第14話 おじ様とおば様

 翌日の昼過ぎにミアは父様に連れられて、ジュリアスの父であるマシュー男爵の屋敷を訪れていた。


「久しぶりだね」

「お久しぶりです、マシュー男爵」

「ミアもよく来てくれたね」

「お久しぶりです、マシューおじ様」


 にこやかに笑いかけてくるマシューおじ様に手を取られて、ミアはソファーへ座った。


「お、おじ様?」


 並んでソファーに座ったおじ様がミアの手を掴んだままで、手をのけてもいいものか戸惑う。困って父様を見ると、そのままでいなさいと身振りで示され、困惑しながらもじっとしていた。


 暫くすると、おじ様の手からミアの中に暖かい何かが入ってくるような感じがしてくる。


「何か感じるかな?」

「‥‥‥‥おじ様の手から、私の中に、何か入ってきてるみたい」

「そうか」


 おじ様は優しく微笑むとミアの手を離して向かいのソファーへ移動した。そして父様がミアの隣へ座ってくる。


「魔力の流れは分かるようだな。問題ないだろう」

「そうか」


 父様はホッとしたように息を吐いた。


「後はあれが間に合えば‥‥‥‥」

「ああ、そっちの方は、何とか間に合うだろう」


 二人の話に聞き耳をたてていると、嬉しそうにおば様が部屋に入ってくる。


「ミアちゃん、いらっしゃい」

「おば様、こんにちは」

「最近、全然遊びに来ないんだから」


 拗ねたように言いながらミアの傍に来ると腕を掴んで立たせてくる。


「私の部屋へ行きましょう、美味しいケーキがあるのよ」


ミアが躊躇っていると、


「ミア、行っておいで」


 そう言いながら、父様が苦笑する。おじ様にも「付き合ってやってくれ」と苦笑された。


「ほら、行きましょう」


 おば様に急かされ立ち上がると手を引かれ、部屋まで連れていかれる。



 おば様の部屋へ入ると直ぐにお茶の用意がされて、美味しそうなケーキがテーブルに並べられた。


「今日、兄さんと一緒にミアちゃんも来ると聞いて用意しておいたのよ」

「美味しそう! おば様、ありがとう」


 おば様はミアが屋敷に来ると、いつも美味しいお茶とお菓子で歓迎してくれる。子供はジュリアスひとりしかいないから、女の子が欲しかったおば様は、ミアを娘のように可愛がってくれていた。


「ジュリアスとの婚約の話は聞いたかしら?」

「‥‥‥‥はい」


 ミアを悩ませている話題を出されて、嫌がっているのが顔にでていないかと緊張する。ジュリアスとの仲は良くないが、おじ様やおば様は好きなのだ。


「ミアちゃんが娘になるのね」


 おば様は「やっとよ‥‥‥‥兄さんったら、なかなか頷いてくれないんだもの」と嬉しそうだ。


 おば様の嬉しそうな様子に、ジュリアスとの婚約を嫌だと言うことも出来ず、大好きなケーキを前にした嬉しさも萎んでしまっていた。

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