どう思ってんだろ…?

 何だろう……?

 すっごい人だかり。



「おっ!

 そろそろ サッカー部の練習が始まるな」



 見るとそこだけ、まるで”アイドルのサイン会か“って思うくらい、女子たちの取り巻きでいっぱいだった。




「知ってた?

 トオル サッカー部員なんだぜ」


「へぇ そうだったの〜?」




 そうか。


 そう言えば、去年もこんな光景みたんだっけ。

 あのときは何の騒ぎかな?って、思ってたんだけど……。

 今思えば 納得。




「トオルくんってすごいよね〜。

 あれだけの女子の誘いを断ったことないって」


「あぁ そうだな。

 オレには、本気マジ 真似マネ出来ないけどな」



 真似して欲しくないけど。


 それに……。


 リョウちゃんがこんなタイプだったら、サオリが困るよ〜。




 ちょうどそのとき、サッカーボールが転がってきた。


「よっ!と…」


 リョウちゃんがそれを軽く受け止めた。



「去年、トオルにサッカー部に入らないかって誘われたんだけど……」


「せんぱ~い! ボール取ってくださ~い」



 新入生らしい部員が、こっちへ向かって手を振っている。



「OK! 行くよ~!」



 華麗なボール裁きで、サッカー部のグラウンドへ蹴った。


 それを見た部員たちは、「すげ~」ってビックリしていた表情だった。


 元々、運動神経が良かったリョウちゃん。

 中学のころは、”空手部”に入部して、全国大会で優勝したこともあったんだよね。



 でも、何で辞めちゃったんだろ……?


 前に訊いたときは、「生活の為」だとか言って、高校に入学したと思ったら、さっさとアルバイトを始めちゃったし……――。



「じゃぁ 行こっか」


 リョウちゃんが、先に歩き出した。



 今のリョウちゃんは、中学のころとは比べものにならないくらい優しくなった。

 こうやって毎日、一緒に帰ってくれるし。


 あのときは、反発してばかりだったもんね。


 リョウちゃんは、サオリのこと……。

 どう思ってんだろ…―?



 ふと、リョウちゃんの後ろ姿を見ながら、そんなことを考えていたら……。



「歩くのが遅い」って、私の手首を掴まえた。



 そのとき、ほんの一瞬だけ… 胸が高鳴った。



 ドキドキドキドキ……。



 何…―?

 初めて感じる胸のときめき……?



 そっか…。

 背が伸びたんだぁ~。



 手もがっしり大きくて、力強くなってる。



 4年前に会ったときは、全然そんな風に思ってなかったのに。



 もしかして、サオリ今…。

 リョウちゃんを”男の子”だって意識してる…?



 よく“友達以上”なんて言葉を聞くけど。

 これって…  そうなのかな??






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る