第26話 入学式 2

 ミアはカードを見ながら受付の男性の説明に耳を傾けた。


「カードは常に携帯してください。身分証と鍵になりますから」

「鍵?」

「ええ、学園ではそのカードがないと開くことが出来ない扉が幾つかあります。失くすと動けなくなりますよ」


 男性の説明にカードを紛失して身動き出来なくなった場面を想像し、いつかやりそうだと頬がひきつる。


「カードの名前の横に学年とクラスが記載されてますから、中に入って自分のクラスの席に座ってください」


 カードを見ると、ミアは1C、ジュリアスは1Aと名前の横に書かれていた。ジュリアスとは違うクラスらしい。


 ジュリアスはカードを胸ポケットにしまうと、一人で建物の中へと入っていってしまう。ミアも建物の中に入り、二人はそれぞれのクラスの席に座った。

 ジュリアスと同じ1Aの中にアルバートの姿があり、ミアと目が合うと嬉しそうに微笑んだ。


 良かった、元気そう。


 久しぶりに見たアルバートの姿にホッとした。


 暫くすると入学式が始まり、学園長の挨拶から在校生代表や新入生代表の挨拶、先生方や生徒会の紹介などがされていく。そして教師の中に見知った顔を見つけたと思ったら、ローズの研究室であったランバルトがミアのクラスの担任だった。


 そして入学式は順調に進み、そろそろ終わりかと思った頃、生徒会役員が壇上に並び、魔力を測定するときに使う水晶のような魔導具が台の上に置かれた。


「これから毎年恒例の生徒会役員補佐の選出を行います。役員補佐は一年生の中から三名選ぶので、一年生はカードを手に持つように」


 副会長の発言で一年生の間にどよめきがおこる。


「静かにしなさい。カードを持ちましたか?」


 生徒たちは静かになり慌てて皆カードを手に持った。

 生徒会長が全体を一瞥し、カードを手に持っているのを確認すると水晶に手を乗せる。

 すると水晶から三つの光の紐が絡まりながら上へと伸びていき、天井付近までいくと三つに別れて伸びていく。そして三人の生徒の手にしているカードへと吸い込まれていった。

 光の紐のひとつはアルバートへ、もうひとつは腰まである青髪の女生徒へ、最後のひとつはミアのカードへと吸い込まれ、三人のカードは透明から金色へと変化した。


「三人はこちらへ」


 副会長の言葉で静まり返っていた場が動き出す。喧騒の中、ミアは選ばれたアルバートと女生徒が壇上へと歩いていくのを呆然と見ていた。二人が壇上に上がり、生徒会長の視線が動かないミアにいくと、漸くミアも状況を把握して慌てて壇上へと向かった。













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