトを始めた。一方で母も、子どもにだけは不自由な思いをさせたくないと貯金をはたいて大学にまで行かせてくれた。私も奨学金を申請して、少しでも家からの出費を減らすよう努力する、それはそれは暗い時期だった。


「でもね、終わってしまえばあっという間だよ。今ではあの時の苦労があったから辛い事も乗り越えていけていると思ってる。一生懸命やっていればきっと良いことあるから」


 そうなんですね、話聞いてもらってすっきりしました、と低い声でその男子高生は答えた。そのまま時間終了となった。

 大した答えは出せなくても、同じ境遇の人がいる、そう思うだけで人は救われるのかもしれない。それならば力にはなれる。

 それにしてもこんなにも続けて依頼が来るなんて。よっぽど依頼者が多いのだろうか? いや、私のようなバカのつくほど親切な人物がいないからだろう。そんなことを考えていると、ほらまたコール音だ。さすがに少し疲れてきたが、気になった私は依頼者情報を確認した。


 その依頼情報を確認しながら私は少し心拍数が上がった。無意識のうちにたまり始めた生唾を一つごくりと飲み込んでいた。

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