第3話 再び1階層へ

 女性に押し切られた俺は昼食後、ダンジョンの1階層へ一緒に行くことになった。健太と同じ場所へ行けないのが不満そうではあったが、どういったところへ行っているのか見るだけなら1階層でいいだろうということと、そもそも健太達が向かっている11階層へこの人が行けないから仕方がないということだ。


 まずは女性にタッチパネルに触れてもらい登録からだ。なんのための登録かは気にもせず女性は音声に従い登録を進める。もちろんここでちゃんと言語理解のONを忘れずしてもらった。


「んじゃよっすーもちょっと慣らしてきなよ」

「じゃあ私達はもう少し11階層のマップ埋め行ってきますね」

「…あっ」


 健太とファーナさんが消えていくのを目のあたりにした女性が短い声を上げた。今までも何度かこの光景は見たことがあるはずなのだが何を驚いているのだろうか。


「初めて、あの子の言葉がわかりました…なぜ?」


 あーそうか今まで言葉が理解出来なかったファーナさんの言葉がわかったことを驚いたのか。俺は言語理解の説明を女性にするとどういった仕組みなのかをしつこく聞かれ俺はうんざりとした顔になる。


「とりあえずこれを持って行ってよ」

「バット…ですか??」


 俺は部屋の片隅に放置しておいた金属バットを渡した。流石に武器もなしに連れていくわけにはいかないだろう。


「あと名前まだ聞いていないんだけども」

「そういえば名乗ったことがありませんでしたね。では、改めまして私は健太様の秘書兼護衛の結奈と言います」

「……は?」


 秘書? 護衛?? 健太の家が金持ちなのは知ってたから護衛はまだわかる。だが秘書ってなんだ?? ただの高校生に秘書なんていらんだろう…


「驚かれましたか? 健太様は何も話していらっしゃらないのですね」

「…っ 行くぞ」


 勝ち誇った顔で笑う結奈さんを見ているのがいやで俺はさっさとダンジョンへと足を運ぶことにした。タッチパネルで1階層を選ぶことを教えると先に自分からダンジョンへと移動をするのだった。


 久しぶりのダンジョンへの移動へちょっとだけふらつく足元に力を入れ俺はダンジョンを眺めた。ここは初めて健太と来たダンジョンの1階層。スライムばかりがいるマップだ。少し遅れてなやってきた結奈さんも俺の後ろに並んでいる。


「ここは…?」

「ダンジョンと言われる場所で地球上にはいない魔物がいる異世界…です」


 すっと少し先を指さしのんびりと歩いているスライムを見るように促す。結奈さんはその生き物を見て大きく目を見開いた。

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