第32話 勇者パーティの目的

「ではこちらが目的を話せばパーティに入れてもらえるか?」


 勇者(願望)の言葉に俺達は再び顔を見合わせた。まあ健太とファーナさん以外という言葉が頭につくのだが、お互い頷きあっている。


「内容によっては断るかもだけどいいか?」

「よっすー厳しいな!」


 なんでも受け入れられるわけもないだろうに…というか厳しいか?


「私達のパーティ構成を見てもらえればわかると思うのだが、目的は魔王討伐だ。勇者としてやはりことを起こされる前に魔王は仕留めておきたいと思っている」

「つまりこのダンジョンに魔王がいると??」

「いや…それはまだわからない。ダンジョンのどこかから生まれるはずなのだ。生まれた魔王が何を目的に外へと出てくるのかはわからないが、危険な存在であることは間違いない」


 つまりこいつらはいるかわからない魔王を探してダンジョンを攻略していると? もう少し詳しく聞いたほうがいいか。


「魔王ね~…目的はわかったけど、なんでこのダンジョンなんだ?」

「よくぞ聞いてくれた!」


 大きな声をだし勇者(願望)に肩を掴まれる。中々うっとおしいやつだなこいつ。


「ダンジョンは他にもいくつもあるのだが、ダンジョンのランクが上がったのは実は数十年ぶりなのだよ」

「すまんが全然意味が分からん…」


 勇者(願望)はもしかしなくても説明とか苦手なんじゃないだろうか。ちらりと隣にいる踊り子(未熟)のほうを見ると難しい顔をしていた。


「簡単に言うとこのダンジョンで魔王が生まれそうな予兆があるということ」

「ああ、つまりランクが上がるのはその予兆の一つということ?」

「はい、そうなりますね~」


でもそうなると少しおかしいんじゃないか? 他のダンジョンの状態は知らないが、同じランクの中級ダンジョンならいくつもあるとおもう。そのダンジョンだって最初は初級から上がったはずなんじゃないのか…?


「ランクの上がったダンジョンは警戒されて、私達のようなパーティが中の状態を見にくるの。でね、このダンジョンなんだけど初級が他のダンジョンに比べてかなり緩いのよ。ということは攻略されやすいってことになって、ランクも上がりやすいでしょう? 強い魔物が増えるでしょう? 魔王が生まれやすいってことなのよ」

「補足するわ魔王がどう生まれるのかは流石に知らないんだけど、私達が魔王に遭遇することが出来るとすれば上級の最下層よ」

「え、ってことは魔王はダンジョンの上級のボスってことなのか?」

「ええ、今までダンジョン内で確認されたのはそうね。まれに外へ出てくる魔王がいるから確実とはいえないけれども」


 (将来の)賢者の補足で幾分わかりやすくなった。こいつらは本当に魔王を倒すつもりらしいな。本当にこのダンジョンに生まれるかどうかは知らないが。

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