束縛彼女との同居生活 ～ヤンデレな彼女からは逃げられない～

第48話

「だからね、私はまーくんの事を守りたいから、こうした訳なんだよ」

「あの、ごめん……もう一度言わせて貰うけど、それだけだと全く意図が伝わってこないんだが……」

　俺がそう言うと香花は憮然とした表情を浮かべ、どうして伝わらないのだろうかと言いたげな感じを醸し出していた。

「どうして？　ちゃんと説明しているのに？」

「いや、ちゃんとした説明にもなってないんだが……」

　しかもそうして口に出して聞いてきている有様だ。本当に俺が何で理解していないかを分かっていない様である。

「香花は自分の事だから分かって当たり前かもしれないが、俺にとっては曖昧過ぎて分からないんだよ……。

　せめてもう少し……俺でも分かる感じに説明をして欲しいんだが……」

「……むぅ」

　香花は不服そうに頬を膨らませた。あの説明で全てを察しろとでも彼女は言いたいのだろうか。

　だけど、それはかなり無理のある注文だ。あんな説明を受けて、それでこの境遇というのはどう考えても納得のいくものでは無いのだから。

「えっと、じゃあ……まーくんが分かる様に、ちゃんと一から説明すればいいんだね？」

「……そうしてくれると、助かるな」

　そして香花は俺の訴えを受け入れてくれた。もう少しごねるかと思ったけれど、ここは案外すんなりと聞いてくれた様だ。

「それで……香花は俺を何から守りたくてこうしたっていうんだ？」

「もちろん、まーくんをあの女の魔の手から守る為に決まってるでしょ」

　……あの女？　あの女って、誰の事だ……？

「……まさか」

　香花の指している対象がどの人物を指しているかが直ぐには分からなかったが、考えてみれば該当する人物というのは現在は一人しかいない。

　彼女が今、敵視していて問題として上がっているのは俺にメールを送ってきた相手、俺の妹だけであった。

「それって……俺の妹の事か……？」

「ううん、違うよ」

「へっ？　ち、違う……？　じゃあ一体、誰の事……」

「まーくんの妹さんじゃなくて妹(仮)。私はまだ、信用していないんだからね」

「……やっぱり、妹の事じゃないか」

　俺が妹の事を口にすると、香花は機嫌を悪くしつつそう言ったのだった。

　どうやら彼女の中では未だに妹は存在しない相手であって、本当は俺を誑かしている浮気相手の事だと思っているのだろう。

　……いや、どうしてあれだけ言ったのに、香花は信じてくれないのだろう。何でかなぁ……。俺の説明が悪かったとでもいうのかな……。

　普通なら……そう。あぁ、妹だったんだね、そうだったんだ。で、終わる話だというのに……。

「だ、だけど……ちょっと待ってくれ。それと俺が拘束されてるのとどう繋がるっていうんだ？」

　香花は先程こう言っていた。監禁するつもりは無い、その時がくればちゃんと開放すると。

　その言葉が正しければ、彼女の言う守るという意味はおかしくならないか……？

　香花の目的が妹と俺を会わせないという事であれば、彼女が俺の事を監禁する理由も分かる。……いや、分かりたくないけれど。

　ずっと監禁して閉じ込めて、連絡手段を失くしてしまえば、俺と妹との関係は途絶えるだろう。そうすれば彼女の目的は達成できる。

　でも、一時的な拘束だというのなら、それは意味の無い行動だ。解放されてしまえばそれ以前の状態に戻るだけなのだから。

　それならば、彼女の本当の目的はどこにあるというんだ……？

「さっきも言ったよ。あの女からまーくんを守る為だって」

「だから、それが良く分からないんだよ。俺を拘束する事と、俺を守るというのは別問題なんじゃないのか？　その関連性が俺には見えてこないんだ」

「……関連性なら、ちゃんとあるんだよ」

「……えっ？」

「だって……そいつが今日、ここに遊び来るって言ってきてるんだから」

　……はい？　えっと……遊びに来るだって……？　誰が？　妹が？

　あの……香花さん。その話……初耳なんですけど。俺、知らないんですが。

　マジで、その……一体、どういう事なんですかね……？