第22話 魔導研究所にて 1

 婚約式後の数日間は、ミアは魔石に魔力を込めたり抜いたりといったことを繰り返していた。一度だけ魔法ペンの魔力が切れて、補充しようと魔力を込めたことがあったが、魔力を込めすぎたのかペンが壊れてしまった。

 それ以外は順調で、魔力を動かすということにも大分慣れて気持ちが悪くなることがなくなった。これなら魔導学園へ入学しても授業で置いていかれることはないだろう‥‥‥‥たぶん。


 今一番の気がかりはアルバートのこと。何度か手紙を書いたが、当たり障りのない返事が返ってくるだけで、あれから一度も会っていない。父様と兄様の話を立ち聞きしてしまい、あの誘拐がアルバートを狙ったものだったっと知ってからは、大丈夫なのか、元気にしているのかと気になって仕方がない。


 会いに行こうか? 


 そう思っても、商人の娘のミアから貴族の子息であるアルバートのもとへ約束もなく会いになどいけるはずもなく、やきもきしているうちに毎日が過ぎていった。






 魔導学園への入学が数日後に迫った昼下がり、ミアは検査のために魔導研究所のローズのもとへと来ていた。今回は検査のために変な薬を飲まされはしなかったが、カウンターに置いてある魔導具とコードで繋がった金属の輪っかを頭に嵌められていた。


 ミアの目の前に魔石が入った箱が置かれる。箱の中には小さい物は小指の先くらいのものから、大きな物はミアの拳くらいまでと様々な大きさの魔石が十個ほど入っている。


「この魔石に魔力をこめて」

「えええ、全部ですか!?」

「そうよ」


 にっこりと微笑んで箱から小指の先くらいの魔石を渡してきた。

 手渡されたのは魔法ペンに使われている魔石と同じくらいの大きさで、以前に魔力を込めて壊してしまったことを思い出して躊躇する。

 ローズに急かされて魔力を込めていくと、魔石から反発するような感覚がしてきた。直ぐに魔力を込めるのを止めたが、手の中の魔石は砂になって指の間からサラサラと溢れ落ちた。

 ミアは大事な魔石を砂にしてしまったと慌てて謝る。


「ご、ごめんなさい」

「あらあら‥‥‥‥上手く制御が出来ないのかしら?」


 ローズは砂になった魔石を指で掬って興味深く観察すると、溢さないように丁寧に袋にしまっていく。ミアは恐縮しながらゴニョゴニョと言い訳をした。


「すいません‥‥‥‥小さな魔石に魔力を込めるのは苦手で‥‥‥‥家でも、魔法ペンに魔力を込めて壊してしまうし」

「魔法ペン‥‥‥‥面白いわね、調べる必要があるわね」


 嬉々としてやる気のローズに新たな魔石を手渡され、ミアはその魔石に魔力を込め終えると、箱の中の魔石に次々と魔力を込めていった。




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